受入検査の進め方:検査のやり方の切り分けと不合格の処置

受入検査の進め方のガイドです。参照した資料の改版があれば書き直します(確認日:2026年11月6日)。

場面
購入した材料や部品を受け入れるときに、どの検査をどのやり方で行うかを決める場面。基準書をつくる、見直す、供給者の実績で検査を強める・弱める場面
対象
製造業の品質保証・受入検査・購買の担当者。抜取の計算、取適法の期限、特採の判断は別の記事に任せる
使うもの
図面・仕様書、供給者との取り決め、供給者の検査成績書、納入の記録、測定器と限度見本
要点
全数検査・抜取検査・成績書の確認・検査しない、の4つから物ごとに選び、選んだ理由と判定基準を基準書に書く。実績で強めたり弱めたりするときは、戻す条件を先に決める。不合格の処置の流れは、検査の前に決めておく

受入検査は、購入した物を受け入れてよいかを判断する検査です。進め方の中心は、物ごとに「全数検査」「抜取検査」「成績書の確認」「検査しない」のどれにするかを決め、その理由と判定基準を基準書に書いておくことです。

やり方は、不適合が出たときの影響、検査できるかどうか、供給者の実績、取り決めでの指定から決めます。決めたやり方は実績で強めたり弱めたりし、不合格のときの処置の流れは検査の前に決めておくのが基本です。抜取の計算、法の期限、特採の判断は別の記事にあるので、この記事はその手前の決め方が対象です。

目次

規格のどこに書いてあるか

JIS Z 8101-2:2015 に、「受入検査」という見出し語はありません。近い語は 4.1.17 の合否判定検査で、一つのロットなどについて、受入、リリース、出荷などの許可を判定する検査と定義されています。受入検査は、その一例として読みます。JSQC-Std 00-001:2023 にも用語としては載っていません。10.1 の検査は、注記で、製品の一つ一つに対して行う場合と、ロットに対して行う場合があるとしています。表記は「受入検査」で通します。購入検査と呼ぶ解説もあります(二次の解説)。

JIS Q 9001:2015 の 8.4.2 は、外部提供者への管理と、外部から提供された物への管理の両方を定めるよう求めています。管理の程度は、顧客要求や法令要求を満たす能力への潜在的な影響と、外部提供者が適用する管理の有効性を考えて決めます。d) は、要求事項を満たすことを確実にするために必要な検証その他の活動を明確にすることです。条文に「受入検査をする」とは書かれていません。検証の方法は組織が決めます。

8.6 は顧客へのリリースの条ですが、記録の考え方は受入にも使えます。残すのは、合否判定基準への適合の証拠と、リリースを正式に許可した人へのトレーサビリティです(私の読み方です)。7.1.5.1 は、測定を検証に使うなら、結果が妥当で信頼できるために必要な資源を確実にするよう求めています。測定器の校正もここに入ります。

自動車向けの IATF 16949:2016 は、8.6.4 で供給品の適合の確認方法を5つ挙げています。b) は受入の検査・試験で、例として実績に基づく抜取が挙がっています。e) は顧客と合意したほかの方法です。8.4.2.1 は、供給者の実績とリスクの評価をもとに、管理の種類と程度を強めたり弱めたりする基準と処置を、文書化したプロセスに含めるよう求めています。IATF の条文は、非公式の英文の写しで確かめました。使うときは規格票で原文を確かめてください。

