形骸化していた品質会議を立て直そうとしてみた話

先々月の品質会議で、進行役だった自分が数値表を読み上げている間、向かいに座る後輩が机の下でスマホをいじっているのに気づいた。注意する気にはなれなかった。私だって、他の人が読み上げている番になれば、次に自分が話す資料を見返している。40分の会議のうち、実質的に何かを決めた時間がどれだけあったか、終わってから議事録を見返しながら数えてみたら、たぶん5分もなかった。これはさすがにまずいと思った。

読み上げるだけの会議だった

うちの品質会議は月1回、参加者は7人。議題は毎回8〜9個並んでいて、不良率の推移、監査の進捗、是正処置の一覧、教育計画の確認など、担当ごとに数値と近況を順番に読み上げる形式が長く続いていた。誰かが提案したわけではなく、いつの間にかそうなっていた、というのが実態に近い。前任の進行役から引き継いだ議事録テンプレートをそのまま使い続けていたので、疑うきっかけ自体がなかった。資料は毎回きれいに作られていたが、会議が終わった後に「で、何を決めたんだっけ」と誰かが聞き返す場面が、月によっては複数回あった。

議題の数と会議時間の変化 ※筆者の運用記録(対象:月次の品質会議・期間:3か月)
議題の数と会議時間の変化 ※筆者の運用記録(対象:月次の品質会議・期間:3か月)

まず議題を3つに絞った

手を付けたのは、議題の数を減らすことだった。8〜9個あった議題を、その場で決めるべきもの3つに絞り、残りは事前に資料を回覧して読んでおいてもらう形に変えた。絞り込みの基準は単純で、「今日この場で決めないと止まる案件かどうか」の1点だけにした。数値の羅列だけで結論が変わらないものは、会議から外して良いはずだった。最初は「報告の場がなくなると困る」という声もあったが、資料回覧という代替を用意したことで、ひとまず納得してもらえた。

決めずに終わる議題をやめた

もう一つ変えたのは、議題を出す側に「今日、何を決めたいか」を事前に一行書いてもらうルールだ。これを入れてから、そもそも決める必要のない議題が資料から自然に減っていった。以前は「不良率の推移について」としか書かれていなかった議題が、「先月急増した外観不良の対策を承認するかどうか」という形に変わる。議題の書き方を変えるだけで、会議中の空気がかなり違って見えた。数値をただ眺める時間ではなく、判断を迫られる時間になったからだと思う。

議題の書き方を変更前後で比べた図 ※筆者の運用記録(対象:品質会議の議題欄・期間:3か月)
議題の書き方を変更前後で比べた図 ※筆者の運用記録(対象:品質会議の議題欄・期間:3か月)

宿題が生まれた最初の週

議題を絞った初回の会議では、3つのうち2つがその場で結論に至らず、次回までの宿題として持ち帰りになった。担当者と期限をその場でホワイトボードに書き出し、写真に撮って議事録に貼り付けた。次の会議の冒頭で、まずこの宿題2件の進捗から確認する、というルールも決めた。実際にやってみると、冒頭で進捗を聞かれると分かっているだけで、期限までに動く人が増えた。宿題を放置しづらい空気ができたのが、思っていたより早い変化だった。

反発もあった

もちろん、全員がすぐに賛成したわけではない。ベテランの一人からは「これまで報告していた数値を会議で見なくなると、異常の兆候を見逃すのではないか」という懸念が出た。もっともな指摘だったので、資料回覧の締切を会議の2日前に固定し、気になる数値があれば会議前にコメントを入れてもらう運用に変えた。この運用のおかげで、実際に会議前のコメントから議題が1件追加され、事前に対応の方向性まで決まった回もあった。

反発は、仕組みを直す材料になった。

資料を誰も読んでいなかった回

2回目の会議では、想定していなかった落とし穴に当たった。資料回覧を締切2日前にしたのに、実際にコメントを入れてきたのは7人中2人だけ。会議当日、回覧した資料の内容を前提に議題を進めようとしたところ、「その資料、見てないです」という声が複数上がり、結局その場で内容を読み直す時間が必要になった。回覧したという事実だけでは、読んでもらったことにはならない。この経験から、締切前日にリマインドを1通送るという、ごく地味な手を追加することにした。

7人中2人という数字は、正直かなりへこんだ。

他部署が見学に来た回

3か月目には、別ラインの主任が「うちの会議も見直したい」と言って、1回だけ見学に来たことがあった。終わった後の感想は「思ったより静かですね」だった。以前のように数値をひとしきり読み上げる時間がないぶん、外から見ると淡々と進んでいるように見えたのだと思う。ただ、静かに見えるのは議論が少ないからではなく、事前に読む部分と、その場で決める部分をはっきり分けたからだった。会議室の雰囲気だけを見て判断すると、この違いには気づけない。見た目の賑やかさと、決まる量は必ずしも比例しない、と気づかされた場面だった。

