クレームの一次回答を24時間以内に決めた日、原因の欄を空けた理由

期間
2026年4月13日〜7月17日(決めたのは4月14日。一次回答を24時間以内に出す運用を4月20日から13週間試した)
対象
客先からの品質クレーム11件の一次回答(営業経由で客先へ出す最初の連絡)
体制
品質保証の管理職である私と、品証の担当者2人、営業の担当者1人、営業課長
結論
原因の欄を空けた4項目の一次回答に決めてから、11件中9件を24時間以内に出せた。客先からの催促は13週間で3件から1件に減り、最終回答までの日数は変わらなかった。

営業の担当者が、受話器を置いてから立ち上がり、私の席まで歩いてきて、メモを1枚、机の端に置いた。4月13日の月曜、夕方の5時前だった。メモには客先の品質担当の名前と、「先週金曜の件、まだ何も連絡がないのはどういうことか」という言葉が、そのまま書いてある。メモは営業が使っている裏紙で、字は急いで書いたのか、いつもより大きかった。

先週金曜の件は、私の手元にあった。現品は今朝届いたばかりで、品証の担当者が寸法を測っている途中だ。原因はまだ分からない。分からないから、連絡していなかった。

「金曜の時点で、受け取ったことだけでも言えませんでしたか」と営業の担当者に聞かれて、私は返事に詰まった。

目次

遅いと言われた数字

その日の夜に、前の1年分のクレーム対応の記録を並べた。2025年4月から2026年3月までで14件。客先に最初の回答を出すまでの日数は、最短で1営業日、最長で11営業日、平均すると4.5営業日だった。最初の回答というのは、うちでは原因と暫定処置を書いた報告書のことで、原因が分かるまで出さないのが暗黙の決まりになっていた。

記録はクレーム台帳のExcelで、受理日の列と報告書の提出日の列はあったが、その差を出す列がなかった。その夜、列を1つ足して14行ぶん引き算をした。

14件のうち、その回答を出す前に客先から催促の電話かメールが入ったものが6件。営業の担当者はその6件をすべて受けていて、私は1件も受けていなかった。

催促を受けていたのは私ではなく、営業だった。4.5営業日という数字を、私はその夜まで一度も数えたことがなかった。

3つの選択肢と、動かせない制約

翌朝、選べる道を3つ書いた。1つ目は今までどおり、原因が分かってから回答する。2つ目は、受け取ってから24時間以内に、原因を書かない一次回答を出す。3つ目は、24時間以内に推定の原因まで書いた一次回答を出す。

制約も4つ書いた。現品が客先からうちに届くまで、早くて翌日、遠方だと2日かかる。客先への連絡は営業が窓口で、品証が直接メールを出す経路はうちにはない。土日と祝日は、電話が鳴っても取る人がいない状態だ。品証の担当者は2人で、クレーム以外の仕事を止めるわけにはいかない。

3つ目の推定原因を書く案は、最初に書いたときは一番よく見えた。速いうえに中身がある。紙に書いた3つ目の横には、その朝、丸がついていた。

3つの選択肢と4つの制約 ※筆者の運用記録(対象:クレーム一次回答の運用案・期間:2026年4月14日)
3つの選択肢と4つの制約 ※筆者の運用記録(対象:クレーム一次回答の運用案・期間:2026年4月14日)

4つの基準を紙に書いた

選択肢を並べただけでは決まらないので、基準を4つ、優先順位をつけて書いた。一番上は、書いたことが後で覆らないこと。2番目は、客先がその時点で一番困っていること、つまり止まっているラインをどうするかに答えているかどうかを見る。3番目は社内で回るかで、目安は1件あたり20分以内。4番目は、書面としての見栄えだ。

2番目を具体的に言うと、客先が代替品を待つのか、手持ちの在庫を選別して使うのかを、その日のうちに決められるかどうかだ。うちが暫定処置として「同ロットの在庫は全数選別して明日出荷する」と書ければ、客先は翌日の生産計画を組める。原因が書いてあっても、これが書いていなければ客先の困りごとには答えていない。

