内部監査の進め方のガイドです。内部監査を任された品質保証の担当者が、年間の計画から当日の順番、所見の書き方、是正処置の閉じ方まで一通り組めるようにまとめました。参照した規格の改版があれば書き直します(確認日:2026年10月21日)。
- 場面
- 内部監査の担当になり、年間の計画を組むとき。または1回ごとの監査の計画を立てて、当日を進めるとき
- 対象
- 製造業の品質マネジメントシステム(ISO 9001)の内部監査。仕入先監査と、認証機関による審査は対象外
- 使うもの
- 前回の監査の記録と是正処置の記録、プロセスの一覧、手順書と様式の一覧、監査の計画書の様式
- 要点
- 年間のプログラムをプロセスの重さで組み、1回ごとに目的・基準・範囲を決める。当日はサンプルで記録と現場を確かめ、所見は要求事項・証拠・外れた所の3点で書く。指摘ゼロの報告は見る力を疑い、報告と是正は期限を付けて閉じる
内部監査は、年間の監査プログラムを先に組み、1回ごとに目的・基準・範囲を決め、当日はサンプルで記録と現場を確かめる順に進めます。所見は要求事項・証拠・外れた所の3点で書き、是正処置が閉じたところで1回の監査が終わります。
ISO 9001 が決めるのは内部監査の要求事項で、進め方の手引きは ISO 19011 です。JIS Q 9001:2015 の9.2.2は、注記で JIS Q 19011 を手引きとして挙げます。この記事は、9.2 の要求事項を骨組みにして、JIS Q 19011 の考え方を借りて組みました。
内部監査で確かめる2つのこと
9.2.1 は、あらかじめ定めた間隔で内部監査を行い、2つを確かめるよう求めます。1つは、品質マネジメントシステムが、組織自身の決めた要求事項と規格の要求事項に適合していること。もう1つは、有効に実施され、維持されていることです。条文の要旨なので、本文は規格票で確かめてください。
適合の確認は、決めたとおりに動いているかを見ます。有効性の確認は、決めたことが狙いの結果につながっているかを見ます。記録が揃っていても、不良や手戻りが減っていなければ、後者は確かめられていません。
年間の監査プログラムを組む
9.2.2 の a) は、頻度・方法・責任・計画要求事項・報告を含む監査プログラムを、計画して実施し、維持するよう求めます。プログラムは、関連するプロセスの重要性、組織に影響を及ぼす変更、前回までの監査の結果を考慮に入れます。
ISO/TC 176 と IAF の ISO 9001 Auditing Practices Group(APG)が、内部監査の手引きを出しています。手引きは、プログラムの焦点を、問題が起きたプロセスと、性質から問題が起きそうなプロセスに当てるよう説明します。リスクの高いプロセスと不適合のあるプロセスが、優先の対象です。
プログラムの表の作例です。工場もプロセスも架空で、重さと回数は説明のための例です。
| プロセス | 重さ | 変更 | 前回の所見 | 回数 |
|---|---|---|---|---|
| 受入検査 | 大 | 検査員が交代 | 軽微1件(記録の記入漏れ) | 年2回 |
| プレス加工 | 大 | 新しい金型を導入 | なし | 年2回 |
| 出荷・梱包 | 中 | なし | 軽微2件 | 年2回 |
| 購買 | 中 | 仕入先を1社追加 | なし | 年1回 |
| 教育訓練 | 小 | なし | なし | 年1回 |
回数は、左の3つの列から決めます。重さが大きいか、変更があるか、前回の所見が残るプロセスは、回数を増やす対象です。重さが小さく、変更も所見もないプロセスは、年1回で足ります。
私なら、重さが小さいプロセスも、数年のうちに必ず1回は入れます。何年も見られないプロセスを作らないためです。
私の職場では、内部監査を年1回受けています。
1回の監査の計画
1回ごとの計画は、目的・基準・範囲の3つが骨組みです。9.2.2 の b) は、各監査について監査基準と監査範囲を定めるよう求めます。目的は、JIS Q 19011:2019 の5.5.2が、個々の監査で定める事項に挙げています。ISO 9001 での扱いの変化は、後ろの節に書きました。
| 項目 | 決めること | 作例 |
|---|---|---|
| 目的 | なぜこの監査をするか。何が分かれば終わりか | 新しい金型を入れたプレス加工が、作業標準書どおりに動いているかを確かめる |
| 基準 | 何と照らすか。規格は版まで書く | プレス加工の作業標準書、品質マニュアルの該当箇所、ISO 9001:2015 の該当する箇条 |
| 範囲 | 場所・部門・プロセス・期間 | 第1工場のプレス加工ライン。直近6か月の記録 |
目的を書いておくと、当日に「どこまで見れば終わりか」を判断できます。範囲の中で時間が足りずに見なかった所は、見ていないこととして報告に残します。
監査の前にそろえる順番
計画書を出す前に、次の順で確かめます。
