QC検定に受かってから、現場の見え方はどう変わったか

期間
QC検定2級合格の通知が届いた日から半年間
対象
自分自身のキャリアと、社内での資格の受け止められ方
体制
品質保証部の管理職・部下10人を持つ立場での経過観察
結論
資格そのものより、資格をどう語るかで周囲の反応は変わった。

合格通知のはがきは、今も机の引き出しの奥にしまってある。QC検定2級、合格。届いた日の夜、私はそのはがきを2回読み返してから、そっと引き出しに入れた。3級のときと同じように現場の実務から組み直した半年の勉強を思えば、もう少し達成感が続くと思っていたのに、翌朝には普段どおりの朝礼が待っていた。

目次

合格を伝えた日の反応

合格を伝えたのは、直属の上司と部下10人、あわせて11人だった。上司からは「良かったな」という一言が返ってきた。一方、部下からの反応は薄かった。はっきり祝ってくれたのは2人だけ。残り8人は「そうなんですね」という程度の相槌にとどまった。資格そのものが仕事にどう関係するのか、伝わっていなかったのだと思う。

合格を伝えた相手の反応(11人の内訳) ※筆者の運用記録(対象:合格報告をした上司・部下計11人・期間:合格通知が届いた当日)
合格を伝えた相手の反応(11人の内訳) ※筆者の運用記録(対象:合格報告をした上司・部下計11人・期間:合格通知が届いた当日)

正直、少し拍子抜けした。半年間の勉強を後悔してはいなかったが、周りの反応がここまで薄いとは思っていなかった。合格した日の帰り道に思い描いていた光景とは、少し違っていた。

実は4年前にも、別の部下が同じ資格に合格していた。そのときの私も、似たような相槌しか返していなかった。今回それを思い出し、少し気まずくなった。

1か月目、変わらない現場

合格から1か月、現場の仕事は何も変わらなかった。検査記録のチェックも、是正処置のレビューも、これまでと同じやり方で回っていた。資格を取ったことで自分の中に何か変化がある気がしていたが、少なくとも周囲から見える形では何も起きていなかった。

この時期の私は、正直どこかで肩透かしを食らった気分でいた。勉強に使った参考書は、机の脇に積んだままになっていた。

片づける踏ん切りもつかなかった。

この1か月の間、社内の掲示にも合格者一覧が貼り出されたが、目を留める人はほとんどいなかった。自分の名前を見つけても、特に感慨は湧いてこない。むしろ、半年間の勉強時間を思うと、この静かさに少し戸惑った。

3か月目、指摘の質が変わった

変化を感じ始めたのは3か月目だった。部下が書いた是正処置報告書をレビューする際、以前なら「原因がはっきりしない」としか言えなかった箇所に対して、QC検定の勉強で学んだ工程能力や特性要因図の考え方を使って、具体的にどこが弱いのかを指摘できるようになっていた。

この3か月で見たレビューは合計18件。そのうち5件は、以前の自分なら見過ごしていたはずの因果関係の飛躍を指摘できた実感がある。差し戻しの回数自体は減らなかったが、差し戻す理由の説明が具体的になったことで、部下からの再質問は明らかに減った。

3か月間のレビュー実績 ※筆者の運用記録(対象:是正処置報告書のレビュー・期間:合格後1〜3か月目)
3か月間のレビュー実績 ※筆者の運用記録(対象:是正処置報告書のレビュー・期間:合格後1〜3か月目)

印象に残っているのは、ある部品の寸法不良の是正処置報告だ。原因欄には「作業者の確認不足」とだけ書かれていた。以前の私なら、その場でそのまま受け取っていたと思う。だが工程能力の考え方を当てはめると、その工程はもともとばらつきが大きく、確認の有無にかかわらず不良が出やすい状態だったことが分かった。書き直しを指示し、設備側の対策も加えた報告書に直った。

この報告書を書いた部下には、最初は戸惑われた。「今までこれで通っていたのに」という顔をされたのを覚えている。ただ、直した報告書を得意先に提出したところ、追加の質問が一切来なかった。以前は同じような報告で2往復、3往復とやり取りが続くことが多かったので、その違いは部下自身も実感したようだった。