検査のやり方は4つに切り分ける

やり方 何をするか 規格の言い方 向く場面 注意
全数検査 納入された全部を、項目ごとに検査する 全数検査(JIS Z 8101-2 の 4.1.5) 不適合の影響が大きい物、数が少ない物、初めて取引する物 手間がかかる。長く続けると見落としも出る
抜取検査 ロットから抜き取って検査し、結果でロットの合否を決める 抜取検査(4.1.6) 数が多く、全数が現実的でない物。破壊しないと測れない物 個数と判定個数は計算で決める(抜取検査の考え方と手順)
成績書の確認 供給者の検査成績書を、規格値や注文条件と照らして確認する。重要な項目だけ現物でも確かめる 間接検査(4.1.18)の考え方に近い。間接検査は、供給者の検査システムと提出された検査結果を評価し、試験することによる合否判定検査 成分や材質など、自社で測れない項目。供給者の検査の力を確かめてある物 判定だけの成績書では中身が分からない。生値の扱いは生値とは
検査しない 現物の検査も成績書の確認もせず、納品書との数量、品名、ロット表示の確認だけで受け入れる 規格の見出し語は見つからない。二次の解説に無試験検査があり、品質情報などをもとにサンプルの試験を省く検査とされている 実績が安定している物、不適合の影響が小さい物 省く根拠を基準書に書く。数量とロット表示の確認は残す

「検査しない」は、検査を省くことではなく、省く根拠を決めて書くことです。根拠は、次の節の判断材料と、供給者の実績です。

やり方を決める判断材料

8.4.2 が挙げる考慮は、影響の大きさと、供給者の管理の有効性です。次の表は、それを受入の場面に広げた私の整理で、規格の要求ではありません。

判断材料 強める方向 弱める方向
不適合の影響 安全、法規、客先の重要特性に関わる 外観や寸法の余裕が大きく、使う前に工程で見つかる
自社で検査できるか 測定器と手順があり、現物で確かめられる 成分や材質など、自社で測れない。成績書に頼る
供給者の実績 初めての取引。不合格が続く。変更があった 不合格のない期間が長い。監査で管理の仕組みを確かめた(仕入先監査の進め方)
検査の手間 数が少なく、検査が短い 数が多く、検査に時間がかかる
取り決めでの指定 客先や契約が方法を指定している場合は、その方法に従う 同左

私なら、初めて取引する物と、変更があった物は、実績にかかわらず1段強めて始めます。変更の連絡を受けた最初の数ロットだけ項目を足す手順は、4M変更申請書の書き方にあります。

基準書に書く欄の作例

基準書は、担当が替わっても同じ判定になることを目安に、欄を決めます。次の表は作例で、値はすべて説明のための例です。

欄 書く中身 例(説明用)
品番・品名・供給者 どの物の基準か 品番 A-001、シャフト、供給者X社
検査項目と規格 図面や仕様書から写す。下限・上限・単位まで書く 外径 10.00 ± 0.05 mm
検査のやり方 4つのどれか。選んだ理由を1行 抜取。理由:数が多く、影響は中程度
抜取の条件 個数と判定個数。根拠の表を書く(計算は抜取の記事) 採用した規格の表と条件を転記
測定器 管理番号。校正の期限内であることの確認(校正周期の決め方) マイクロメータ M-12
判定基準 寸法は規格値。外観は限度見本の番号(限度見本とは) 外観は限度見本 No.3
成績書 要るか、要るなら確かめる項目 要。材質と引張強さを規格値と照らす
不合格のときの初動 保留にする場所、最初に連絡する人 保留棚へ置く。品証に連絡
決める人 返品・選別・特採を決める役職 品証の責任者
現在の水準と見直し日 通常・緩和・強化のどれか。水準を変えた日と理由 通常。次の見直しは来年4月
版・改訂日・承認 どの版の基準で判定したかを後から追えるようにする 第2版、承認者の氏名

実績で強める・弱める

基準書の水準は固定しません。不合格が続けば強め、不合格のない期間が長ければ弱めます。IATF 16949 の 8.6.4 b) が挙げる例も、実績に基づく抜取です。切替えの規則とスキップロットの考え方は抜取検査の考え方と手順に載っています。

私は、弱めるときに3つを書き残すよう勧めます。弱める理由、弱める範囲(品番や供給者)、見直す時期です。あわせて、試行期間と、通常に戻す条件を先に決めます。戻す条件の例は、弱めたあとに不合格が出たら、その品番を通常の水準に戻す、です。供給者から検査を省く提案があったときも、この3つを書いてもらってから、受けるかを決めます。

