ISO 9001:2026の変更点:14001も持つなら、環境の期限が先に来る

ISO 9001:2026 の変更点と、認証を持つ組織が移行する段取りのガイドです。JIS Q 9001 の発行や JAB の案内など、公式の発表があれば書き直します(確認日:2026年10月14日)。

場面
ISO 9001 の新しい版が出て、何が変わったか、自社がいつまでに何をすればよいかを調べるとき
対象
ISO 9001 の認証を持つ製造業の組織の、品質保証・品質管理の担当者。これから認証を取る組織には、新規認証の期限の部分が当てはまる
使うもの
現行の品質マニュアルと手順書、品質方針と品質目標、リスクと機会・変更・マネジメントレビューの記録、認証機関の案内、ISO 9001:2026 の規格票
要点
変更は小さめ。認証を持つ組織は 2029年9月30日までに移行審査を受けて、新しい版の認証書を受け取る。変更点ごとに手順書と記録を洗い、日程は認証機関に聞く。条項の文言は規格票で確かめる

ISO 9001:2026 は2026年9月16日に発行された第6版です。Global ACI の移行要求事項は、2015年版からの変更を全体として最小限(minimal)と評価しています。

認証を持つ組織は、2029年9月30日までに移行審査を受けて、新しい版の認証書を受け取ります。新規の認証は、2028年3月31日より後は新しい版だけです。変更が小さくても、移行審査では変わった要求事項への対応が確かめられます。影響は組織ごとに違い、変更点の判断は認証を受ける組織の責任です。

目次

2026年版で変わった項目

ISO が示す最も大きな変更は5つです。リーダーシップ(品質文化と倫理的行動)、品質方針と戦略の結びつき、リスクと機会の区別、働く人の認識、新しい附属書 A が当たります。

箇条 変わった点
全体 ISO マネジメントシステム規格の共通の枠組み(Annex SL、Harmonized Structure)に合わせて整えられた
3 「品質マネジメントシステム」「品質方針」「品質目標」の用語が入った。品質の用語は、引き続き ISO 9000 を規範的に引用する
5.1.1 a)〜k) が並べ替えられ、新しい i) に「品質文化及び倫理的行動の促進」が入った。「改善」の促進は「継続的改善」の促進になった
5.2.1 a) にあった要素が、e)「組織の状況を考慮し、戦略的方向性を支援する」に移った
6.1 6.1.1(リスク及び機会の決定)、6.1.2(リスクへの取組み)、6.1.3(機会への取組み)の3つに再構成された
6.3 変更の計画に、e) 変更の有効性を監視・評価する方法、f) 変更の伝達、g) 変更の結果をレビューする方法が加わった
7.3 認識の要求に、e) 組織の品質文化及び倫理的行動が加わった
9.3.2 マネジメントレビューのインプットが「考慮して計画し実施」から「含める」に強まった。新しい c) に、品質マネジメントシステムに関連する利害関係者のニーズ・期待の変化が入った
文書化した情報 新しい言い回しが入り、文書化した情報を利用可能にするという趣旨が明確になった
附属書 附属書 A(参考)が改められ、附属書 B が削除された

この表は、Global ACI の文書の3.1が挙げる主な変更を、筆者が日本語の要旨にしたものです。「」内も筆者の訳で、規格の公式な訳ではありません。すべてでもないので、文言の細かい直しや条の題の変更は、規格票の目次と本文で見ます。

顧客重視、プロセスアプローチ、リスクに基づく考え方、継続的改善は変わりません。気候変動の考慮は、2024年の追補で2015年版に入った内容の引き継ぎで、新版の新設ではありません(ISO のガイダンス)。

移行の期限と日付

日付は、Global ACI-TECH-3-TR 2029-09-30 (M) が決めています。Global ACI は、2026年1月に IAF と ILAC が統合してできた、認定機関の国際組織です。この文書は、各国の認定機関と、その認定を受ける認証機関が守る必須文書で、期限は発行月の最終日(2026年9月30日)から数えます。