ある部下から「今回の差し戻し、前より納得できました」と言われたのは、この時期だった。小さな一言だったが、半年間の勉強が初めて仕事の形になった瞬間のように感じた。

6か月目のつまずき

順調に見えた半年目、後輩から「QC検定ってどう役に立つんですか」と聞かれた。とっさに言葉に詰まった。用意していたつもりの答えは3つあったが、その場で説明できたのは1つだけ。残り2つは、自分の中で「なんとなくそう思う」という感覚のままで、人に説明できる形になっていなかった。

説明できた1つは「報告書の指摘が具体的になった」という、さきほどの18件の話だった。残り2つ、「後輩育成に使える」「会議での説得力が増す」は、自分でもどこまで本当か確信が持てないまま口にしていたのだと、聞かれて初めて気づいた。

6か月目に答えられた質問の内訳 ※筆者の運用記録(対象:後輩からの質問への回答・期間:合格後6か月目)
6か月目に答えられた質問の内訳 ※筆者の運用記録(対象:後輩からの質問への回答・期間:合格後6か月目)

後輩はさらに「先輩は資格を取る前と後で、何が一番変わったんですか」とも聞いてきた。この質問にも、その場ではうまく答えられなかった。帰りの電車の中で改めて考え直し、翌日にもう一度話す約束をした。

資格を取ったこと自体を誇らしく語ろうとするほど、後輩の目が少し冷めていくのも感じた。伝え方を間違えている、とその場で気づいた。会話はそのまま気まずく終わった。

気まずさだけが残った。

語り方を変えてから

その日を境に、私は資格を前面に出す説明をやめた。「QC検定を持っているから分かる」ではなく、「この工程能力の考え方を使うと、ここまで数字で説明できる」という、実務の型で語るように変えた。同じ後輩に1週間後、別の不具合報告を題材に同じ考え方を説明したところ、今度は最後まで聞いてくれた。

言い方を変えただけで、伝わり方がこれほど違うとは思っていなかった。資格は語る中身を支える土台であって、前に出すものではないのだと、このとき初めて腑に落ちた。以降、資格の名前を口にする回数は、自分から意識して減らすようにしている。

試しに、同じ考え方を別の部下3人にも順番に説明してみた。資格の名前を出さずに数字だけで話すと、3人とも最後まで聞いたうえで、自分の担当する工程にも同じ見方を当てはめようとしてくれた。資格を語るより、数字を語る方が人を動かすのだと、このときはっきり分かった。

語り方を変える前後の反応 ※筆者の運用記録(対象:後輩・部下計4人への説明・期間:合格後6か月目以降)
語り方を変える前後の反応 ※筆者の運用記録(対象:後輩・部下計4人への説明・期間:合格後6か月目以降)

相談されるようになった

語り方を変えてから、部署の外からも声がかかるようになった。製造課の主任から「工程能力の話、うちの会議でもしてもらえないか」と頼まれたのは、語り方を変えて2週間ほどしたころだった。資格の話は一切せず、実際の不良データを使って30分ほど説明した。翌週、その課で工程能力を意識した会話が増えたと、あとから聞いた。

この会に呼ばれる少し前、実は同じ内容を課長会議で発表する話も一度持ち上がっていた。そのときは資格を前面に出した説明案を用意していて、直前に自分で取り下げた。準備していた資料をそのまま出していたら、また6か月目と同じ空気になっていたと思う。取り下げてよかったと、今は思っている。

もう1つ気づいたことがある。4年前に同じ資格を取っていた部下は、当時から資格の話を一切しない人だった。振り返れば、その部下の報告書はいつも具体的で、私が今ようやくできるようになったことを、当時から静かにやっていたのだと思う。あのとき薄い相槌しか返さなかった自分を、今さらながら反省している。

先日、その部下を呼んで直接聞いてみた。「資格の話、なんでしないの」。返ってきたのは「聞かれたら困る質問が多かったので」という答えだった。当時の私自身が、資格をどう仕事に活かせばいいのか分からず、深く聞かなかったのだと気づかされた。

6か月目の後輩には、この一連の経緯も含めて改めて話す機会を作った。資格を取ったことより、取ったあとにどう振る舞うかで人の受け止め方が変わるという話をしたところ、今度はうなずきながら聞いてくれた。

