測定の繰り返し性(簡易 GR&R)
同じ人が同じ1個を繰り返し測った値を貼ると、平均・範囲・標準偏差と、標準偏差の6倍が公差幅の何%にあたるかを出します。2〜3人が数個ずつ測った値なら、人による差も分けて出します。入れた値はどこにも送らず、この端末の中で計算します。
入力
1人ずつ表を貼ります。1行が1回目・2回目…、1列が部品1・部品2…です。どの人も同じ部品を同じ順に並べ、同じ回数だけ測ります。1人しかいない測定なら、1人目〜3人目の欄に日を変えて測った表を入れても使えます。
例の値は、記事の比べ方の表にある「A 印なし」の10回と、公差 10.00±0.02 です(説明のための作り物の数字)。
結果
| 測った回数(n) | |
|---|---|
| 平均(x̄) | |
| 最小 / 最大 / 範囲(R) | |
| 標準偏差 s(繰り返し性・n−1 で割る) | |
| s の95%の幅 | |
| 6s(平均の上下に3sずつの幅) | |
| 公差幅 | |
| 6s ÷ 公差幅 | |
| 6s ÷ 公差幅 の95%の幅 | |
| 範囲の2倍 ÷ 公差幅 (記事の記録表の右下) | |
| 偏り(平均 − 基準値) | |
| 偏り ÷ 公差幅 |
| 人数 / 部品の数 / 回数 | |
|---|---|
| 繰り返し性 sr(同じ人・同じ部品の揺れ) | |
| 人による差 so(再現性) | |
| 測定のばらつき sm(両方を合わせた値) | |
| 6sm | |
| 公差幅 | |
| 6sm ÷ 公差幅 | |
| 内訳:6sr ÷ 公差幅 / 6so ÷ 公差幅 |
人ごとの偏りと揺れ
| 人 | 偏り | 繰り返し性 s | 範囲の最大 |
|---|
偏り=部品ごとに「その人の平均 − 全員の平均」を出し、部品の数で平均した値です。繰り返し性 s と範囲は、その人の値だけから出しています。
使い方
- ふだんその検査をしている人が、印を付けた同じ1個を、同じ測定器で測ります。1回ごとに測定器を外し、置き直してから測ります。回数は10回を目安にします。そろえる6つの条件は、記事「同じ人・同じ物・10回の測り方」にまとめています。
- Excel の列をコピーして「測定値」に貼ります。回の番号の列は外します。見出しなど数字のない行は、数えずに飛ばします。
- 規格の上限と下限を入れます。公差幅だけ分かっているときは、公差幅の欄に入れます(±0.02 なら 0.04)。校正値の分かっている基準片を測ったときは、基準値も入れると偏りを出します。
- 「計算する」を押し、6s ÷ 公差幅と、その95%の幅を見ます。「要約をコピーする」で、結果を記録表に貼れます。
- 人による差も見るときは「2〜3人が数個ずつ繰り返し測った」に切り替えます。1人ずつ、1行=1回・1列=1個の表を貼ります。
- この道具は合否を決めません。出た割合は、客先や社内の基準と比べてください。
計算の考え方
式は米国 NIST の統計ハンドブック(NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods)の、測定の評価の章に合わせています。
1人が1個を繰り返し測ったとき
s は、この測り方で1回測ったときの値の揺れを見積もったもので、繰り返し性にあたります。6s は、平均の上下に3sずつ取った幅です。その幅が公差幅の何%を占めるかを見ます。
s の95%の幅
NIST は、1組の繰り返しから出した標準偏差は、測定器の精密さの見積もりとしては当てにならないと書いています。10回から出した s も、測り直すとかなり違う値になります。この揺れを、NIST のハンドブックにあるカイ二乗分布の式で幅にしています。
n=10 なら、幅はおよそ s の0.69倍〜1.83倍です。6s ÷ 公差幅が20%と出ても、実際は14%〜37%くらいのどこかにある、という読み方になります。幅を狭くしたいときは、日を変えて何組か測り、「2〜3人が数個ずつ」の形でまとめます。NIST は、日・人・部品をまたいで標準偏差をまとめる方法を示しています。
範囲の2倍との関係
記事の記録表は、標準偏差の代わりに範囲の2倍を使います。NIST によると、範囲の平均は標準偏差の d2 倍で、d2 は回数だけで決まります。10回なら d2 はおよそ3.08です(管理図の係数 A2 から 3 ÷ (A2 × √n) で戻せます)。そのため10回なら、範囲の2倍は標準偏差のおよそ6倍にあたり、6s ÷ 公差幅に近い値になります。
