品質カレンダーを1か月使ってみて、結局何が変わったか

先月の頭、月次の品質会議の資料をまとめていたら、今期の内部監査がまだ1件も予定に入っていないことに気づいた。慌てて手帳をめくったが、去年のメモは3月で止まっていて、いつ何をやったのかがどこにも残っていなかった。前任者はもう別の部署にいて、気軽には聞けない。周りを見渡すと、測定器の校正期限もサプライヤー監査の予定も、誰の頭の中にも正確には入っていない様子だった。とりあえず品証の壁に大きな月めくりカレンダーを貼って、思いつく予定を全部書き込むところから始めることにした。

見切り発車で始めた理由

ちゃんとした運用ルールを決めてから始めよう、とも思った。しかしそれを考えている間にも締切は近づいてくる。結局、A2判のカレンダーを品証の島の壁に貼り、赤・青・緑の丸シールを100円ショップで買ってきただけで初日を迎えた。メンバーは自分を含めて3人。「とりあえず思いつくものを書こう」とだけ決めて、初日は30分で洗い出しを終えた。準備に時間をかけなかった分、書きながら抜けに気づいた予定もいくつかあった。

個人の手帳から壁のカレンダーへ切り替えた前後を示した図
個人の手帳(Before)から壁のカレンダー(After)へ切り替えた前後 ※筆者の運用記録(対象:品質保証3人・期間:試行1か月)

カレンダーに載せた5つの予定

最初に書き込んだのは、内部監査(月1回・部門を分けて年4巡)、測定器12台の校正期限、是正処置の回答期限、品質会議の議題確認日、そしてサプライヤー監査2社分の5種類だった。赤丸は法定・契約で動かせない期限、青丸は社内目標、緑丸は「確認だけすればいい日」という色分けにした。書き終えて壁を見たとき、1か月の間に赤丸が7個も並んでいることに、そこで初めて気がついた。今までこの密度に気づかずに過ごしていたことの方が、正直こわくなった。

壁カレンダーに書き込んだ5つの予定と赤青緑の色分けルールを示した図
壁カレンダーに載せた5つの予定と3色のルール ※筆者の運用記録(対象:品質保証3人の予定管理・期間:試行1か月)

1週目で早くも狂った

初日に決めた運用は、1週間も持たなかった。測定器の校正期限を書き込んだ翌々日、別の担当者が同じカレンダーに私用の有給予定を書き足していた。赤丸のシールが半分隠れてしまい、危うく見落とすところだった。さらに、月初にまとめて書いた「サプライヤー監査2社分」のうち1社は、実際には先方都合で日程がまだ未確定だったことも後から分かった。確認しないまま書いた予定は、当てにならない。書いた瞬間は安心するが、その安心は根拠のない安心だった。

見落としていたのは日程より確認者

2週目に入って気づいたのは、予定そのものより「誰が見るか」が抜けていたという点だった。カレンダーは壁に貼ってあるだけで、朝礼で読み上げる担当を決めていなかった。赤丸の存在に気づくかどうかは、結局は各自の記憶頼みになっていた。試しに、毎週月曜の朝に3人で1分だけカレンダーの前に立つ時間を作ってみた。それだけで「あ、今週これ動かさないと」という声が自然に出るようになった。1分という短さが、逆に続けやすかったのだと思う。長い会議形式にしていたら、たぶん2週間も持たなかった。

もう一つの見落とし、サプライヤー監査

2週目の後半には、もっと肝を冷やす出来事もあった。未確定のままだったサプライヤー監査の1社について、先方から急に「来週訪問可能です」と連絡が来たのだ。こちらの受け入れ体制は何も整っていなかった。監査チェックリストの最新版がどこにあるか分からず、担当の一人が探すだけで半日を使うことになった。結局、訪問日を1週間だけ後ろにずらしてもらい、その間にチェックリストの保管場所を全員で確認し直した。カレンダーに日付を書いただけでは、受け入れ準備までは進まないと痛感した出来事だった。

4週間で起きたつまずきと、その場で行った手当てを週ごとに並べた図
4週間で起きたつまずきと、その場での手当て ※筆者の運用記録(対象:品質保証3人・期間:試行1か月/第1〜4週)

1か月で変わった3つのこと

1か月やってみて、数字で言える変化が3つあった。1つ目は、測定器12台の校正切れがゼロになったこと。以前は年に2〜3回、期限を数日過ぎてから気づくことがあった。2つ目は、是正処置の回答遅れが月あたり5件から1件に減ったこと。全部が解消したわけではないが、赤丸の存在が「あと何日」という感覚を持たせてくれた。3つ目は、「今月って何やるんでしたっけ」という質問が、自分に対しても他人に対してもほぼ出なくなったことだ。地味な変化ではあるが、月初に慌てて予定を思い出す時間がなくなっただけでも、気持ちの余裕はだいぶ違った。

