初物確認の項目を1つ足したあと、確認台の所要時間がどう動いたか測った話

期間
ポケットカードを確認台に貼って5週目から10週目まで(2つの順番を2週間ずつ測り、計画表を直すまで。管理職になる前の記録)
対象
ライン脇の初物確認台1台で行う初物確認(1日4回)と、生産計画の表にある段取り替えの枠
体制
当時は初物確認台の担当だった私と、同じ確認台を使う後輩3人、製造の班長1人
結論
足した刻印の確認にかかっていたのは、1回平均22秒だった。段取り替えの枠は30分に戻し、初物確認を4分の行として計画表に別に書いた

ラインの横のホワイトボードに貼った生産計画の表で、段取り替えの枠が3つとも、30分から35分に書き換えられていた。赤いペンの手書きで、元の数字には横線が1本ずつ引いてある。

書き換えたのは製造の班長だ。確認台まで行って理由を聞くと、「初物確認が長くなったからな」と返ってきた。刻印の確認を先頭に書いたポケットカードを、確認台に磁石で貼ってから5週目の月曜だった。

管理職になる前、この初物確認台が毎朝の持ち場だったころの話だ。刻印のかすれを客先に指摘されてから、確認の順番を①刻印、②寸法3か所、③外観四隅に固定したカードを作ったことは前に書いた。表の上では前からあった欄だが、実際に手を動かす作業としては、刻印をルーペで見ることが1つ増えた。それで5分も延びるとは、私には思えなかった。

目次

赤いペンの35分

班長の言い分はこうだった。カードを貼った2週目の火曜と3週目の木曜に、段取り替えのあとでラインが初物確認の終わりを長く待った。どちらの日も、止まっていた時間は10分を超えていたらしい。段取り替えは1日に3回あるので、枠を5分ずつ延ばすと、1日で15分の生産が計画から消える。

その2日は、どちらも後輩が確認台に立っていた日で、私は別の工程の立ち会いに出ていた。あとで聞いたのは「刻印でちょっと止まりました」という一言だけで、何がどう止まったのかまでは聞いていない。カードが効いている、くらいに受け取って、その話は終わりにしていた。

「刻印なんて、最後に外観を見るときにルーペのまま見ればいいだろう。そのほうが早い」

班長はそうも言った。刻印を先に見る順番だと、ルーペを1度置いてノギスに持ち替え、外観でまたルーペを持つ。持ち替えが1回増えるのは、そのとおりだった。

ただ、刻印を最後に回すのは、見落としが起きた元の並びに戻すことでもある。後輩3人のうち2人は、表の下の欄を最後にまとめて見ると言っていた。私の「5分も延びるはずがない」も、班長の「最後のほうが早い」も、数えていない点では同じだった。ストップウォッチで、順番ごとに測ってみることにした。

計画表の段取り替えの枠が30分から35分に書き換えられたことと、班長と私の見立て・根拠・案を左右に並べた表
書き換えられた段取り替えの枠と、2つの言い分 ※筆者の運用記録(対象:初物確認台1台と計画表の段取り替えの枠・期間:カードを貼って1週目〜5週目)

順番を2週間ずつ入れ替える

5週目は準備に使い、条件を先に紙に書いて、班長と課長に見せた。確認台は同じ1台、確認するのは私と後輩3人の4人、流れる品種もいつもの3品種で変えない。初物確認は朝の始業で1回、段取り替えで3回の1日4回あるので、稼働10日で40回ずつ数えられる。

6週目と7週目はカードの順番のまま、刻印、寸法3か所、外観四隅の順で確認する。8週目と9週目は班長の案で、寸法、外観、刻印の順にする。測るのは、製品を手に取ってから確認表の記入を終えるまで。刻印を見ている部分だけはラップを押して別に取り、ルーペが刻印に当たったかどうかも横で印をつける。ストップウォッチを持つのは、その回に確認台に立っていない1人にした。

同じ週の中で順番を日替わりにする案も考えたが、やめた。手が新しい順番を覚えるまでに数日かかるのは、カードを貼った最初の週に身をもって知っている。日替わりにすると、毎朝その日の順番を思い出すところから始まり、測りたいのは確認の時間なのに、迷っている時間まで混ざってしまう。2週間ずつにすれば、少なくとも後半の1週間は、手が慣れた状態で数えられる。

記録用紙はA4の横向きで、1行に1回分を書く。列は品種、番号を入れ替えたかどうか、刻印のラップ、全体の時間、ルーペの印、それに気づいたことを書く空欄。ストップウォッチは検査室から2個借りて、確認台の脇の棚に置いた。測られる側に回った後輩は、初日だけ少し手が固かったが、2日目からは誰も気にしなくなった。

刻印を最後に回す2週間には、課長が渋った。見落としの元の並びに、わざわざ戻すからだ。「戻すための試しではない」と説明して、条件を1つ足した。その2週間は、初物のロットの刻印を私が昼と夕方にもう1度ルーペで見る。それで許可が出た。