不合格のときの処置の流れ

不合格の処置は、検査の前に流れを決めておきます。決める人が決まっていないと、不合格のロットが棚に残ったまま、使われるかどうかが曖昧になります。

  1. 受入を保留にし、ロットを識別する。納品書、ロット番号、数量を札に書いて貼る
  2. 良品と混ざらない場所に区分して置く。使う側への払出しを止める
  3. 不合格の中身を記録する。項目、測定値、不適合の個数、写真
  4. 供給者へ連絡する。連絡した日、不適合の内容、求める処置を残す
  5. 返品、選別、特採のどれにするかを、決める人が決める
  6. 決めた処置と決めた人を記録する。すでに使った分があれば、使用先を追う(横展開の進め方)

特採は、JSQC-Std 00-001 の 10.10 で、規定要求事項を満たしていない物の使用、または次のプロセスへの引渡しを認めることです。社内で決める物と顧客に依頼する物の分け方は特採の進め方にあります。IATF 16949 の 8.7.1.1 は、承認済みと異なる物を進めるときは、先に顧客の特別採用許可を得るよう求めています(非公式の英文の写しで確認)。返品ややり直しの期限は仕入先との品質の取り決めにあります。

受入の記録に残す欄

記録は、8.6 の考え方に合わせ、合否判定の証拠と、判定した人が分かる形にします。

欄 残す理由
受入日、品番、供給者、ロット番号、数量 どの物を、いつ受け入れたかを追う。使用先の追跡の起点になる
検査のやり方、検査個数、不適合数 基準書どおりに検査したかを確かめる。水準を見直す材料になる
成績書の有無 成績書の確認を選んだ物で、受け取ったかを確かめる
判定(合格・不合格・保留)と処置 合否判定基準への適合の証拠。処置を決めた経緯
検査した人、判定した人 誰が許可したかを追う

保管期間は、客先の指定と社内規程で決めます。この記事に年数は書きません。内部監査と客先監査では、基準書とこの記録を並べて見られます(内部監査の進め方、客先監査を受ける準備)。

基準書の運用で起きる失敗

  • 基準書が現物と合っていない。旧品番の表を写したまま、図面とつき合わせていない
  • 成績書を受け取って保管するだけで、中身を規格値と照らさない
  • 弱めたあとに、戻す条件がない
  • 特採を決める人が決まっていない
  • 校正切れの測定器で判定する
  • 変更の連絡が、受入の窓口に届かない

はじめの4つは、基準書の作例の欄(検査項目と規格、成績書、現在の水準と見直し日、決める人)を埋めておけば防げます。校正切れは測定器の欄に期限を確かめる手順を入れ、変更の連絡は購買と受入のどちらが受けるかを基準書の外で決めておきます。

手元の基準書で確かめる4点

基準書を1つ開いて、次の4点を見ます。欠けている欄があれば、記入者に聞いて足してください。

  • 検査のやり方を選んだ理由が、1行で書いてある
  • 判定基準が、規格値か限度見本の番号で書いてある
  • 不合格のときに決める人と、初動が書いてある
  • 水準を変えた日と、見直し日が書いてある

供給者から受け取る成績書の欄を見直すときは、ものづくりポータルの検査成績書の共通様式(Excel)が参考になります。出す側の様式ですが、規格値、測定器の管理番号、判定、検査した人、出荷を許可した人の欄の並びを見比べられます。

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出典

免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。ただし、JIS Q 9001、JIS Z 8101-2、JSQC-Std、IATF 16949 から引いた条文の番号と文言は、資料の記載のとおりです。規格の文面は、原本で確かめてください。受入検査の方法と合否の基準は、客先の要求書と社内の手順書で確かめてください。

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この記事を書いた人

素材メーカーに勤めて10年以上。検査員から始めて、生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは品質保証の責任者です。クレーム対応と是正処置、ISO・客先・仕入先の監査、製品含有化学物質の調査回答(chemSHERPA・REACH など)、部下の教育まで担当しています。QC検定2級、ISO 9001 内部監査員。座右の銘は「ピンチはチャンス」。

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