REACH SVHC の回答手順:候補リストが更新されてから返すまで(2026年9月時点)

制度の常設ページです。SVHC の調査回答は、私の担当業務のひとつです。候補リストの更新があれば書き直します(確認日:2026年9月29日)。

場面
ECHA が候補リストを更新したあと、客先から「SVHC を 0.1% を超えて含むかどうか」の調査が届いた。EU 向けに出る品番ごとに返す
対象
EU の REACH 規則((EC) No 1907/2006)の高懸念物質(SVHC)の候補リスト(Candidate List)。2026年9月29日時点で253件、最新の収載日は2026年2月4日
使うもの
ECHA の候補リストの表、自社の含有化学物質のデータ、仕入先の回答(chemSHERPA の AI・CI など)、客先の様式・宣誓書
要点
0.1% は製品全体でなく、部品(成形品)1つずつの重さで見る。仕入先に最新の候補リストで答え直してもらい、使ったリストの件数と収載日を添えて返す

客先から SVHC の調査が来たら、ECHA の候補リストで件数と最新の収載日を確かめます。2026年9月29日時点の候補リストは253件で、最新の収載日は2026年2月4日です。対象の品番を部品(成形品)ごとに分け、仕入先には最新のリストで答え直してもらいます。判定の単位は成形品1つずつで、0.1% を超えて含むかどうかを客先の様式・宣誓書か chemSHERPA で返します。

私の担当では、ECHA が候補リストを更新するたびに、客先から調査が届きます。返し方は、客先の様式・宣誓書に 0.1% 超の有無を書く形と、chemSHERPA のデータで返す形の2通りです。どちらも、材料や部品の中身は仕入先へ照会し直してから判定します。含有化学物質は、専用のシステムで管理しています。

目次

SVHCと3つのリストの違い

SVHC(高懸念物質)は、発がん性・変異原性・生殖毒性(区分1A・1B)、PBT、vPvB、またはそれらと同等の懸念がある物質です(REACH 第57条)。第59条の手続きで特定された物質の一覧が、候補リストです。候補リストは認可対象(附属書XIV)の候補で、そこから附属書XIVへ移る物質もあります。附属書XVIIの制限は第67条による別の仕組みで、項目ごとに条件が決まっています。

リスト 載るとどうなるか 条文
候補リスト 収載日から、成形品の情報伝達、ECHA への届出、SDS の義務がかかる。使うこと自体は禁止されない 第59条、第7条(2)、第31条、第33条
認可対象リスト(附属書XIV) 附属書に書かれた期日を過ぎると、認可を受けた用途などの例外を除き、上市も使用もできない 第56条(1)、第58条
制限(附属書XVII) 物質・混合物・成形品が制限の条件に合わなければ、製造も上市も使用もできない 第67条(1)

SVHC の調査で問われる「0.1%」は、候補リストの物質についての第33条の閾値です。附属書XVIIの制限は項目ごとに条件が違うので、同じ様式で聞かれても分けて答えます。

候補リストの件数と更新の時期

候補リストは ECHA のサイトに載っているものだけが正本で、収載日から義務が生じます。2026年9月29日時点で253件です。1つの項目が物質群をまとめていることもあるため、対象になる物質の数はこれより多くなります。

年 収載日(追加した件数)
2024年 1月23日(5件)、6月27日(1件)、11月7日(1件)
2025年 1月21日(5件)、6月25日(3件)、11月5日(1件)
2026年 2月4日(2件:n-ヘキサン、ビスフェノールAF とその塩)。9月29日時点で、これより後の収載はない

出典:ECHA「Candidate List of substances of very high concern for Authorisation」の収載日の列(2026年9月29日確認)

更新は1月と6月が中心で、11月に1件だけ加わる年もあります。次に載る候補は、提案が出る前から ECHA の意図の登録簿(Registry of SVHC intentions)に出ます。2026年9月28日更新の登録簿で、提案予定(Intention)の段階にあるのは 4,4′-メチレンジフェノール(CAS 620-92-8、提出予定2027年2月8日)の1件です。提案が出ると45日間の意見募集があり、異論がなければそのまま、異論があれば加盟国委員会の合意を経て候補リストに載ります。