  1. 2026年9月16日:ISO 9001:2026 の発行日です。Global ACI の移行要求事項も、この日から適用されました。
  2. 2027年3月31日まで:認定機関が、新しい版を審査できる準備を整えて、移行の手順を公表します。
  3. 2027年6月30日まで:認証機関が、移行の宣言書と裏づけの資料を認定機関に出します。移行しない認証機関は、顧客に書面で知らせます。
  4. 2027年9月30日まで:認定機関が、認証機関の移行の判断を終えます。
  5. 2028年3月31日より後:認定付きの新規・初回の認証は、新しい版だけになります。
  6. 2029年9月30日まで:認証済みの組織が、認証書の発行まで含めて移行を終えます。2015年版の認定付きの認証は、この日以降は有効ではありません。

認定機関がその認証機関の移行を判断したあとでないと、新しい版の認定付きの認証書は出せません。審査を始める時期は、認証機関ごとに違います。これから認証を取る組織は、初回審査の第1段階と第2段階の日程によって、認証書の発行が3月31日より後になり、2015年版で出せなくなる場合があります。

既存の認証書の有効期限を、この期限に合わせて書き換える義務はありません。認証機関が混乱を避けるために短くすることはあります。移行しない組織は、認証機関が2015年版で審査を続けても、認証が移行期間の終わりで終了します。認証サイクルの途中でも同じです。

ISO 14001 の認証も持つ組織は、環境の期限が先に来ます。14001 の移行要求事項は Global ACI-TECH-3-TR 2029-04-30 (M) で、JAB が9月25日に参考訳を載せました。番号の日付は、9001 の文書では移行の最終日と同じです。14001 は2029年4月30日を目安に計画し、日付は14001 の文書の本文で確かめます。

移行審査の受け方

移行審査は、サーベイランス審査か更新審査に併せて受けても、別の特別審査として受けても構いません。審査では、次の事項が確かめられます。

  • 2015年版から変わった要求事項
  • 組織の状況の変化
  • マネジメントシステムに必要な、そのほかの変更

情報通信技術を使った遠隔の移行審査も、IAF MD 4 に沿って認められています。条件は、審査の目的を満たせると示すことです。追加の審査時間は、認証機関が ISO/IEC 17021-1 と IAF MD 5 に沿って決めます。判断の材料は、変更の度合いと、定期の審査に併せるか特別審査かです。全体のシステム審査なら、追加の時間が要らない場合もあります。最短日数の決まりは、Global ACI の文書にありません。

日本での段取りと未発表の事項

JIS Q 9001:2026 と邦訳版

JIS Q 9001:2026 の発行日は、2026年10月24日の時点でも公式の発表を見つけられませんでした。JISC のデータベースでは、JIS Q 9001 の最新の改正は2025年3月21日(追補1)のままです。JSA の ISO 9001 関連の一覧に載る JIS は、10月14日の時点で JIS Q 9001:2015(2015年11月20日)と追補1(2025年3月21日)でした。発行日は、JSA と JISC の公表を待ちます。

原文の ISO 9001:2026 は、JSA が英語36ページ・43,120円(税込)で販売しています。JSA は2026年10月15日に、英・日対訳版の販売を始めました。これは JSA の対訳版で、JIS ではありません。JIS の邦訳は、JIS Q 9001:2026 の発行を待ちます。

JAB の移行要領

JAB の「文書・様式類」の一覧に、ISO 14001 の移行要求事項の参考訳はあります。ISO 9001 の参考訳と、ISO 9001 向けの JAB の移行要領は、10月24日の時点でも見つけられませんでした。ISO 14001 のときは、Global ACI の文書が出てから JAB が参考訳を載せる順でした(JAB のお知らせ)。9001 も、JAB の案内は Global ACI の文書のあとに出ると見て待ちます。

カナダの認定機関 SCC が既存の認証の移行を2029年9月15日までとするように、細部は認定機関ごとに違います。移行する意向か、いつ移行審査を受けられるかは、認証機関に直接聞きます。

自社でやることの順番

ISO のガイダンスは、移行を「変更を理解する、いまのシステムを評価する、手直しする、人に伝える、認証機関と計画を合意する」の5段階で示しています。現場の作業に置き換えると、次の順です。日程は認証機関の案内が優先です。

