PFAS 規制:仕向地別の答え方(日本・EU・フランス・デンマーク・米国、2026年10月時点)

制度の常設ページです。PFAS を含むかの調査回答は、私の担当業務のひとつです。改正の公布や運用の変更があれば書き直します(確認日:2026年10月10日)。

場面
客先から「PFAS を含みますか」と調査が届いた。仕向地が日本、EU、米国に分かれ、聞き方がそろっていない
対象
日本の化審法、EU の REACH 附属書XVII 第79項・POPs 規則・包装規則、フランスの PFAS 法、デンマークの命令、米国の TSCA とミネソタ州・カリフォルニア州の法
使うもの
各制度の原文、仕入先の申告書、分析成績書(個別 PFAS・総フッ素)、客先の調査票
要点
線の引き方は4通り。日本は物質名で含む・含まない、EU とフランスは ppb・ppm の濃度、デンマークは総フッ素 50 mg F/kg、米国の州は意図的添加。フランスとデンマーク向けも、EU 共通の規制(第79項など)に答える。答える前に仕向地と製品の区分を聞き返す

「PFAS を含みますか」への答えは、仕向地によって変わります。日本は、化審法で指定された物質を含むか含まないかで答えます。EU とフランスは濃度、デンマークは総フッ素、米国の州は意図的添加が主な線です。

EU の PFHxA の制限(REACH 附属書XVII 第79項)は、2026年10月10日から対象が広がりました。数値の線の対象は、一般消費者向けの衣類・関連付属品(繊維・皮革・毛皮)、履物、混合物と、消費者向けに限らない食品に触れる紙・板紙、化粧品です。

目次

答えの型は4通り

  • 物質名で含む・含まない(日本)。化審法は PFAS を一括りにせず、PFOS、PFOA、PFHxS、LC-PFCA(長鎖のペルフルオロカルボン酸。炭素数9〜21)と、それぞれの関連物質を指定します。関連物質は、政令が群を定め、具体的な物質は省令で列挙します。
  • 濃度(EU、フランス)。ppb や ppm の数値で線を引きます。フランスと EU の包装規則では、総フッ素が 50 mg/kg を超えると、求めに応じて PFAS 由来かの証拠を出します。
  • 総フッ素(デンマーク)。総フッ素の値そのものが線で、50 mg F/kg 以上なら禁止です。
  • 意図的添加(米国の州)。機能のために PFAS を加えたかが線です。仕入先の申告と配合・仕様の記録で返します。カリフォルニア州は、総有機フッ素の数値でも線を引きます。

濃度の線と総フッ素の線

  • フランス(デクレ D.525-4):個別 PFAS 25 ppb、PFAS の合計 250 ppb、ポリマーを含む PFAS 50 ppm。総フッ素は 50 mg F/kg を超えると、求めに応じて PFAS 由来か非 PFAS 由来かの証拠
  • EU 包装規則 第5条(5):個別 PFAS 25 ppb 以上、PFAS の合計 250 ppb 以上、ポリマーを含む PFAS 50 ppm 以上。総フッ素は 50 mg/kg を超えると、求めに応じて PFAS・非 PFAS のどちらのフッ素かの量の証拠
  • デンマーク(命令 §3):個別 PFAS・PFAS の合計・ポリマーを含む PFAS は、なし。総フッ素の値だけで判定。総フッ素は 50 mg F/kg 以上で禁止

デンマークの 50 mg F/kg は、総フッ素そのものが禁止の線で、境界は「以上」です。フランスと EU 包装の 50 ppm は、ポリマーを含む PFAS の濃度の線で、総フッ素は 50 mg/kg を「超える」と証拠を求められます。

  • ターゲット分析。個別の PFAS を物質ごとに測る分析です。25 ppb と 250 ppb はこの分析の値で、フランスの FAQ(Q15)は、測る物質を限る一覧は作らないとしています。
  • 前駆体。分解されると別の PFAS になる物質です。250 ppb の合計は、必要に応じて前駆体を先に分解して出します。分解の手順は EN 17681-1:2025 にあります(フランスの FAQ Q14)。EU の包装ガイダンスは Direct TOP(全酸化性前駆体)分析を勧めます。
  • 総フッ素。有機と無機のフッ素の合計です(フランスの FAQ Q18)。PFAS 以外に由来するフッ素も含みます。
  • 総有機フッ素。無機のフッ素を除いた、有機のフッ素の合計です。カリフォルニア州の 100 ppm・50 ppm の線がこの値で、フランスの FAQ(Q18)は、無機を除いた測定なら 50 ppm の線への適合を示せるとしています。

