無料のタスク管理ツールを3つ試して、現場に残ったのはどれか

朝礼が終わって自分の机に戻ると、昨日の夜に書いたはずの黄色い付箋が見当たらなかった。「今週中に検査治具メーカーへ校正証明書の再発行を依頼」と走り書きしたそれは、誰かの書類の下敷きになったか、清掃の時間に紛れて捨てられたかのどちらかだと思う。探すのに15分を使い、結局見つからないまま出張の荷造りに戻った。品証の仕事をしていると、この手の「あの付箋どこ行った」は月に2、3回は起きる。

実はこれが初めてでもなかった。今年の春には、外注先への確認事項を書いた付箋をそのまま出張カバンのポケットに入れて出てしまい、戻ってくるまでの3日間、担当者に電話で内容を思い出しながら伝える羽目になったこともある。あのときは幸い大きな問題にはならなかったが、思い出しながら話す自分の説明はどこか頼りなかった。

私たちの品証グループは私を含めて5人で、検査記録の確認から是正処置のフォローまで幅広く抱えている。誰か一人が抜けても仕事自体は止まらないが、個人が抱えるタスクの管理は結局それぞれのやり方に任されているのが実情だった。

私が本気で困ったのは、その週にちょうど3件の外部監査対応が重なっていたことだった。付箋とホワイトボードだけで抱えていたタスクは、多いときで20件を超える。監査対応中に、別件の是正処置の回答期限をうっかり忘れかけたことが二度あった。優先順位を頭の中だけで管理するのは、正直もう限界だった。

そこで思い立って、無料で使えるタスク管理ツールを3つ、実際の仕事で1週間ずつ試してみることにした。会社のPCには勝手にソフトをインストールできない規則があるため、ブラウザで動くサービスに絞った。選んだのはTrello、Google Keep、Todoistの3つ。いずれも個人アカウントの無料枠に収まる範囲で使った。以前の職場で同僚が使っていたAsanaやMicrosoft To Doの名前も一瞬候補に挙がった。ただ、無料枠だけで完結させたいことと、会社のPCにインストール型ソフトを入れられないことを考え合わせて、ブラウザで完結する3つに絞り込んだ。

目次

試した3つの無料ツール

Trello(かんばん方式)

最初に試したのはTrelloだった。「未着手」「対応中」「完了」の3列を作り、タスクをカードにして動かしていく。実際に使ったのは月次の是正処置一覧を管理したときで、A社向けの是正報告書を「対応中」列に置き、添付に下書きのPDFを貼っておいたら、電車での移動中にスマホからも内容を確認できて助かった。ただしカードを開いてコメントを書く操作は片手だと押しづらく、結局そのつど立ち止まって操作することが多かった。

無料プランはボードの枚数にも上限があり、1ワークスペースあたり10枚までしか作れない(Trello公式の料金ページ)。品証・改善・個人メモの3つに分けただけで、上限の3分の1近くを使ってしまった。加えて自動化機能(Butler)の実行回数も無料プランでは月250回までに制限されており、複数のボードで使うとすぐに上限が見えてきた。有料プランへの切り替えも一瞬考えた。個人の持ち出しで月額課金を続けるのは気が引けたし、部署としての申請も規模的に通らないと判断して見送った。そこで無料の範囲で使い方を絞り込み、Trelloは少人数で進捗を並べたい案件だけに使うことにした。

Google Keep(付箋型)

次に使ったのはGoogle Keepだった。感覚としては、紙の付箋をそのままデジタルに置き換えたような操作感で、思いついた瞬間にメモを残すスピードは3つの中で一番速い。ある日の会議中、品証課長が口頭で伝えた「来月からロットサイズを半分にする」という方針を、その場でKeepに書き留めた。会議が終わる頃には他の3件のメモに埋もれていたが、色を黄色に固定するルールを自分で決めてからは埋もれなくなった。

ブラウザの拡張機能を入れると、見ているWebページをワンクリックでメモに追加できるのも便利だった。校正機関のスケジュールページを保存しておいたときは役に立った。ただ、保存したメモのタイトルが「無題のメモ」のままだと後から探しにくい。結局、手入力でタイトルを付け直す手間が生まれた。色分けとピン留めで簡易的な優先順位はつけられるものの、期限を指定してリマインドする機能が弱く、「今日中にやる」と「来週でいい」を区別するには自分でルールを決めるしかなかった。

Todoist(無料枠だけで)

最後に試したのはTodoistだった。無料プランでもプロジェクトを分けて期限を設定でき、期限が近づくと一覧の上に自動で浮かんでくる。最初の2日は入力の型に慣れず操作が面倒に感じたが、3日目に「金曜 校正証明書」と打つだけで期限が自動設定されるショートカット入力に気づいてからは、むしろ付箋よりも早く書けるようになった。

導入して1週間たった頃、後輩から「それ何のアプリですか」と聞かれた。画面を見せると「うちのチームも期限の抜けが多いので使ってみたい」と言われ、実際にプロジェクトを1つ共有してみた。無料プランの上限である5人以内だったので、そのまま試すことができた。