先に測ったのは、カードの順番だった。

カードの順で数えた40回

40回の平均は3分31秒だった。内訳は刻印が22秒、寸法3か所が1分36秒、外観四隅が58秒、記入が35秒。いちばん長いのは寸法で、刻印の22秒は4つのうちでいちばん短い。

その22秒も、中身は2つに割れていた。刻印の番号は材料のロットごとに振るので、切替のたびに変わるわけではない。40回のうち番号を入れ替えた回が12回あって、その12回は刻印だけで平均41秒かかっていた。入れ替えなかった28回は14秒。

41秒の中身は、照合だった。指示書に書いてある8桁の番号と打たれた刻印を、ルーペで1桁ずつ見比べる。読めるかどうかを見るだけのつもりでいたので、思っていたよりずっと長い。カードを作ったとき、私は①に「刻印の位置と可読性」と書いた。番号が合っているかは書いていない。それでも4人とも、番号を入れ替えた回は指示書と見比べていた。

7週目の水曜には、後輩の1人が番号を小さく声に出して読みながら照合していた。指示書の数字を1つ読んで、刻印の同じ桁を見る。声に出した回は、刻印のところだけがさらに延びた。遅いと言う気にはならなかった。8桁を目だけで追うと、途中でどこまで見たか分からなくなるのは、私も同じだったからだ。

ルーペを当てずに刻印の欄に○がついた回は、0回。4人の平均は、秒の単位でほとんど並んでいた。表を先に読んでから作業に入っていた後輩は、「表を読む代わりにカードを見るので、前より早く台を離れられる」と言った。

困ったのは持ち替えのほうだ。ルーペを置き、ノギスを取り、外観でまたルーペを取る。ルーペとノギスを1回多く持ち替えるのを、4人とも嫌がった。

カードの順で測った初物確認40回の平均3分31秒を刻印・寸法・外観・記入の4つに分けた積み上げ横棒と、番号を入れ替えた回と入れ替えなかった回の刻印の時間を添えた図
カードの順で測った40回の内訳 ※筆者の運用記録(対象:初物確認40回・確認台1台・確認する4人・期間:カードを貼って6週目〜7週目)

刻印を最後に回した40回

8週目の月曜から、順番を入れ替えた。40回の平均は3分24秒で、カードの順より7秒短い。班長の見立ては当たっていた。

縮んだのは刻印の部分だけで、寸法と外観と記入は、秒の単位まで前の2週間と変わらない。刻印は平均15秒で、外観のあとにルーペを持ったまま見るので、持ち替えが消えた。番号を入れ替えた11回は36秒、入れ替えなかった29回は7秒。

7秒の中には、別のものも混ざっていた。ラップが3秒を切った回が3回あり、3回ともルーペが刻印に向いていない。記入の手が先に動いて、刻印の欄に○がついていた。3回のうち2回は、表の下の欄を最後にまとめて見ると言っていた後輩で、残りの1回は私だった。

私の1回は、9週目の火曜の午後だった。ストップウォッチを持っていた後輩が、記録用紙から顔を上げて「今の、ルーペ当たってません」と言った。言われるまで、自分では見たつもりでいた。手はルーペを持っていたのに、目は確認表の記入欄に向いていた。

昼と夕方の見直しでは、その3回のロットも刻印は読めて、番号も合っていた。何も流れていない。ただ、3回はどれも番号を入れ替えなかった回で、見る前から「同じだろう」と思っていた回だった。

7秒と3回を班長に見せる前に、班長の言う10分の出どころを、製造の日報で探すことにした。

カードの順と刻印を最後に回した順で測った各40回を、平均・内訳・番号の入れ替えの有無・ルーペを当てずに○がついた回数で左右に並べた表
2つの順番を並べた結果 ※筆者の運用記録(対象:初物確認80回・確認台1台・確認する4人・期間:カードを貼って6週目〜9週目)

日報にあった2回

製造の日報には、段取り替えごとに始めた時刻と量産に戻った時刻が書いてある。9週目の金曜に班長から借りて、カードを貼る前の4週間と、貼ってからの4週間を並べた。段取り替えは4週間で60回ずつある。

段取り替えの時間の平均は、前が28分、後が29分。1分しか違わない。違ったのは40分を超えた回で、前の4週間は0回、後の4週間は2回あった。2週目の火曜が43分、3週目の木曜が41分。班長が覚えていた2日だ。

2回とも、初物確認で刻印の番号の入れ替え忘れを見つけた日だった。材料のロットが変わったのに、刻印機の番号が前のロットのまま打たれていた。見つけたあとは刻印機の番号を設定し直し、打ち直した初物をもう1度頭から確認する。延びた時間の大半はそこで、初物確認そのものではない。