仕向地別の制度

日本:化審法の第一種特定化学物質

物質名で含む・含まない。PFOS とその塩、PFOA とその異性体・塩・関連物質、PFHxS とその異性体・塩・関連物質が政令で指定されています。含有率の適用除外はありません。PFHxS は、はっ水・はつ油の処理をした生地・衣服・床敷物などが輸入できない製品です。LC-PFCA は別の記事にまとめています。

適用:PFOS 2010年4月1日、PFOA とその塩 2021年10月22日(異性体 2024年9月10日、関連物質 2025年1月10日)、PFHxS 2024年2月1日、PFHxS 関連物質 2026年6月17日。LC-PFCA は「これからの日付」の節

EU:第79項(PFHxA)

濃度。PFHxA と塩の合計 25 ppb 以上、PFHxA 関連物質の合計 1,000 ppb 以上は、上市も使用もできません。均質材料ごとに測ります。2026年10月10日からの対象は、一般消費者向けの衣類・関連付属品の繊維・皮革・毛皮、履物、食品に触れる紙・板紙、一般消費者向けの混合物、化粧品です。PPE の一部、医療機器、建築用繊維は除かれます。適用日より前に上市した物は対象外です。

適用:2026年10月10日。消火泡の一部は2026年4月10日から、衣類以外の一般消費者向けの繊維などは2027年10月10日から

EU:POPs 規則と消火泡(第82項)

物質ごとの濃度。POPs 規則の附属書 I に、PFOS、PFOA、PFHxS とそれぞれの関連物質が載っています。数値は附属書 I で確かめ、LC-PFCA の数値は別の記事の表にあります。

消火泡の第82項は、PFAS の合計 1 mg/L を線にします。

適用:POPs 規則は適用中。第82項は「これからの日付」の節

EU:PFAS 全体の包括制限案

審議中。全 PFAS・全用途(消火泡を除く)が対象の提案です。ECHA の RAC は2026年3月2日に意見を採択し、SEAC は用途ごとの適用除外つきの禁止を支持する意見案を2026年3月10日にまとめました。

適用:未定。「これからの日付」の節

EU:包装規則 第5条(5)

濃度。食品に触れる包装が対象です。個別 PFAS 25 ppb 以上、PFAS の合計 250 ppb 以上、ポリマーを含む PFAS 50 ppm 以上の包装は、上市できません(総フッ素の扱いは「濃度の線と総フッ素の線」の節)。

欧州委員会のガイダンス(C/2026/3084 の第5節)は、適用日より前に上市した包装は市場に残せ、回収は要らないとしています。

適用:2026年8月12日から

フランス:PFAS 法

濃度の3本。個別 PFAS 25 ppb、PFAS の合計 250 ppb、ポリマーを含む PFAS 50 ppm の3本です(ターゲット分析はポリマーを除く。総フッ素の扱いは「濃度の線と総フッ素の線」の節)。省庁の FAQ(Q13)は、3本をすべて満たす必要がある(累積)としています。対象は、化粧品、スキーのワックス、消費者向けの衣類・靴とその防水剤です。PPE などは除かれます。

省庁の FAQ は、均質材料ごとに測ること(Q11)、原料(反物など)と業務用の衣類・靴を2026年の対象外とすること(Q26、Q6)を示しています。フランスは EU 加盟国なので、EU の規則(第79項、POPs 規則など)も直接適用されます。

適用:2026年1月1日から(12か月の猶予あり)

デンマーク:衣類・履物・防水剤

総フッ素。消費者向けの衣類・履物は、構成する部材のうち1つでも総フッ素 50 mg F/kg 以上なら、輸入も販売もできません。防水剤も 50 mg F/kg 以上で同じです。業務用、事業者間の販売、中古、リサイクル、PPE の一部、医療機器は除かれます。フッ素が PFAS 由来でなければ適用外で、当局が書類を求めることがあります。REACH と POPs の物質別の数値には、別に従います(環境保護庁の FAQ #14)。

適用:2026年7月1日から

米国:TSCA 8(a)(7)(連邦)

報告。2011年以降に PFAS を製造(輸入を含む)した者が、EPA へ報告します。PFAS を含む成形品の輸入者も現行の規則では対象で、輸入成形品などの例外は提案の段階です。

適用:未開始。「これからの日付」の節

米国:ミネソタ州(Amara’s Law)

意図的添加。PFAS を意図的に加えた製品が対象です。11分野の新品は、2025年1月1日から販売できません(カーペット・ラグ、洗浄用品、調理器具、化粧品、デンタルフロス、布の処理剤、乳幼児用品、生理用品、textile furnishings、スキーのワックス、布張りの家具。各分野の範囲は州のページ)。製造者の報告は、初回の期限(2026年9月15日)が過ぎています。延長を受けた会社は12月14日です。以後は毎年2月1日までに、製品や情報に変更があれば更新します。2023年7月1日より前に作った製品は、報告の対象外です。