校正切れ・是正処置の回答遅れ・質問回数が1か月でどう変わったかを示した図
1か月で変わった3つの数字 ※筆者の運用記録(対象:品質保証3人・期間:運用1か月と前年の実績)

続けるためにやめたこと

一方で、やめたこともある。最初は品質会議の議題まで細かく書き込んでいたが、これは途中でやめた。会議の中身を考える作業とカレンダーで期限を管理する作業は、そもそも役割が違う。無理に一枚にまとめようとすると、カレンダーが文字だらけになり、遠くから見たときに赤丸が目立たなくなってしまう。だから今は、カレンダーには「日付と色」だけを書き、詳細は別のノートに分けている。この判断が正しいのかは、正直まだ分からない。

色を増やしたい、という声との折り合い

3週目には、メンバーの一人から「校正期限の中でも、法定のものと社内基準のものを色で分けたい」という提案があった。気持ちは分かるが、色を増やすとルールが複雑になり、結局誰も覚えなくなる可能性がある。話し合った結果、色は増やさず、その代わりシールの横に小さく「法」「社」と一文字だけ書き添えることにした。妥協案ではあるが、これなら1分確認の時間内でも十分読み取れる。全員が納得したわけではないが、今のところ運用は崩れていない。

祝日の月曜、1分確認が止まった

3週目の月曜が祝日で、いつもの1分確認ができない週があった。次の火曜に慌てて確認したところ、実は問題は起きていなかったが、担当の一人が「昨日確認できていない」と落ち着かない様子だったのが印象に残っている。1分という短い時間でも、抜けると全員がそわそわする。ルールとして根付き始めている証拠だと前向きに捉えることにしたが、祝日で曜日がずれる月の運用は、まだ決めきれていない。翌週の同じ曜日で代替するのか、祝日の前日に前倒しするのか、この点は次のミーティングで決めるつもりだ。

新しく来た人にどう説明するか

4週目、他部署から異動してきたメンバーが1人加わった。壁のカレンダーを見せて「これが今の予定管理です」と説明したところ、「なぜ紙なんですか」と聞かれた。共有システムに入れた方が検索もできて楽ではないか、という指摘はもっともだ。実際、その場で過去のシステム導入案を思い出し、当時は初期設定の手間で結局立ち消えになったことも話した。ただ、今のところは壁に貼ってあることで嫌でも目に入る、という効果を優先している。デジタル化したら便利になる部分と、目に入らなくなって形骸化する部分の両方があると思う。どちらが正解かは、正直まだ決めきれていない。

壁カレンダーを回す4ステップを示した図
壁カレンダーを回す4ステップ ※筆者の運用記録(対象:品質保証3人・期間:試行1か月)

来月からの運用ルール

1か月の試行を踏まえて、来月からは3つだけルールを決めた。毎週月曜の朝1分確認は続ける。色分けは赤・青・緑の3色から増やさない。そして月末に、翌々月分の予定を必ず書き足す。3つ目を決めたのは、書き込みが「今月分だけ」になっていると、気づいたときには来月の予定が真っ白、という状態に戻りかねないと分かったからだ。壁のカレンダーは、埋まっていることよりも、埋め続けられる仕組みかどうかの方が大事だった。

かけた手間は思ったより小さい

始める前は、専用のシステムを入れるべきか、それとも表計算で管理台帳を作り直すべきか、あれこれ迷っていた。結局、A2判のカレンダー1枚とシール2袋分、合わせて千円もかかっていない。かけた時間も、初日の洗い出しに30分。毎週月曜の1分確認を4回、月末の翌々月分書き足しに10分程度で、1か月の合計は1時間もかかっていない。大がかりな仕組みを作ろうとして着手が遅れるより、まず小さく始める方が良かった。回しながら直していくやり方は、少なくとも自分たちの職場には合っていたようだ。

手帳一冊より壁一枚だった

去年のメモが3月で止まっていた理由は、たぶん手帳が自分専用で、他の2人からは見えていなかったからだと思う。壁に貼った今のカレンダーは、良くも悪くも人目にさらされているぶん、書いたことを放置しづらい。派手な仕組みではないが、内部監査の年間計画をどう回すかという点では、ものづくりハンドブックの「内部監査の年間運営」にある考え方と重なる部分が多かった。監査員の力量維持や指摘のランク付けまでは、まだ手が回っていない。そちらは今後の課題にしたい。まずは1年間、赤丸を1つも見落とさずに壁を埋め続けられるかどうかを見てみようと思う。

※この記事は自社での運用を一人称でまとめたものであり、業種・組織規模によって適切な運用は異なる。校正期限や監査サイクルなど法規・契約に関わる期限は、必ず自社の管理台帳・契約内容で確認してほしい。

内部監査の年間運営の考え方は、ものづくりハンドブックの「D12 内部監査の年間運営」にまとめている。

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この記事を書いた人

製造メーカーに10年以上。検査員から始めて生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは管理職。若手のころの失敗も含めて、現場で見たこと、試したことを書いています。座右の銘は「ピンチはチャンス」

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