その後輩は今、次のQC検定を自分で申し込んだと聞いている。理由を聞くと「役に立つかどうかより、まず自分で確かめたくなった」と答えた。半年前の自分の答え方とは、少し違う理由だった。

半年間を数字で振り返る

合格から半年間で見た是正処置レビューは合計42件。そのうち差し戻したのは月平均3件前後で、この件数は合格前とほぼ変わらなかった。変わったのは、差し戻し理由を説明するのにかかる時間で、以前は1件あたり平均20分ほど話し込んでいたのが、半年後には12分ほどに縮んでいた。部下からの再質問の件数も、月平均9件から4件に減った。

この数字は、私が自分で手帳に書き溜めていた記録から数えたものだ。正式な業務記録ではないので、他部署に見せられる精度ではない。それでも半年間つけ続けてみて、感覚だけで「早くなった気がする」と言うより、数字で示した方が自分自身も納得できると分かった。

半年間の集計(レビューと再質問) ※筆者の運用記録(対象:是正処置レビューの手帳記録・期間:合格後半年間)
半年間の集計(レビューと再質問) ※筆者の運用記録(対象:是正処置レビューの手帳記録・期間:合格後半年間)

資格を取っても、指摘そのものの件数が減るわけではない。減ったのは、指摘を理解してもらうまでの往復の回数だった。この差は、半年前の自分には想像できていなかった変化だ。

数字だけを見れば、地味な変化だと思う。それでも、月に5回分ほどのやり取りが浮いた計算になる。その時間を、別の指摘の掘り下げに回せるようになった。

浮いた時間で何をしているかと聞かれれば、まだ答えは定まっていない。今のところは、後回しにしていた古い手順書の見直しに少しずつ充てている程度だ。

手順書は全部で23本ある。半年かけて見直せたのはまだ4本だけで、先は長い。

今、資格をどう位置づけているか

部下10人を見る立場になって、資格を取ることの意味は「知識が増えること」だけではないと感じるようになった。むしろ、これまで感覚で伝えていたことを、誰かに説明できる言葉に変える練習だったのだと思う。今も資格の内容をすべて使いこなせているとは言えないし、勉強した範囲より現場で起きることの方がずっと複雑だ。それでも、半年前より確実に、指摘の理由を人に渡せる形にできるようになったとは感じている。

半年間で得たものより、まだ使えていない知識の方が多い気がしている。特性要因図はよく使うようになったが、勉強したはずの検定・推定の考え方は、実務でどう当てはめればいいのかいまだにつかみきれていない。次の半年は、そこを1つずつ試していくつもりでいる。

半年間で得たものとまだ使えていない知識 ※概念図(実測データではありません)
半年間で得たものとまだ使えていない知識 ※概念図(実測データではありません)

QC検定の勉強を始めた経緯は以前書いたとおりだが、受かったあとの半年間は、勉強していたときとはまったく別の壁があった。同じように資格取得を考えている人に伝えたいことがあるとすれば、合格した日がゴールではなく、そこから語り方を作る期間が始まるということだ。机の引き出しのはがきを見るたび、今もそのことを思い出す。

資格や力量をどう見える化して現場に活かすかについては、ものづくりポータルの認定検査員・資格の管理のページにも運用の考え方がまとまっている。

参考書籍(PR)

1分で話せ(伊藤羊一)。結論と根拠と事実をピラミッドで組み立てるという考え方が、資格の中身を人に説明できる言葉に変えていく過程の支えになった。

【PR】

次に読む

QC検定の勉強を、現場の実務からやり直した話――今回の話の前段にあたる記録。テキストではなく職場の作業から目次をたどる、この勉強のやり方はこちらに書いている。

QCサークルの発表資料づくりが目的になっていたのを、やめてみた話――資格や活動の中身より伝え方が問われる場面という意味で、今回の話と重なる。

この記事は筆者個人の経験に基づく記録であり、資格取得後の変化のあらわれ方は職場や役割によって異なる。資格の活用や人材育成の方針は、自社の教育体系や評価制度に沿って、責任者の判断のもとで検討してほしい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

製造メーカーに10年以上。検査員から始めて生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは管理職。若手のころの失敗も含めて、現場で見たこと、試したことを書いています。座右の銘は「ピンチはチャンス」

目次