成形品の義務と0.1%の単位

成形品は、製造中に与えられた特別な形・表面・デザインが、化学組成よりも機能を決めている物体です(第3条(3))。候補リストの物質を含む成形品には、次の4つの義務がかかります。

義務 誰が 条件 いつまでに 根拠
受け手への情報提供(少なくとも物質名) EU の成形品の供給者 候補リストの物質が成形品に 0.1% w/w 超。トン数の下限なし 収載後に初めて供給するとき REACH 第33条(1)、ECHA のガイダンス 3.2.1
消費者の求めへの回答 同上 同上 求めを受けてから45日以内・無償 第33条(2)
ECHA への届出 EU の成形品の生産者・輸入者 成形品中に年1トン超、かつ 0.1% w/w 超。ばく露を除外できるとき、その用途で登録済みのときは不要 収載から6か月以内 第7条(2)(3)(6)(7)
SCIP データベースへの通知 EU の成形品の供給者(消費者だけに売る小売は除く) 0.1% w/w 超 2021年1月5日から 廃棄物枠組指令 2008/98/EC 第9条(1)(i)

表の義務を負うのは、EU 域内の生産者・輸入者・流通業者です(第3条の定義)。日本から輸出する会社に直接の義務はありません。第33条の義務は、供給者が含有を知っているかどうかに関係なく生じます(ECHA のガイダンス 3.2.1)。EU の輸入者は成形品ごとの含有が分からないと義務を果たせないため、調査が上流へ回ってきます。

0.1% の分母は、成形品1つの重さです。EU 司法裁判所は2015年9月10日の判決(C-106/14)で、複数の成形品からなる製品の輸入者は、成形品ごとに 0.1% を超えるかを判断すると示しました。組み立てられた部品も、廃棄物になるか、機能を決める形・表面・デザインを失うまでは成形品のままです(同判決第53段落)。ECHA のガイダンス(第4.0版)も同じ扱いです。

例として、重さ10 g の製品のうち 2 g の樹脂部品に、候補リストの物質が 0.004 g 入っているとします。製品全体で割ると 0.04% でも、樹脂部品で割れば 0.2% で、0.1% を超えます。

調査が来てから返すまで

  1. 更新と依頼の中身を確かめる。ECHA の表で件数と最新の収載日を見て、追加された物質の名前と CAS 番号を控えます。客先の依頼が何件時点のリストを指しているか、回答の期限、様式(客先の様式・宣誓書か chemSHERPA)、対象の品番も確かめます。
  2. 対象の品番を洗い出す。控えた名前と CAS 番号で、含有化学物質のデータを引きます。EU 向けの品番は、部品(成形品)ごとの構成まで分けます。EC 番号と CAS 番号の欄が「-」の項目は、1つの番号で表せない物質や物質群です。該当する番号の一覧は表の「Details」にあり、2026年2月4日に加わったビスフェノールAF とその塩もこの形です。一覧は網羅ではないと ECHA の注記にあるので、番号の照合に加えて物質名の定義にも当たるかを見ます。
  3. 仕入先へ照会し直す。材料や部品の仕入先に、追加された物質を含むかを聞き直します。依頼には、基にする候補リストの件数と最新の収載日を書いて出します。chemSHERPA なら、新しい SVHC を入れた物質リストの版で作り直してもらう形です。
  4. 自社のデータで判定する。成形品1つずつ、物質の重さをその成形品の重さで割り、0.1% を超えるかを見ます。仕入先の回答が材料中の含有率なら、その材料が成形品のどれだけを占めるかで換算します。塗料や接着剤のように後から付いた物質の計算は、ECHA のガイダンスの表5が手本です。
  5. 客先の様式で返す。宣誓書なら、品番ごとに「0.1% を超えて含む/含まない」を書き、根拠にした候補リストの件数と収載日を添えます。超える物質があれば、物質名と、含む部品、含有率の範囲も書きます。物質名は第33条で渡す情報の最低限で、含む部品(位置)と濃度の範囲は SCIP への通知で求められる項目です。chemSHERPA-AI で返すときの手順はchemSHERPA の回答手順にまとめています。
  6. 記録を残す。返した回答、根拠にした仕入先の回答、使った候補リストの件数と収載日、回答日を品番ごとに残します。品番の構成が変わっていなければ、次の更新では増えた物質だけを確かめれば足ります。