日報の備考欄には、2日とも班長の字で「刻印やり直し」とだけ書いてあった。初物確認で止めた、とはどこにも書いていない。日報の上では、止めた時間も確認の時間も番号を設定し直す時間も、まとめて段取り替えの時間に入っている。班長が「初物確認が長くなった」と読んだのは、無理もなかった。

日報を返しながら、1つだけ答えの出ないことが残った。カードの前の4週間に40分を超えた段取り替えが1回も無かったのが、入れ替え忘れが起きていなかったからか、起きていても見ていなかったからかは、いまも分からない。刻印の欄が表の最下段にあったころの○からは、どちらとも読めない。

2つの数字を持って、翌週の月曜にホワイトボードの前で班長を待った。

カードを貼る前と後の各4週間で、日報の段取り替えの時間の平均と、40分を超えた2回を示した横棒グラフ
日報で見た段取り替えの時間 ※筆者の運用記録(対象:製造の日報の段取り替え120回・期間:カードを貼る前の4週間と貼ってからの4週間)

計画表に4分の行を足す

10週目の月曜、朝礼の前に、班長と2人でホワイトボードの前に立った。決めたことは3つある。

順番はカードのまま、刻印を先に見る。7秒のために、ルーペの当たらない○を2週間で3回受け入れる理由は無い。そのうちの1回が私だったと言うと、班長は少し笑って、それ以上は言わなかった。

段取り替えの枠は30分に戻す。その代わり、枠の中に埋もれていた初物確認を外に出して、計画表に「初物確認 4分」という行を別に書いた。カードの順の平均が3分31秒で、番号を入れ替える回でも、刻印を除いた3分9秒に41秒を足して3分50秒になる。4分あれば収まる。

枠と行を足せば34分で、赤いペンの35分と1分しか違わない。分の数を削りたかったわけではなく、初物確認に何分かかっているかを、計画表の上で見えるようにしたかった。

班長が気にしたのは、4分で終わらなかった日のことだった。「4分って書いたら、5分かかった日に確認台が遅いって言われるだろう」。そのときは止めた理由を別に書けばいい、と私は答えた。22秒や7秒の話より、班長にはこちらのほうが大事だった。

最後の1つは班長の案で、日報に「初物で止めた」という欄を足した。刻印の番号違いや寸法の外れで止めた時間は、段取り替えの時間にも初物確認の時間にも入れず、そこに書く。止めた時間が長いのは、確認が遅いからではなく、見つけたものがあるからだ。

10週目の初物確認20回のうち、4分を超えたのは1回だけだった。番号を入れ替えた回で、4分12秒。班長はその日の計画表の余白に、鉛筆で小さく「+12秒」と書いていた。

赤いペンの35の上には、2本目の横線が引かれて、30に戻った。

段取り替えの枠を35分から30分に戻し、初物確認を4分の行として計画表に分け、日報に止めた時間の欄を足した前後を左右に並べた表
計画表と日報の直し方 ※筆者の運用記録(対象:計画表と製造の日報・期間:カードを貼って5週目〜10週目)

いまは確認台に立つことはないが、確認表に項目を足したいという相談を受けると、足したあとの2週間だけストップウォッチを当ててもらうようにしている。22秒なのか5分なのかで、話の行き先がまるで変わる。

段取り替えのたびに初物確認の時間をどう見込むかは、ものづくりハンドブックのM7 段取り替え・切替時の初物確認に「切替頻度の高い工程では、初物確認に要する時間を生産計画にあらかじめ織り込んでおく」と1行で書いてある。私たちの場合は、要する時間を数える前に、5分を書き足していた。

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計画を組む側から段取り替えを見直すときに手元にあったのが、田島悟『[ポイント図解]生産管理の基本が面白いほどわかる本』だ。生産計画の考え方を図で追える入門書で、班長が赤いペンで5分を足した理由を、計画の側から読み直すきっかけになった。

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初物確認で見落としていた一点を、次から拾えるようにした話 — 出荷後に刻印のかすれを客先から指摘され、確認表の刻印欄を最上段へ移し、確認の順番を①刻印②寸法3か所③外観四隅に固定したカードを作って、導入1か月で見落としが0だった記録。カードを作った経緯と最初の1か月は、こちらに書いてある。

6年前に自分が測った標準時間を、ストップウォッチで2週間測り直した記録 — 7つの作業要素を30サイクルずつ測り直し、3要素が実態より短く1台あたり29秒ずれていたのを直して、能率の月報が84%から94%に動いた記録。動いたのは作業ではなく物差しのほうだった、という結論は、赤いペンの5分にもそのまま当てはまる。

免責: 本記事は筆者個人の経験に基づく記録です。初物確認の項目や所要時間は、製品・設備・人数によって大きく変わります。秒数は1台の確認台で数えた値であり、実際の運用は各社の基準に沿ってご判断ください。

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この記事を書いた人

製造メーカーに10年以上。検査員から始めて生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは管理職。若手のころの失敗も含めて、現場で見たこと、試したことを書いています。座右の銘は「ピンチはチャンス」

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