- 文書の版の一覧を作る。基準にする手順書と様式の最新版を挙げ、現場にある版と突き合わせる。版が食い違うと、基準そのものがずれる。
- 前回の指摘の是正の状況を確かめる。閉じたものと開いているものを分け、開いているものには期限と担当を添える。
- 1つの部門で、試しの監査を通しでやる。計画書の質問を実際に聞き、時間配分と質問の通じ方を確かめる。
記録の所在を1枚にする
記録の所在を1枚にしておくと、当日は記録の確認が早く済み、現場への質問と現物の確認に時間を回せます。列は、記録の名前・保管場所・管理者・最新の記録日です。監査の前に被監査部門に埋めてもらうと、記録が無い、古い、探せないといった問題が、当日の前に分かります。
| 記録の名前 | 保管場所 | 管理者 | 最新の記録日 |
|---|---|---|---|
| 受入検査記録 | 検査室の棚(紙) | 検査課の担当 | X月X日 |
| 工程内検査記録 | 製造課の共有フォルダ | 製造課の担当 | X月X日 |
| 校正記録 | 管理室の棚(紙)と台帳(Excel) | 品質保証 | X月X日 |
| 教育訓練記録 | 総務課の棚(紙) | 総務課の担当 | X月X日 |
最新の記録日が古い行は、当日の質問の候補になります。
この1枚は、客先監査で記録をすぐ出すときにも使えます。受ける側の準備は、客先監査を受ける準備と指摘の受け方を見てください。
当日の順番
JIS Q 19011:2019 の6.4は、監査の実施を、初回会議から最終会議までの項目に分けています。内部監査向けに縮めた流れは、次の表のとおりです。
| 順番 | することと見る所 |
|---|---|
| 初回会議 | 目的・基準・範囲、日程、報告の流れを、被監査部門と確かめる |
| 記録のレビュー | 所在の一覧にある記録から、サンプルを取って見る |
| 現場での確認と聞き取り | 現物を見て、作業している人に手順と記録のつけ方を聞く |
| 所見のまとめ | 監査員どうしで、所見を要求事項・証拠・外れた所の形に整える |
| 最終会議 | 所見と結論を伝え、是正の期限と担当を確かめる |
ISO 19011:2018 の監査の原則は、監査の期間も資源も限られるため、監査証拠は入手できる情報のサンプルに基づくとしています。サンプルの使い方が結論の信頼に結びつくので、何件をどう選んだかも、記録に残す項目です。
チェックリストは、JIS Q 19011:2019 の6.3.4が、監査のための文書化した情報に含み得る例として挙げています。使うかどうかと形は、監査ごとに決められます。使う場合は、規格の文言を写した表にせず、自社の手順書の確認項目と、当日に聞く質問を並べた形が実用的です。
監査員の選び方
9.2.2 の c) は、監査プロセスの客観性と公平性を確保するように、監査員を選んで監査を行うよう求めます。JIS Q 19011:2019 の4は、内部監査では、実行可能なら監査の対象の部門から独立した人が行うとします。小さな組織では完全な独立が難しいので、偏りをなくして客観性を保つ努力を求める書き方です。
同じ項は、監査員がどの場合も、偏りと利害の衝突のない形で行動することも求めます。人が少ない会社では、部門どうしで監査員を出し合い、自分の部門は見ない形で回します。品質保証の部門自身の仕事は、ほかの部門の人に見てもらう形が無難です。
所見の書き方
所見は、要求事項・証拠・外れた所の3点で書きます。サンプルで確かめたことだけを書き、見ていないことは書きません。
| 項目 | 書くこと | 作例 |
|---|---|---|
| 要求事項 | 何と照らしたか | 作業標準書に「ロット番号を記録する」とある |
| 証拠 | 何を何件見て、どうだったか | 直近10日分の記録のうち、3日分に記入がない |
| 外れた所 | 要求とどこが違うか | 規定の記録が一部残っていない |
「記録が不十分」とだけ書くと、被監査部門は何を直すのか分かりません。何を何件見て、どこが外れたかまで書きます。重大・軽微・観察事項のような区分は、自社で決めて文書にしておきます。
指摘ゼロの報告を疑う
指摘が1件も出なかった監査には、問題が無かった場合と、見る力が足りなかった場合があります。分ける手がかりは、サンプルの数、現場で話を聞いた人数、前回の指摘を確かめたかどうかです。
私なら、指摘ゼロの報告を受けたとき、記録だけを見て現場に出ていないのではないかを先に確かめます。
報告と是正処置
9.2.2 の d) は、監査の結果を関連する管理層へ報告するよう求めます。e) は、遅滞なく適切な修正を行い、是正処置をとるよう求めます。APG の不適合の手引きでは、修正は見つかった不適合そのものを除く処置、是正処置は原因を除いて再発を防ぐ処置、という区別です。
報告書には、所見と結論のほかに、範囲の中で見なかった所とその理由も入れられます。JIS Q 19011:2019 の6.5.1が、報告書に含め得る事項として、監査範囲内で監査しなかった領域を挙げています。見ていない範囲を書いておくと、読み手が見た範囲を取り違えません。