  1. 認証機関に聞く。移行する意向か、移行審査をいつ、どの審査に併せて受けるか、追加の審査時間があるか、遠隔でできるかを確かめます。
  2. ギャップを洗う。上の変更点ごとに、いまの手順書と記録のどこが当たるかを一覧にします。
  3. 様式を直す。品質方針、品質目標、マネジメントレビューの記録、リスクと機会の登録表、変更の計画書を、新しい項目に合わせます。
  4. 内部監査で新しい項目を見る。直した手順で記録が出ているかを、移行審査の前に確かめます。
  5. 移行審査を受ける。指摘を閉じてから、認証の判断と認証書の発行に進みます。

変更点ごとに見る所

変更点 手順書・記録で見る所
品質文化と倫理的行動(5.1.1 i)、7.3 e)) 経営層が品質文化と倫理的行動を促進している活動の記録があるか。働く人への教育や周知の内容に入っているか
品質方針(5.2.1 e)) 方針の文面から、組織の状況と戦略的方向性との関係が読み取れるか
リスクと機会(6.1.1〜6.1.3) 登録表や手順書が、リスクと機会をひとまとめにした書き方のままになっていないか。取組みを別々に記録できるか
変更の管理(6.3 e)〜g)) 変更の計画書に、有効性の監視・評価、伝達、結果のレビューの欄があるか
マネジメントレビュー(9.3.2) インプットの一覧と議事録の様式に、利害関係者のニーズ・期待の変化が入っているか

移行審査の時期の決め方

私なら、移行審査を2027年10月から2028年9月の間に来る定期審査に合わせると決めます。認定機関の移行の判断が終わったあとで、期限の1年前までに済む時期です。審査で指摘が出ても、是正して認証書の発行まで終える期間が残ります。認証機関の受付がこの時期に間に合うかは、認証機関の案内で決まります。

規格票で確かめる所

このページは、変更の道案内までです。規格票の原文と、JSA の英・日対訳版は JSA で買えます。JIS の邦訳は JIS Q 9001:2026 の発行を待ちます。

  • 条項番号、条の題、文言そのもの。5.1.1 の a)〜k) の並び、6.1.1〜6.1.3、6.3 の e)〜g)、7.3 の e)、9.3.2 の c)〜g) です。
  • 「利用可能(available)」への言い換えの範囲。どの条項の語が変わったかは、規格票で見ます。
  • 箇条 3 の用語の定義と、日本語の定訳(品質文化、倫理的行動など)。定訳は JIS の確定版で決まります。
  • 附属書 A(参考)の説明。各箇条の意図が書かれ、判断に迷う箇所の手がかりになります。
  • Global ACI の文書に載っていない箇条。測定機器の校正を扱う箇条など、細かい本文の変更は規格票の目次と本文で見ます。
  • 内部監査の指針 ISO 19011 は、2026年版が5月27日に発行済みです。内部監査の担当は、あわせて確かめます。

私なら、公表版と照合したと書かれていない解説の条番号は、手順書の改訂に使わないと決めます。発行前の草案をもとにした解説も出ていて、条番号が規格票と合わないことがあるためです。条番号は、規格票か Global ACI の文書から取ります。

出典:ISO のニュース/ISO「ISO 9001:2026: What businesses need to know」/Global ACI-TECH-3-TR 2029-09-30 (M)/Global ACI の発表/JSA「ISO 9001:2026」商品ページ/JSA のプレスリリース「ISO 9001:2026 の対訳版発行」(2026年10月15日)/JISC「JISデータベース JIS Q 9001」/JAB 文書・様式類/JAB のお知らせ(ISO 14001 の移行・7月28日追記)/SCC の通知

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この記事を書いた人

素材メーカーに勤めて10年以上。検査員から始めて、生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは品質保証の責任者です。クレーム対応と是正処置、ISO・客先・仕入先の監査、製品含有化学物質の調査回答(chemSHERPA・REACH など)、部下の教育まで担当しています。QC検定2級、ISO 9001 内部監査員。座右の銘は「ピンチはチャンス」。

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