2週間かけて自分の仕事を棚卸しして、やめると決めた1つの業務

18時を過ぎても、今日やるはずだった仕事が3つも手つかずのまま残っていた。品質保証部に異動してきて2年、こういう日が月に何度もあることに、ふと嫌気が差した。付箋に書き出したToDoは毎朝10個近くあるのに、夜には別の付箋に姿を変えて翌日へ持ち越されるだけだった。忙しいと言えば聞こえはいいが、何にそんなに時間を使っているのか、自分でも説明できないことに気づいて手が止まった。

翌朝、上司に「最近残業が増えている気がする」とだけ相談してみたが、返ってきたのは「みんな忙しいからね」という一言だった。それはそうかもしれないが、自分の忙しさの中身を自分で説明できないまま納得するのも気持ちが悪かった。この日から、自分の仕事を数字で見てみようと決めた。

目次

減らない仕事に気づいた日

その晩、私は自分の仕事を2週間だけ記録してみることにした。何にどれだけ時間を使っているかを可視化しない限り、何を減らせばいいのかも分からないと思ったからだ。記録の方法は難しくしないと決めた。ノートに30分区切りで、その時間にやっていたことを一言だけ書く。これなら通常業務を止めずに続けられる。

やめる業務を探すための棚卸しだと最初から周囲に宣言すると身構えられそうだったので、この時点では誰にも言わず、自分のノートだけでこっそり始めた。

記録用のノートは、これまで使っていた業務日誌の余白を流用した。新しいノートを買うと、それだけで「特別なことを始めた」感じが出てしまい、続かなくなりそうな気がしたからだ。普段の仕事道具の延長で始めることにこだわった。

まず2週間、記録してみた

2週間という期間は、ある程度の周期性を拾うために決めた。1週間だけだと、たまたま忙しかった日の印象に引っ張られる。月初と月末で仕事の中身が変わる部署でもあったので、最低でも2週間は見ておきたかった。記録を始める前に、私は自分の仕事をざっくり5つのくくりに分けておいた。検査記録の確認、会議、資料作成、問い合わせ対応、そして分類しづらい「その他」だ。

くくりを5つに決めるまでにも、実は少し迷いがあった。最初は10個近くに細かく分けようとしたが、細かすぎると30分ごとの記録が追いつかなくなりそうだったので、あえて粗い5分類に落ち着けた。分類の粒度を決めるだけで、地味に30分ほど使ってしまったのも今になって振り返ると面白い。

2週間の棚卸し計画の全体ロードマップ
2週間の棚卸し計画の全体ロードマップ ※筆者の運用記録(対象:自分の業務時間・期間:棚卸し2週間分)

順調だった最初の1週目

1週目は、思っていたよりすんなり記録が続いた。30分ごとに一言書くだけなので、検査記録の確認をしている最中でも手を止めずに書き込めた。1週目が終わって集計してみると、検査記録の確認に週の労働時間のおよそ3割、会議に2割、資料作成に2割という内訳が見えてきた。想像していたより会議の比率が高く、そこに少し驚いた。

ただ、この時点ではまだ「やめる業務」の候補は見えていなかった。どれも必要な仕事に思えたし、割合が高いからといって不要とは限らない。1週目の集計だけでは判断材料が足りないと感じ、2週目もそのまま記録を続けることにした。

会議の内訳をさらに細かく見ると、月に一度の定例会議のほかに、依頼されて出席するだけの打ち合わせが週に2〜3件あった。議事録係として呼ばれているだけの回もあり、自分が発言する場面はほとんどない会議もあることに、記録して初めて気づいた。

1週目の業務内訳を示した図
1週目の業務時間の内訳 ※筆者の運用記録(対象:自分の業務時間・期間:1週目の5日間)

詰まった2週目のつまずき

2週目に入ってから、記録がところどころ抜けるようになった。月末が近づき、いつもの業務に加えて監査対応の準備が重なったせいで、記録どころではない日が2日ほどあった。抜けた分は正直にノートへ「記録できず」と書いておいた。ここで無理に埋めても意味がないと分かっていたからだ。

2週目の集計では、「その他」に分類した時間の比率が1週目より明らかに増えていた。中身を見返すと、その多くが「問い合わせ対応」に付随する社内チャットのやり取りだった。1件1件は数分でも、積み重なると馬鹿にならない時間になっていることが、記録して初めて見えてきた。

監査対応の準備そのものも、思っていた以上に細切れの時間を食っていた。資料を1つ揃えては別件の電話が入り、戻ってきてまた資料の続きをする、という中断の繰り返しだ。中断そのものは記録しづらかったが、1つの作業に何度も戻ってきている痕跡がノートの端々に残っていた。この週だけは、5つの分類のうち資料作成の枠を「監査準備」に置き換えて記録した。

2週目の業務内訳とつまずきを示した図
2週目の業務時間の内訳とつまずき ※筆者の運用記録(対象:自分の業務時間・期間:2週目の5日間)

やめる候補を3つに絞る

2週間分の記録を並べて見返し、やめる、あるいは減らす候補になりそうな仕事を3つ書き出した。1つ目は、月次で作っている資料のうち、実は誰も見ていなかった補足シートの作成。2つ目は、都度発生する問い合わせに毎回個別で回答していたやり取り。3つ目は、形式だけになっていた週次の進捗共有ミーティングだった。

