自分の説明が伝わらない原因を、言語化の型で7日間探して残った1行

期間
2026年6月9日〜8月28日(品質会議で聞き返された日から、7日間のメモを経て、夏の終わりに聞き返された回数を数え直すまで)
対象
私自身の口頭の説明。品質会議・後輩への指示・客先への電話・上司への報告など、伝わらなかった7件
体制
品質保証の管理職である私が1人でメモを書き、点検項目の1つだけ後輩1人に判定を頼んだ
結論
伝わらない原因は言葉の量ではなく順番だった。相手が最初に聞きたい1語から始めるようにして、聞き返される回数は月5回から1回に減った。

月次の品質会議で、私の説明が5分で終わったあと、製造部長が同じ質問をもう1回した。「で、結局どうするんだっけ」。私は是正処置の方針を、原因の切り分けから順に話したつもりだった。部長の手元の資料には、私が配った1枚が置いてあって、ボールペンの先が2行目のあたりで止まっていた。2026年6月9日の火曜だった。

2日後の木曜、今度は後輩に「さっきの説明、もう一回いいですか」と言われた。検査記録の保管場所を変える件で、私は理由と手順を続けて話した。後輩は手順の部分だけをメモに書き、理由のところは空白にしていた。

2回続くと、相手のせいにはできない。

目次

7日間、1日1枚に決めた

説明が下手だと言われたことは、若手の頃から何度かある。検査員だった頃に先輩から「報告は長い」と言われ、生産技術に移ってからは「何を頼まれているのか分からない」と製造の人に言われた。そのたびに気をつけたつもりで、何が悪いのかを紙に書いて確かめたことは1度もなかった。

やり方を決めたのは6月13日の土曜で、家の机だった。ものづくりハンドブックにある言語化の自己診断を、42問答えてみた。かかったのは12分。7つの領域が100点で出て、一番低いのが構造化の46点、次が伝達の54点だった。低い領域が2つ分かっただけで、どう直すかは分からない。ただ、上から順に話して結論が最後に来る癖は、構造化という言葉に当てはまる気がした。

決めたのは3つ。7日間、平日に1日1件、その日に伝わらなかった説明をA4の紙1枚に書く。書く時間は1分以内で、書きながら整えない。書いたあとで、点検項目4つに当てる。

診断の結果の下に、優先する領域を1つ選んで2か月続けるように、と書いてあった。2か月は長い。続かないのが目に見えていたので、7日と区切った。7日で何も見えなければ、やり方のほうを変える。

点検項目は自分で決めた。①結論が最初にある。②具体例を1つ入れる。③相手が知っている言葉だけ。④相手の知りたい順番に並べる。①と②は本で読んだ型で、③と④は製造部長と後輩の顔を思い出して足した。

A4の紙は、会社の複合機の横にある裏紙の束から7枚だけ抜いて、クリップで留めて引き出しに入れた。7枚しか用意しなかったのは、8日目があると自分に思わせないためだ。

月曜の朝から、その4つを当てていくことにした。

自己診断の結果と、7日間の決めごと3つ、点検項目4つを並べた表
7日間の決めごとと点検項目4つ ※筆者の運用記録(対象:私の口頭の説明7件・期間:2026年6月13日〜6月23日)

1日目から3日目

6月15日の月曜、1枚目は先週の品質会議の説明を書き直したものにした。始業前の検査室の隅で、スマートフォンのタイマーを1分にセットして書いた。手が止まる前に鳴る。書けたのは9行で、結論の「ライン2の検査頻度を倍にする」は、紙の下から3行目にあった。①が×で、②は○、③は○、④は×。原因の切り分けを先に話したのは、自分が調べた順番で、部長が知りたい順番ではなかった。

9行のうち上の6行は、部長が聞いていない話だったことになる。

2枚目は火曜の午後、後輩への指示だった。書いてみると主語がない。「移す」とだけ書いてあって、誰が、いつ移すのかが紙にない。②の具体例もなく、④も×。○が付いたのは①と③だった。後輩がメモに理由を書かなかったのは、理由が長かったからではなく、手順に主語がなくて自分が動く話だと分からなかったからだと思う。

3枚目は水曜、客先の購買の担当者への電話。初品の確認方法を説明したもので、③が×だった。「初品」「ロットアウト」を、私は社内で使う短い言い方のまま口にしていた。納期をいつ答えたかを読み返すと、手順を全部話したあとの最後の1行で、④も×だった。相手は品質の人ではなく購買の人で、電話の途中で「その初品というのは」と聞き返されている。

電話を切ってから、担当者が最後に「では、その初品の書類をお待ちしています」と言ったのを思い出した。初品という言葉は、あの電話で相手が覚えさせられた言葉だった。

3枚を並べると、④だけが3枚とも×だった。それなのに、私はまだ①の結論の位置ばかり見ていた。原因が1つに見えるまで、あと2日かかる。

木曜の朝礼で、初めて紙の順番どおりに話す日が来る。

1枚目から3枚目のメモの相手と内容、点検項目4つの○×を並べた表
1〜3枚目のメモと点検結果 ※筆者の運用記録(対象:メモ1〜3枚目・期間:2026年6月15日〜6月17日)