是正の期限と担当は、最終会議で被監査部門と確かめます。閉じたかどうかの確認結果は、次の年間プログラムで「前回の所見」の列に入ります。
9.2.2 の f) は、プログラムの実施と監査結果の証拠として、文書化した情報を保持するよう求めます。計画書、所在の一覧、所見、報告書、是正の記録は、1回の監査ごとにまとめておきます。
2026年版で変わる所
ISO 9001:2026 は、2026年9月16日に発行されました。認証を受けている会社の移行期限は、Global ACI の文書で2029年9月30日です。9.2 以外も含む全体は、ISO 9001:2026 の変更点と移行の段取りにまとめています。
9.2 の変更は、CQI・IRCA の2026年6月の説明資料が整理しています。この資料は最終案(FDIS)をもとにしているため、確定した条文は規格票で確かめてください。資料の内容は次の4点です。
- 9.2.1 の要求事項に変更はない
- 9.2.2 の表題が「内部監査プログラム」になる。2015年版の a) の文言は冒頭の2つの段落になり、b) が a) になる
- 監査基準と監査範囲に加えて、各監査の監査目的も定める
- 報告先が「関連する管理層」から「関連する管理者」に変わる。記録は「保持」の項目から、独立した段落の「利用可能」に変わる
この記事の計画書の作例は、目的・基準・範囲の3行にしてあります。いまの様式に目的の欄が無ければ、移行の前に足しておけます。
ISO 19011 は、2026年5月27日に第4版が発行され、2018年版は廃止されました。ISO/TC 176 の告知は、技術、デジタル化、仮想環境の影響の広がりへの対応と、リスクの分析と低減への重みを、2026年版の特徴に挙げます。DIN の紹介ページは、監査の原則の書き方が組み直されたと記します。規格票の本文は、この記事では扱っていません。
日本語の JIS は、日本規格協会のページで JIS Q 19011:2019(ISO 19011:2018 の翻訳)が有効です。ISO 19011:2026 は、同じ協会で英・日対訳版を買えます。
手元に年間の監査プログラムがあれば、プロセスごとに重さ・変更・前回の所見の3列を足し、回数を見直してください。
次に読む
内部監査とは別に、現場を定期的に回るパトロールの位置づけです。パトロールを内部監査の1回として数えるときに満たす条件も載せています。

自社の外にある仕入先を監査するときの、事前の質問票と当日の順番です。内部監査の流れを社外に広げるときに使います。

指摘への是正処置を書面にまとめるときの、原因の分け方と効果確認の決め方です。

出典
- ISO「ISO 9001」のページ(規格の本文の入手先。9.2 は JIS Q 9001:2015 の本文で確認)
- ISO「ISO 9001:2026 launched」(2026年9月16日)
- Global ACI「TECH-3-TR 2029-09-30 (M) ISO 9001:2026 Transition」(移行の期限)
- CQI・IRCA「ISO 9001:2026 ブリーフィングノート」(2026年6月。FDIS をもとにした CQI の解釈で、和訳は便宜的なものと断りがある。9.2 の変更を整理している)
- ISO「ISO 19011:2026 Guidelines for auditing management systems」(第4版・2026年5月発行)
- ISO「ISO 19011:2018」(廃止。監査の原則は、公開されている見本の本文で確認)
- ISO/TC 176「ISO 19011:2026 Released!」(2026年6月9日。サイトの内容は第三者が管理していると、サイト側に断りがある)
- DIN Media「DIN EN ISO 19011」(2026年版の変更点の紹介)
- 日本規格協会「JIS Q 19011:2019」(2019年5月20日制定、2024年10月21日確認)
- 日本規格協会「ISO 19011:2026」(英・日対訳版あり)
- 日本規格協会「JIS Q 19011:2019 改正説明会資料」(JIS Q 19011:2019 の本文の引用を確認)
- ISO 9001 Auditing Practices Group「Guidance on: Internal Audits」(第1版 Amd1・2020年7月19日。ISO の承認手続きを経た文書ではないと本文に断りがある)
- ISO 9001 Auditing Practices Group「Guidance on: Nonconformity – review and closing」(修正と是正処置の区別)
免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。規格の要求事項は規格票の本文で、監査の進め方と記録の様式は自社の手順書と認証機関の求めで確かめてください。