3ツールの比較表(起動〜入力・期限管理・無料枠の上限・向く用途)
3ツールの比較表(起動〜入力・期限管理・無料枠の上限・向く用途) ※筆者の運用記録(対象:Trello・Google Keep・Todoist無料プラン個人利用・期間:2026年7月27日〜8月16日の3週間)

3週間使って分かった差

3週間使ってみて、3つのツールの向き不向きがはっきりした。Trelloは案件を少人数で共有する場面に強く、Google Keepは思いつきをすぐ書き留める場面に強い。期限管理を軸に日々のタスクを回すなら、Todoistが一番実務に近かった。

起動から入力までの体感時間の比較グラフ
起動から入力までの体感時間の比較 ※筆者の運用記録(対象:起動から入力完了までをストップウォッチで3回ずつ計測・期間:3週間の試用中)

起動から入力までの体感時間をストップウォッチで測ってみると、差はもっとはっきり出た。Google Keepが最速で平均4秒、Todoistは7秒、Trelloは12秒かかった。Trelloはカードを開いてリストを選ぶ手順が挟まる分、とっさのメモには向かない。

私の使い方に限って言えば、監査対応のような「期限がはっきりしていて、抜けたら困るタスク」が多かったことが、Todoistを選ぶ決め手になった。逆に、会議中に思いついたアイデアをその場でメモする用途では、Google Keepのほうが起動から入力までの体感速度で勝っていた。3つを比べて初めて、自分が抱えているタスクの種類にばらつきがあることに気づいた。実際、監査対応中の1週間だけを取り出すと、Todoistで管理していたタスクは18件、うち期限当日にずれ込んだのは1件だけだった。付箋だけで管理していた3か月前の監査週は、当時のメモを見返すと期限当日にずれ込んだタスクが4件あった。

現場に残ったのはこれ

結局、3週間の試用のあとに主役として残したのはTodoistだった。ただし全部を1つに寄せたわけではない。ホワイトボードと付箋も、今でも併用している。

導入前後のワークフローの変化を示す図
導入前後のワークフローの変化 ※筆者の運用記録(対象:個人のタスク管理フロー・期間:2026年7月27日〜8月16日)

会議中にその場で共有したい内容は今もホワイトボードに書き、終わったら写真を撮って残す。思いついたことはGoogle Keepにその場で書き留め、後でTodoistへ振り分けている。個人で抱える期限付きのタスクだけをTodoistに移した形だ。移行してからも、一度だけヒヤリとした日がある。8月上旬、スマートフォンの通知をオフにしたまま出張に出てしまい、期限当日の朝まで検査治具の返却期限に気づかなかった。幸い現場に居合わせた後輩が代わりに連絡してくれたため事なきを得たが、通知をオフにしないというルールを自分の中に一つ増やした。いまは朝いちばんにTodoistの「今日」ビューを開くのが習慣になっている。以前はホワイトボードの前に立って付箋を一枚ずつ確認していたが、今はスマホの画面を1回スクロールするだけで終わる。

期限当日に気づいた忘れタスク件数の導入前後比較グラフ
期限当日に気づいた「忘れタスク」件数の変化 ※筆者の運用記録(対象:品証業務の期限付きタスク・期間:導入前3か月平均と導入後1か月・件数)

それでも、導入してから1か月の記録では、期限当日になって「忘れていた」と気づいたタスクの件数がゼロになった。付箋運用のときは月に1、2件は必ずあったので、そこは体感でも数字でもはっきり変わった。

一方で、Todoistにも限界はある。無料プランでは1つのプロジェクトを共有できる人数が5人までに制限されており(Todoist公式の料金ページ)、私のチーム全員で同じボードを見る使い方には向かなかった。あくまで個人のタスク管理として割り切って使っている。

用途別にタスク管理ツールを使い分けるマップ
用途別の使い分けマップ ※筆者の運用記録(対象:3ツールの使い分け・期間:導入後1か月の実運用)

いま振り返ると、3つとも「使える」ツールだった。優劣というより、抱えているタスクの種類によって向き不向きが分かれただけだ。この試用を通じて分かったのは、ツール選びよりも先に「自分がどんな種類のタスクを、何件くらい抱えているか」を数えておくことの方が大事だということだった。数えないまま乗り換えると、結局また別のツールで同じ悩みを繰り返すことになる。次にツールを試すときも、まず自分が何で一番困っているかを先に決めてから選ぼうと思っている。

製造業の現場でITツールを選ぶときの基準は、ものづくりポータルでも整理している。

参考書籍

ツールを増やす前に、抱えているタスクの数そのものを見直す話として、以前読んだ2冊を挙げておく。

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この記事は各ツールの無料プランを個人で試した際の記録である。プランの内容や上限は変更されることがあるため、導入を検討する場合は各サービスの公式ページで最新の条件を確認してほしい。

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この記事を書いた人

製造メーカーに10年以上。検査員から始めて生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは管理職。若手のころの失敗も含めて、現場で見たこと、試したことを書いています。座右の銘は「ピンチはチャンス」

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