適用:禁止は2025年1月1日から。初回報告の期限は2026年9月15日で、過ぎています

米国:カリフォルニア州(AB 1817)

意図的添加、または総有機フッ素。機能のために加えた PFAS、または製品や部材の総有機フッ素が 100 ppm 以上(2025年から)、50 ppm 以上(2027年から)の、新品の繊維製品が対象です。衣類、バッグ、カーテン、家具の張り地、寝具、タオルなどを含みます。製造者は適合証明書を販売側に渡します。

適用:2025年1月1日から

出典:規則 (EU) 2024/2462、規則 (EU) 2025/1988、ECHA の発表、デクレ2025-1376、デンマークの命令、経済産業省の一覧、EPA、ミネソタ州、カリフォルニア州(全文は出典の節)。上記以外の州は、州の機関の原文で確認します。

聞かれ方ごとの答え方

  • 「PFAS を含みますか」だけで、仕向地も基準も書かれていない
    • 返す前に、仕向地、製品の区分、PFAS の定義、基準が意図的添加・濃度・総フッ素のどれかを聞き返します。第82項、包装規則、フランス、デンマーク、ECHA の包括制限案は、完全にフッ素化した炭素(CF3 または CF2)を1つ以上持つ物を PFAS とする、ほぼ同じ定義です。ただし、包装規則とデンマークの定義は、CF3-X または X-CF2-X′ という構造だけを持つ物を除いています。日本の化審法は物質名で指定するため、この定義を使いません。
    • 根拠:客先の調査票の版と、PFAS の定義の欄
  • 日本向け:化審法の特定化学物質(PFOS、PFOA、PFHxS、LC-PFCA など)を含むか
    物質ごとに「含む」「含まない」で返します。含有率の適用除外はなく、微量でも対象です。ただし不純物として含まれる場合は、経済産業省・環境省の不純物の通知による別の扱いがあります。製品の輸入禁止は、政令第7条で指定した製品に限られます。
    根拠:成分表(物質名と CAS 番号)。はっ水・はつ油剤、界面活性剤、消火薬剤の使用の有無
  • EU 向け:第79項の PFHxA 25 ppb、関連物質 1,000 ppb を満たすか
    均質材料ごとの分析成績書を添えます。2026年10月10日より前に上市した物は対象外なので、上市日を示せる出荷の記録も残します。
    根拠:試験機関、方法、定量下限、分析した部位
  • フランス向け:25 ppb、250 ppb、50 ppm の3本で聞かれた
    省庁の FAQ(Q13)は、3本は累積で、1本だけでは適合と言えないとしています。省庁の FAQ(Q13)は、1本で不適合が出たら残りの試験を省くことを推奨しています。仕入先の不含有の書類を証拠にでき、工程管理にもとづくリスク分析は最低1回の分析で裏づけます(どちらも FAQ Q13)。
    根拠:部材ごとの成績書、仕入先の不含有の書類、工程で使った薬剤の記録
  • デンマーク向け:総フッ素 50 mg F/kg 未満か
    衣類・履物を部材ごとに測った総フッ素の値を返します。50 mg F/kg 以上でも、フッ素が PFAS 由来でなければ適用外です。環境保護庁に求められたときに出せる資料(命令 §3 第4項)を用意します。
    根拠:部材ごとの総フッ素の値。当局に求められたときに出せる資料
  • 米国向け:PFAS を意図的に使っているか、州への報告
    仕入先の申告と、配合・仕様の記録で返します。カリフォルニア州の繊維製品は総有機フッ素の線もあるため、成績書も用意します。
    根拠:仕入先に、機能のために加えた PFAS(処理剤、コーティング、添加剤)の有無

窓口での答え方

同じ製品でも、日本の「含む」「含まない」とフランスの数値は、別の根拠で返します。窓口の手順は次のとおりです。

  1. 仕向地、製品の区分、基準(意図的添加・濃度・総フッ素)を聞き返す。
  2. 仕入先の申告書、成分表、配合・仕様の記録を集める。
  3. 書類で足りない所は、分析に出して成績書で補う。
  4. 回答と、根拠にした書類の日付を、仕向地ごとの列に記録する。

数値の線は低く、個別 PFAS の 25 ppb は 0.025 mg/kg です。成績書の定量下限がこれより大きければ、基準を満たすとは言えません。繊維・化粧品・スキーのワックスには統一された試験法がなく、フランスの FAQ(Q17)は、その時点の技術水準で認められた方法を使うとしています。包装も、EU の統一された試験法はありません。繊維用には AFNOR が作った NF EN 17681-1・-2 があり、FAQ(Q20)は使うかを任意とし、方法を指定していません。