返す前に見る5つの所

  • リストの時点。回答に、使った候補リストの件数と最新の収載日が書いてあること。客先の依頼文の件数と合っていること。
  • 0.1% の分母。組み立てた製品でも、部品(成形品)1つずつの重さで割っていること。
  • 番号が「-」の項目。「Details」の一覧と物質名の定義まで照合していること。
  • 仕入先の回答の日付。最新の収載日より後の回答であること。前の更新のときの回答を使い回していないこと。
  • 超えたときに添える情報。物質名、含む部品、含有率の範囲がそろっていること。物質名だけを渡すなら、それで安全に使えると判断した理由を記録に残してあること(ECHA のガイダンスが記録を勧めている)。

化学品(混合物)で納めるとき

物質や混合物で納めるときの中心は、第33条でなく SDS の規定(第31条)です。候補リストの物質そのものを供給するなら、SDS を渡します(第31条(1)(c))。既にある SDS は、第15項(適用法令)に SVHC に特定されたことを反映して直します(第31条(9)(a))。直した版は、過去12か月に供給した相手全員へ無償で届けます。

危険有害性に分類される混合物には、もともと SDS が要ります(第31条(1)(a))。分類されない混合物でも、非ガス状で、PBT・vPvB・第57条(f)の理由で候補リストに載った物質を 0.1% w/w 以上含むなら、求めに応じて SDS を出します(第31条(3)(b))。いずれも EU・EEA の供給者の義務です。chemSHERPA で聞かれた場合、化学品は chemSHERPA-CI で返します。

改版を見張る

候補リストは、ECHA の表を月に1回開いて件数と最新の収載日を見ます。同じ内容は ECHA のデータベース「ECHA CHEM」にも載っていて、いまの表の更新は2026年12月までです。次の候補は、意図の登録簿と、45日間の意見募集の頁で先に分かります。

chemSHERPA の物質リストは、ECHA の更新より後に改訂されます。2026年2月4日の2件は、3月25日の管理対象物質 Ver.2.13.00 に入りました。それを組み込んだツール V2R1.03.0 の公開は4月24日です。2026年度からは改訂の基準日が GADSL の改訂に変わり、最新の SVHC が入るのはこれまでより2か月ほど遅くなります。代わりに、意見募集中の物質が「管理対象物質の候補物質」として先に載ります。

chemSHERPA のリストが追いつくまでは、ECHA の表を正とし、増えた物質だけ仕入先に聞くのが確実だと私は考えます。次に見るのは、ECHA の表の件数(いまは253件)と、登録簿にある 4,4′-メチレンジフェノールの提出予定日(2027年2月8日)です。件数が変わったら、このページを書き直して冒頭の確認日を更新します。

規制物質の追加を社内で取りこぼさない仕組み(確認の担当と頻度、「該当なし」の記録の残し方)は、ものづくりハンドブックの「法改正・規制物質の新規指定への対応漏れ」にまとめています。

SVHC が追加されたときに確かめる順の表と、調査の依頼と回答を追う台帳は、ものづくりポータルの含有化学物質の回答管理表(Excel)に置いています。

次に読む

SVHC の調査を chemSHERPA で返すときの、ツールの版と返す前に見る所です。

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出典

免責:このページは ECHA・EUR-Lex・CMP コンソーシアムの公開資料をもとにまとめたもので、条文の日本語は筆者の訳です。法的な助言ではありません。最終判断は、各社の法務と客先との取り決めで行ってください。

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この記事を書いた人

素材メーカーに勤めて10年以上。検査員から始めて、生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは品質保証の責任者です。クレーム対応と是正処置、ISO・客先・仕入先の監査、製品含有化学物質の調査回答(chemSHERPA・REACH など)、部下の教育まで担当しています。QC検定2級、ISO 9001 内部監査員。座右の銘は「ピンチはチャンス」。

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