会議を回す4ステップ ※筆者の運用記録(対象:月次の品質会議で回した手順・期間:3か月)
会議を回す4ステップ ※筆者の運用記録(対象:月次の品質会議で回した手順・期間:3か月)

数字で見える変化

3か月続けてみて、変化は数字にも表れた。会議時間は40分から28分に短縮した。宿題化した議題の完了率は、以前は次回会議でも「まだ検討中です」という回答が続くことが多かったが、直近3回は8件中7件が期限内に完了している。会議アンケート(5段階)の「時間の使い方は妥当か」という項目の平均は、3.1から4.0まで上がった。数字だけを見れば良い方向だが、これで完成したとは思っていない。

3か月で変わった数字(会議時間・アンケート平均・宿題の完了・準備時間) ※筆者の運用記録(対象:月1回の品質会議・参加7人・期間:3か月)
3か月で変わった数字(会議時間・アンケート平均・宿題の完了・準備時間) ※筆者の運用記録(対象:月1回の品質会議・参加7人・期間:3か月)

それでも戻りかけた瞬間

2か月目の終わり、繁忙期と重なって議題を絞る作業を省略し、久しぶりに9個の議題をそのまま並べてしまった回があった。会議は案の定45分に延びて、結論が出ないまま持ち越しになった議題も出た。

楽な方に流れるのは一瞬だった。

翌月、改めて「今日、何を決めたいか」の一行を全員に書いてもらうところからやり直した。仕組みは一度作って終わりではなく、放っておくとすぐに元の形に戻ろうとする、ということを実感した回だった。

進行役がやることを固定した

戻りかけた原因を振り返ると、進行役である私が「今回は忙しいから議題整理は省こう」と自分で判断してしまったことが大きかった。忙しいときほど手を抜きたくなる部分ほど、実は一番効いている、ということだったのだと思う。そこで、議題整理と一行要約の確認は、進行役の仕事として固定のチェック項目にした。会議の準備時間そのものは15分ほど増えたが、会議本体の時間はそれ以上に短くなっているので、トータルでは負担が減っている。進行役が変わっても同じ手順を踏めるよう、チェック項目は共有フォルダに置いてある。

3か月の経過。2か月目末に一度もとの形へ戻りかけた ※筆者の運用記録(対象:月1回の品質会議・期間:3か月)
3か月の経過。2か月目末に一度もとの形へ戻りかけた ※筆者の運用記録(対象:月1回の品質会議・期間:3か月)

アンケートの自由記述に出た本音

会議アンケートには自由記述欄も用意している。3か月目に印象に残ったコメントは「決める会議になったのはいいが、決めた後の実行フォローが甘い回がある」というものだった。宿題の進捗確認は冒頭で行っているが、確認して終わりで、実行が滞っている場合の具体的な手助けまではできていなかった、という指摘だ。耳の痛い話だが、事実なので次の改善項目として控えている。良い評価だけを見て満足してしまうと、こういう小さな不満は拾えないままになる。

まだ直っていないところ

正直に書くと、まだ直っていない部分もある。議題の一行要約を書く担当者によって、要約の質にばらつきがあり、慣れている人とそうでない人の差が出やすい。「決めたいこと」のつもりで書かれていても、実際には報告に近い文面のままの回もあり、その場で書き直しをお願いすることがまだ何度かあった。書き方の見本を何パターンか用意して配ってはいるが、定着するまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

読み上げをやめてから気づいたこと

会議を変えてみて分かったのは、数値の読み上げ自体が悪いわけではなく、読み上げて終わりにしていたことが問題だったという点だ。資料回覧に切り替えたことで、むしろ数値を事前にじっくり見る時間が増えた参加者もいた。「会議中は聞き流していたが、自分の席で読むと引っかかる数字が見つかった」と話してくれた参加者もいた。読み上げ形式のままでは、たぶん出てこなかった感想だと思う。品質会議の立て直し方については、ものづくりハンドブックの「品質会議が報告会になっているときの立て直し」にも近い考え方がまとまっている。議題を絞ること、宿題を最後まで追うことの2点は、うちの現場でも効果が大きかった部分と重なっている。今のやり方が最終形だとは思っていない。半年後にまた会議アンケートを取り、必要ならもう一度組み立て直すつもりでいる。

品質会議の立て直し方は、ものづくりハンドブックの「A19 品質会議が報告会になっているときの立て直し」にまとめている。議題を絞る勇気が出ない人には、まず一行要約の欄を1つ足すところから試してほしい。

目次

次に読む

免責:本記事は自社の品質会議を一人称でまとめた体験談であり、会議の適切な進め方は組織の規模・文化によって異なる。数値や割合は実際の運用に基づくが、他組織にそのまま当てはまるとは限らない。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

製造メーカーに10年以上。検査員から始めて生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは管理職。若手のころの失敗も含めて、現場で見たこと、試したことを書いています。座右の銘は「ピンチはチャンス」

目次