4日目、朝礼で1回で通った

6月18日の木曜、朝礼で検査室の照明工事の連絡をした。前の晩に4枚目の紙に書いておいて、①から順に確かめてから話した。「来週の火曜、検査室の手前の台だけ午後から使えません。奥の2台に寄せてください。理由は照明の交換です」。3文で、聞き返しはなかった。朝礼のあと、現場のリーダーが「火曜の午後ですね」とだけ確認しに来た。

紙に書いてから話すと、話が短くなる。短くなった分だけ、自分では物足りない。

ただ、これは連絡であって説明ではない。4枚目の紙の裏に、そう書いた。

5日目、4つとも○なのに伝わらなかった

6月19日の金曜、上司に是正処置の進み具合を報告した。5枚目の紙は前日の夜に書いてあって、①結論が先、②具体例あり、③社内の相手なので言葉は通じる、④原因から対策の順で、自分では4つとも○だった。

上司は途中で遮って、「で、いつまでに終わるの」と聞いた。

報告は会議室ではなく、上司の席の横に立って話していた。上司は別の書類に目を落としたままで、「いつまで」のあとに顔を上げた。期限を答えると、「じゃあ、それで」と言って書類に戻った。私が用意した対策の中身は、聞かれないまま終わっている。

期限は紙の一番下に書いてあった。話す順番では最後で、上司はそこまで待たなかった。①の「結論が最初」を、私は「対策の中身が最初」と読み替えていた。上司にとっての結論は対策の中身ではなく期限で、④の「相手の知りたい順」も、私が想像した相手の順であって、上司が口にした順ではなかった。

この日の紙には、4つの○の横に、赤で「上司の1語=いつまで」と書き足した。書いてから、月曜の製造部長の「で、結局どうする」も同じだと気づいた。部長の1語は「どうする」で、私はそれを下から3行目に置いていた。

点検項目が4つとも○でも伝わらない以上、4つの外に原因がある。土日を挟んで、その1語が何なのかを確かめることにした。

点検項目4つがすべて○だった報告の紙と、上司が最初に聞いた「いつまで」を左右に並べた対比
5枚目、4つとも○で伝わらなかった報告 ※筆者の運用記録(対象:6月19日の上司への報告1件・期間:2026年6月19日)

6日目に足した5つ目と、やめた2つ

6月22日の月曜、点検項目に5つ目を足した。⑤相手が最初に聞きたい1語で始めている。1語は相手ごとに違う。製造部長なら「どうする」、上司なら「いつまで」、後輩なら「誰が」、客先の購買の担当者なら「いくらで」か「いつ届く」だと、過去の会話を思い出して紙の余白に書いた。

この日の6枚目は、生産技術の担当者への依頼だった。治具の図面を1か所直してほしい件で、⑤に沿って「木曜までに1か所だけ直してほしい」から始めた。担当者は「木曜ですね」と返して、図面のどこかを聞いてきた。聞き返しではなく、続きの質問だった。

やめたことが2つある。1つ目は、1日2件に増やす案で、3日目に試して10分かかり、その日でやめた。1分で書けないメモは、書きながら整えてしまう。2つ目は③の判定で、相手が知っている言葉かどうかを自分で判定するのは無理があった。自分の言葉は全部自分が知っている言葉なので、×が付かない。3枚目の「初品」も、客先に聞き返されて初めて×だと分かった。6日目からは③だけ後輩に紙を見せて、「この中で意味が分からない言葉に丸を付けて」と頼んだ。後輩は1枚目から6枚目までを順に読んで、丸を付けたのは3枚目だけだった。「ロットアウト」と「限度見本」の2語。限度見本は検査室で毎日使う言葉で、後輩は品質保証に来て2年目だ。それでも丸が付いた。社内の後輩でも引っかかる言葉を、私は客先の購買の担当者に使っていた。

丸を付けながら後輩が「これ、私も同じことを言われます」と言った。後輩の相手は現場のリーダーで、1語は「今日中か」だそうだ。

7枚目は6月23日の火曜、製造部長との打合せだった。品質会議の続きで、⑤の1語は「どうする」。「ライン2の検査頻度を7月から倍にします。理由は3つあって」と始めた。部長は「倍か」と言って、3つの理由のうち2つ目で「分かった」と言った。3つ目は聞かれていない。あとで紙に当てると、理由を3つ並べただけで具体例が1つもなく、②は×。それでも通った。