覆らないことを見栄えより上に置いたのは、3年前に是正処置の報告書を「原因が腑に落ちない」と差し戻された経験があるからだ。あのとき先に出した推定原因は、後から違うと分かった。速く出した紙に書いた推定は、取り消すのに速く出した何倍もかかる。

4つ目の見栄えを残したのは、営業課長が「薄い紙を客先に出したくない」と言うのが分かっていたからだ。落とすのではなく、最後に置いた。

推定原因を書く案が落ちた

3つの案に4つの基準を当てた。

推定原因を書く案は、一番上の基準で落ちた。現品が届く前に推定原因を書けば、届いた現品を見て覆る。差し戻しの経験がそのまま当てはまる。従来どおりの案は、2番目の基準で落ちた。客先のラインが止まっているあいだ、うちからの連絡が4.5営業日ないというのは、困っていることに答えていない。

残った2つ目の案は、上の3つの基準を通り、4つ目の見栄えで弱かった。書くのは受理の日時、現品と数量の確認状況、うちの暫定処置、次回連絡の期日の4項目だけ。原因の欄は「調査中」とだけ書いて空ける。A4で1枚、埋まるのは上半分だ。下半分には原因と対策の欄をそのまま残して、「調査中」と最初から印刷しておいた。白い空欄で残すと、書く側が埋めたくなる。刷ってあれば埋めようがない。

4つの基準に3つの案を当てた結果 ※筆者の運用記録(対象:クレーム一次回答の運用案・期間:2026年4月14日)
4つの基準に3つの案を当てた結果 ※筆者の運用記録(対象:クレーム一次回答の運用案・期間:2026年4月14日)

4月14日の火曜の昼、営業課長を廊下で捕まえて、この紙を見せた。立ち話で15分。「薄いな」が最初の一言で、「でも催促の電話は減るな」が2つ目だった。原因の欄を空けたまま出すことに、私自身も引っかかりが残っていた。それでも、覆らないことを一番上に置いた以上、埋めるわけにはいかなかった。

決めたのはその場で、運用は翌週の4月20日からにした。様式を1枚作るのと、品証の担当者2人に説明するのに、それだけかかった。

13週間で11件

4月20日から7月17日までの13週間で、クレームは11件あった。受理から一次回答までの時間は、24時間以内が9件。超えた2件は、土曜の午後に客先からメールが入って月曜の朝一番に出した1件が約40時間、品証の担当者が2人とも出張で、現品の確認が私の会議の後ろに回った1件が29時間だった。

最初の1件は4月22日の水曜だった。午前10時に営業から連絡が入り、現品は翌日着。品証の担当者がその場で様式を埋め、私は客先から送られてきた写真を見て「現品は明日着、写真で外観を確認済み」と確認状況の欄を直し、11時20分に営業へ渡した。客先へのメールは昼前に出ている。受理から2時間足らずだった。

一次回答を書く時間は、様式ができてからは1件15分から20分に収まった。品証の担当者が書き、私が読んで営業に渡す。営業がメールに載せて客先へ送る。この流れで一番時間がかかるのは営業がメールを書く部分ではなく、私が現品を自分の目で見に行く部分だった。見ないで「現品確認済み」とは書けない。

催促は、同じ13週間で1件。前の年の同じ13週間は3件だった。1件の催促は、40時間かかった土曜発生の案件で、月曜の朝に営業が出社する前に客先から電話が入っていた。

13週間11件の一次回答 ※筆者の運用記録(対象:客先クレーム11件の一次回答・期間:2026年4月20日〜7月17日)
13週間11件の一次回答 ※筆者の運用記録(対象:客先クレーム11件の一次回答・期間:2026年4月20日〜7月17日)