回数が10回より少ないと範囲は小さく出るので、範囲の2倍は揺れを小さく見積もります。10回より多いと、逆に大きく見積もります。10回以外では 6s ÷ 公差幅を見ます。
偏り
偏りは、校正値の分かっている基準片を測ったときの、平均と基準値の差です。10回の平均にも揺れがあり、NIST によると、n 回の平均の標準偏差は1回の値の標準偏差の 1/√n になります。偏りが s/√n と同じくらいの大きさなら、本当に偏っているのか、平均が揺れただけなのかは見分けられません。
2〜3人が数個ずつ繰り返し測ったとき
人と部品の組ごとに、繰り返した値の平均と標準偏差を出し、次の順にまとめます。
sr は、NIST が示す繰り返し性のまとめ方(プール)です。どの組も回数が同じなので、分散の平均の平方根になります。sa は、NIST が測定器どうしの差の標準偏差として示す式を、人に当てはめたものです。NIST は、人の差を測定器の差と同じように扱えるとしています。
人ごとの平均には、繰り返しの揺れが sr² ÷ J だけ混ざっています。NIST が日ごとの差を出すときと同じく、その分を引いて so とします。引いた結果がマイナスになったら、NIST と同じく0とみなします。
部品ごとに全員の平均との差を取るので、部品どうしの寸法の違いは結果に入りません。部品は、ふだん測っている品から選べば足ります。
合否を出さない理由
6s ÷ 公差幅が何%までならその測り方で判定してよいかは、製品の要求や客先との取り決めで決まります。この道具は合否を決めません。出た割合は、客先や社内の基準と比べてください。
この計算が成り立つ前提
- 同じ条件で測ること。途中で測定器・測り方・部品を置く向きが変わると、条件の差が揺れに乗ります。
- 値の種類が少なすぎないこと。最小目盛りが粗いと、揺れが目盛りの中に隠れます。NIST は、分解能が足りない測定器の調査からは役に立つ情報が得られないとしています。値が2種類以下なら、この道具は注意を出します。
- 部品と人の数。NIST は、調査に使う部品を3個以上にするとしています。人は、その測定器を使う人が少なければ全員を入れ、多い中から選ぶなら3人以上を選びます。1人しかいないときは、日を変えて3日以上測るとしています。
- 客先の様式との違い。客先が決めた様式(平均と範囲から係数で出す方法や、分散分析で出す方法など)では、同じデータでも値が少し違うことがあります。客先に出す値は、客先の様式で計算します。部品どうしのばらつきと比べる指標や、区別できる区分の数(ndc)は、この道具では出しません。
関連するガイド
- 検査の繰り返し性を確かめる「同じ人・同じ物・10回」の測り方と、記録表の作り方=測る前にそろえる6つの条件と、記録表の欄
- 管理図(X-R)の作成=測定のばらつきが大きいと、群の中の範囲 R も大きく出ます
- 工程能力指数(Cp・Cpk)の計算=測定のばらつきは工程のばらつきに上乗せされて見えるので、Cp・Cpk を出す前に確かめます
出典
- NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods, 2.4.4 Analysis of variability(繰り返し性のまとめ方・日ごとの差から繰り返しの分を引く式)
- 同 2.4.4.1 Analysis of repeatability(1組の繰り返しからの標準偏差は当てにならない・人や日をまたいでまとめる)
- 同 2.4.4.2 Analysis of reproducibility(マイナスになった成分は0とみなす)
- 同 2.4.2 Design considerations(部品・人・日の数)
- 同 2.5.3.1.2 Measurement configuration within the laboratory(測定器どうしの差の標準偏差の式・人にも同じことが言える)
- 同 2.4.5.4 Differences among gauges(部品ごとの平均との差と、その図)
- 同 2.4.5.6 Remedial actions and strategies(平均の標準偏差は 1/√n・人の差は測定器の差と同じように扱う)
- 同 2.4.5.1 Resolution(分解能が足りないときの調査)
- 同 1.3.5.8 Chi-Square Test for the Variance(標準偏差の幅の式)
- 同 6.3.2.1 Shewhart X-bar and R and S Control Charts(範囲の平均は標準偏差の d2 倍)
確認日:2026年9月29日