上の4通りのうち、私は PFAS の調査に、意図的に加えていないかどうかと、濃度(ppb・ppm)の2つの形で答えています。

調査の依頼と回答を追う台帳は、ものづくりポータルの含有化学物質の回答管理表(Excel)に置いています。客先が求めた規制と閾値を、依頼ごとに「求められた中身」の欄へ書けます。

これからの日付

  • 2026年10月23日:EU:携帯消火器の PFAS 入り消火薬剤の上市猶予が終わる(アルコール耐性型は2027年4月23日)。消火泡の表示と管理計画の義務も始まる(規則 (EU) 2025/1988 の第82項)
  • 2026年11月22日:日本:LC-PFCA が第一種特定化学物質になる(経産省の閣議決定の発表(2026年5月19日))
  • 2026年12月14日:ミネソタ州:延長を受けた会社の初回報告の期限(ミネソタ州汚染管理庁)
  • 2026年12月31日:フランス:2026年1月1日より前に作った物の、12か月の猶予が終わる。猶予の後も、既に上市した物は転売できる(REACH・POPs の上限内の物。省庁の FAQ の解釈)(デクレ2025-1376 第2条、省庁 FAQ の8問・28問(化粧品は27問))
  • 2026年末(予定):EU:SEAC が包括制限案の最終意見を採択する。そのあと欧州委員会が制限案を作り、REACH 委員会で採決する(ECHA)
  • 2027年1月1日:デンマーク:在庫からの販売の期限。カリフォルニア州:総有機フッ素の線が 50 ppm に下がる(命令464号 第6条、AB 1817)
  • 2027年1月31日:米国:TSCA 8(a)(7) の報告期間が、遅くともこの日に始まる。実質改正の最終規則が先に出れば、その発効から60日後(連邦官報 2026年4月13日)
  • 2027年10月10日:EU:第79項が衣類以外の一般消費者向けの繊維などにも掛かる(衣類以外の一般消費者向けの繊維・皮革・毛皮)(規則 (EU) 2024/2462 の附属書)
  • 2028年1月1日:カリフォルニア州:厳しい濡れ条件向けの屋外衣類にも禁止が及ぶ(AB 1817)
  • 2029年10月10日:EU:第79項が民間航空の消火泡に及ぶ(規則 (EU) 2024/2462 の附属書)
  • 2030年1月1日:フランス:禁止が全繊維製品に広がる(例外あり)(法律2025-188 の L.524-1 II)
  • 2030年10月23日:EU:消火泡の PFAS 合計 1 mg/L の線が、一般の用途に及ぶ(用途ごとに猶予あり)(規則 (EU) 2025/1988 の第82項)
  • 2032年1月1日:ミネソタ州:やむを得ない用途を除く全製品が禁止になる(ミネソタ州汚染管理庁)

改正を見張る

月に1回、EU は ECHA の PFAS のページと EUR-Lex の附属書XVII、日本は経産省・環境省の化審法のページ、米国は EPA の TSCA 8(a)(7) のページと州の機関のページを見ます。変わったときは、数値と日付を原文で照合し、表と冒頭の確認日を書き直します。

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化審法に加わる LC-PFCA と、EU の POPs 規則の数値を、物質ごとの表で並べた記事です。

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調査が chemSHERPA で届いたときの、依頼が来てから返すまでの手順です。

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chemSHERPA の回答手順:依頼が来てから返すまで(2026年9月時点) 客先から chemSHERPA で回答を求められたときの手順を、依頼の確認から .shai/.shci のファイルで返すまでの6つに分けました。返す前に見る5つの所と、2026年9月時点のツールと物質リストの版(V2R1.03.0・Ver.2.13.00)も載せています。

出典

免責:このページは、各国の法令の原文、ECHA、欧州委員会、各国政府・州機関の公開資料をもとに2026年10月10日時点でまとめたもので、条文と資料の日本語は筆者の訳です。フランスの省庁 FAQ は行政の解釈で、条文が優先します。法的な助言ではありません。最終判断は、各社の法務と客先との取り決めで行ってください。

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この記事を書いた人

素材メーカーに勤めて10年以上。検査員から始めて、生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは品質保証の責任者です。クレーム対応と是正処置、ISO・客先・仕入先の監査、製品含有化学物質の調査回答(chemSHERPA・REACH など)、部下の教育まで担当しています。QC検定2級、ISO 9001 内部監査員。座右の銘は「ピンチはチャンス」。

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