原因の欄を空けたことについて、客先から「原因は」と聞き返されたのは11件中3件。ただ、次回連絡の期日を書いてあったので、3件とも「では、その日に」で終わった。期日を書かずに空欄だけ出していたら、この3件は催促に変わっていたと思う。

速くならなかった方の数字

最終回答、つまり原因と対策を書いた報告書を出すまでの日数は、変わらなかった。前の1年が平均8営業日で、13週間の11件も平均8営業日。一次回答を速くしても、原因究明は速くならない。現品が届く日、測定機の順番、外注先への確認、そういうものは一次回答の様式とは関係なく進む。

ここは決めたときに見えていなかった。一次回答が速くなれば全体が速くなるような気がしていたが、速くなったのは客先が「うちの件が動いている」と分かるまでの時間で、動く速さそのものではない。

7月から1つ足した。一次回答の次回連絡の期日を「3営業日以内」に固定して、その日に中間報告を出す。原因が分かっていなくても、分かっていないことと、いつまでに何をするかを書く。これは決めた時点の基準にはなかった項目で、13週間の途中で、3件の聞き返しを見てから足したものだ。

土日の発生をどうするかは、まだ決めていない。当番を置くほどの件数ではなく、置かなければ40時間の案件がまた出る。11件のうち土日発生は1件で、この1件のために当番を作るのが正しいのか、今も答えが出ていない。

営業課長には7月末に11件の一覧を見せた。「薄い紙でも、期日が書いてあれば薄くないな」と言われて、4月の「薄いな」はそこで取り消された。

営業の担当者は、4月のあの日以来、私の席にメモを置きに来ていない。催促の電話が1本だけ鳴った月曜の朝、その1本は私が受けた。

速くなった数字と、変わらなかった数字 ※筆者の運用記録(対象:客先クレームの回答日数と催促件数・期間:2025年4月〜2026年7月17日)
速くなった数字と、変わらなかった数字 ※筆者の運用記録(対象:客先クレームの回答日数と催促件数・期間:2025年4月〜2026年7月17日)

第一報・中間報告・最終報告で、それぞれ何を確定させて出すかの線引きは、ものづくりハンドブックのB6 顧客連絡・対外対応の作法にまとめてある。ここに書いたのは、その第一報だけを24時間で出すと決めるまでの迷いで、線引きの型そのものはそちらが早い。

参考書籍(PR)

一次回答の4項目を「受理・確認状況・暫定処置・次回期日」の順に並べたのは、バーバラ・ミント『考える技術・書く技術』にある、読み手が先に知りたいことから書く組み立てに寄せたからだ。報告書の書き方の本として扱われることが多いが、原因を書かない1枚の紙を組むときにも、順番の決め方はそのまま使えた。

【PR】

考える技術・書く技術新版 問題解決力を伸ばすピラミッド原則 [ バーバラ・ミント ]

次に読む

是正処置の期限に間に合わないと分かった日、いつ何を連絡したか — 提出期限の2営業日前に、原因を書かずに進捗6割と残作業だけを客先へ電話で伝え、3営業日の延長を認められた記録。残り期限が3営業日を切ったら状況を共有する運用を部の標準にしたところまで書いてある。

顧客監査の指摘事項をどこまで横展開するか迷った話 — 選択肢を並べる前に判断基準を4つ固定し、当てはめた結果として条件の近い2台までに絞った記録。基準を書いた1枚を決裁に添えたら質問が出ずにその場で承認が下りている。基準を先に置く順番は、この記事の4項目の決め方とそろえている。

免責: 本記事は筆者個人の経験に基づく記録です。クレーム対応の手順や回答期限は客先との取り決めと業界で異なります。件数と日数は自社の記録から数えた値であり、実際の運用は各社の基準に合わせてご判断ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

製造メーカーに10年以上。検査員から始めて生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは管理職。若手のころの失敗も含めて、現場で見たこと、試したことを書いています。座右の銘は「ピンチはチャンス」

目次