最後の紙を書き終えて、引き出しのクリップには紙が残っていない。

足した5つ目の点検項目と相手ごとの1語、6枚目と7枚目の結果、やめた2つを並べた表
5つ目を足した点検表と、相手ごとの1語 ※筆者の運用記録(対象:点検項目の見直しとメモ6〜7枚目・期間:2026年6月22日〜6月23日)

7枚を数えて、残った1行

後輩の丸も入れて7枚をまとめて数えると、①結論が後に来ていたものが1枚、②具体例がなかったものが2枚、③相手の知らない言葉があったものが1枚、④順番が自分の調べた順だったものが3枚。あとから足した⑤を7枚すべてに当て直すと、相手の1語で始めていなかったものが4枚あった。4枚のうち3枚は④も×で、順番が違う紙と、相手の1語で始めていない紙は、ほぼ同じ紙だった。

7枚のメモに点検項目①から⑤の×が付いた枚数を並べた棒グラフ
7枚に×が付いた数(点検項目別) ※筆者の運用記録(対象:メモ7枚・期間:2026年6月15日〜6月23日)

診断で低かった構造化と伝達は、紙の上では④と⑤に当たる。言葉の量ではなく順番の問題だと分かったのは、5日目に4つとも○で伝わらなかった紙があったからで、あの1枚がなければ、私は「結論を先に」で終わっていたと思う。

7枚はいま、クリアファイルに入れて机の引き出しの一番上にある。1枚目と7枚目は同じライン2の話で、1枚目は9行、7枚目は4行だった。減った5行は、部長が聞いていなかった6行とほぼ重なる。

点検項目5つのうち、7月からいまも紙に書き続けているのは⑤だけだ。話す前に、相手の1語を紙の端に書く。それだけの1行になった。

7月14日の火曜、月次の品質会議で、ライン2の検査頻度を倍にした結果を報告した。「7月の流出は0件でした」から始めて、そのあとに頻度と工数を話した。製造部長は資料を最後までめくって、「じゃあ8月は戻すのか」と聞いた。聞き返しではなく、次の話だった。6月の会議で止まっていたボールペンの先は、この日は資料の一番下まで動いていた。

回数も数えた。「もう一回いいですか」「で、結局」の類を、6月9日からメモ帳の隅に正の字で付けている。6月は5回、7月は3回、8月は28日の金曜までで1回。その1回は客先の購買の担当者からで、納期の変更を伝える電話だった。私は金額の話から始めて、相手は「それで、いつ届くんですか」と遮っている。相手の1語は「いつ届く」で、私はその日だけ「いくらで」を先に置いていた。相手の1語を外すと、いまでも聞き返される。

6月から8月の月別に聞き返された回数を並べた棒グラフ
聞き返された回数(月別) ※筆者の運用記録(対象:「もう一回いいですか」「で、結局」の類の回数・期間:2026年6月9日〜8月28日)

紙に書く前は、伝わらない原因を自分の語彙の少なさだと思っていた。実際には語彙の問題は③の1枚分で、残りは順番だった。この見立てが正しいと言い切れるほどの枚数ではない。それでも、7枚で順番の癖が見えたことは、10年以上気をつけていて見えなかったことより重い。

6月13日に42問を答えたことが、この7日間の起点になった。ものづくりハンドブックの言語化スキル自己診断は、観察・具体化・構造化・伝達などの7領域で現在地を出す自己認識のための目安で、低い領域を1つ選んで2か月続けることを勧めている。私が続けているのは構造化の側の、相手の1語を先に書くという1行だ。

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1枚を1分で書いて、書きながら整えない。この決めごとは自分で考えたものではなく、赤羽雄二『ゼロ秒思考』のA4メモをそのまま借りた。7日間の道具はこの本から出ている。始める前に読み返して、1分という時間なら守れる気になった。

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品質保証の仕事を人に説明するとき、いつも詰まる一言 — 「検品ですね」で終わる自己紹介を1年で11回数え、相手の言葉を否定せずに入り口にする言い方へ変えたら、半年で9回中7回は最後まで聞いてもらえた記録。相手の最初の一言をどう扱うかという点で、今回の「相手の1語」と同じ場所を見ている。

後輩に品質保証の仕事を引き継ぐとき、最初に渡した3枚 — 配属初日に検査基準の早見表・連絡ルート・相談していい人の一覧の3枚だけを渡し、前回の後輩のときは週9回あった同じ質問が今回は週3回に、独り立ちも3か月から1か月になった記録。渡す物を絞る話で、話す順番を絞る今回とは道具が違う。

免責: 本記事は筆者個人の経験に基づく記録です。自己診断の点数や聞き返された回数は私1人の値で、説明の癖は人によって異なります。話し方の改善は、ご自身の職場の相手と場面に合わせてご判断ください。

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この記事を書いた人

製造メーカーに10年以上。検査員から始めて生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは管理職。若手のころの失敗も含めて、現場で見たこと、試したことを書いています。座右の銘は「ピンチはチャンス」

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