この3つを比べるために、私は「かかっている時間」と「やめたときの影響の大きさ」を軸に置いてみた。補足シートは時間はそこそこかかるが、なくなっても困る人がいなさそうだった。問い合わせ対応は時間も影響も中程度。週次ミーティングは時間はそれほどでもないが、参加者からは以前から「要点だけ共有できれば十分」という声が出ていたのを思い出した。

やめる業務の候補を3つ比較した図
やめる業務の候補を比較した図 ※筆者の運用記録(対象:候補3業務の時間と影響・期間:棚卸し後の検討期間)

やめると決めた1つの仕事

最終的にやめると決めたのは、月次資料の補足シートだった。過去半年分のアクセス状況を確認できる人に頼んで調べてもらったところ、実際に開かれた形跡がほとんどなかったことが決め手になった。問い合わせ対応と週次ミーティングは、やめるのではなく形を変える方向にした。問い合わせは、よくある質問をまとめた簡単な一覧を作って個別対応を減らし、週次ミーティングは時間を半分に短縮して要点共有だけにする案を提案した。

補足シートの作成には、毎月ならすと3時間ほどかけていたことも棚卸しの記録から分かった。決して膨大な時間ではないが、月3時間が積み重なれば年間で36時間、丸4営業日を超える計算になる。数字にしてみて初めて、なんとなく続けていた作業の重みに気づいた。

補足シートをやめると決めたとき、正直「本当にやめて大丈夫か」という不安はあった。誰も見ていないはずのものが、実は誰かの引き継ぎ資料として密かに参照されていないとも限らない。念のため、やめる前に関係者へ一度確認のメールを送ってから実行に移した。

確認のメールを送ってから返事が来るまでの数日は、正直落ち着かなかった。もし「実は見ています」という返信が来たら、この棚卸し自体の前提が崩れる。幸い、返ってきたのは「言われてみれば見ていなかった」という反応ばかりで、ほっとしたのを覚えている。

補足シート作成の前後で業務時間がどう変わったかを示した図
補足シート作成にかけていた時間の変化 ※筆者の運用記録(対象:月次資料の補足シート作成時間・期間:やめる前後それぞれ1か月)

周囲に結果を共有した日

補足シートをやめると決めた後、私は棚卸しの結果を部内の朝礼で簡単に共有した。「2週間、自分の仕事を記録してみたら、こういう内訳でした」という話をしただけだが、思いのほか反応があった。他のメンバーからも「自分も何にそんなに時間を使っているか分からない」という声が出て、その場のノリで2人ほどが同じように記録を試してみることになった。

週次ミーティングの短縮案は、私一人の判断ではなく、参加者に一度意見を聞いてから決めた。「短くしてほしい」という声が多数だった一方で、1人だけ「進捗を細かく共有できる場は残しておきたい」という意見もあった。完全になくすのではなく、時間を半分にして要点だけに絞る形に落ち着いた。全員の希望を100%満たす形にはならなかったが、記録という材料があったおかげで、感覚論ではなく数字を見ながら話し合えたのはよかったと思う。

棚卸しを終えて分かったこと

補足シートをやめてから1か月ほど経つが、今のところ困ったという声は上がっていない。浮いた時間は、月に数時間程度と決して大きくはないが、それでもゼロではなかった。それより大きな収穫は、自分がどこに時間を使っているかを言葉と数字で説明できるようになったことだったと思う。以前は「忙しい」としか言えなかったが、今は「検査記録の確認に3割、会議に2割」と具体的に答えられる。

やめる業務を1つ決めるだけの棚卸しに、2週間もかけるのは大げさだっただろうか。振り返ってみると、記録した2週間そのものが、自分の仕事を見直すきっかけになっていたので、時間をかけた分の意味はあったと感じている。同じように仕事が減らないと感じている人がいたら、まずはやめる前提を置かずに、ただ記録してみることから始めてみてほしい。

今でも月に1回だけ、1週間だけの簡易記録をつけるようにしている。毎回やめる業務が見つかるわけではないが、増えかけている仕事の芽に早く気づけるようにはなった。棚卸しは一度やって終わりではなく、細く長く続けるものなのかもしれないと、今は感じている。

業務改善の進め方をもっと基準から知りたい方は、ものづくりポータルもあわせてご覧いただきたい。

参考書籍

やめる業務を選ぶ過程で、以前読んだ『エフォートレス思考』(グレッグ・マキューン)の内容を思い出した。頑張って成果を出すのではなく、力を抜いて同じ成果を出す設計を考えるという内容が、今回のように仕事を減らす場面の考え方と重なった。

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無料のタスク管理ツールを3つ試して、現場に残ったのはどれか ― 仕事の記録や管理の道具について、別の角度から試した話。

本記事は筆者個人の経験に基づく内容であり、業務のやめ方や記録方法の効果を保証するものではありません。実際の業務見直しは、各職場の状況や関係者との合意に基づいて判断してください。

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この記事を書いた人

製造メーカーに10年以上。検査員から始めて生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは管理職。若手のころの失敗も含めて、現場で見たこと、試したことを書いています。座右の銘は「ピンチはチャンス」

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