管理図の選び方と読み方をまとめたガイドです。参照した資料の改版があれば書き直します(確認日:2026年10月11日)。
- 場面
- 新しい特性を管理図で見張ることになったとき、または使っている管理図がその特性に合っているかを確かめるとき
- 対象
- 寸法や濃度のように測る特性と、不良の個数や欠点の数のように数える特性。累積和管理図など、シューハート管理図以外は対象外
- 使うもの
- 測定値か検査結果の記録(測った順に並べ、群で測るなら群ごとに分けたもの)、ものづくりポータルの管理図の道具(X̄-R・I-MR)
- 要点
- 群で測るなら X̄-R、1個ずつ測るなら I-MR、数えるなら p・np・c・u から選ぶ。管理限界は規格とは別物で、安定は管理限界の外の点と並びの癖で見る
管理図は、データの取り方で種類が決まります。同じ条件でまとめて測った数個を1群にできるなら X̄-R 管理図、1個ずつしか測れないなら I-MR 管理図、不良や欠点を数えるなら p・np・c・u 管理図のどれかです。
管理図は工程が安定しているかを見る図で、図面の規格に対する余裕は見ません。安定を確かめてから、規格に対する余裕を Cp・Cpk で数えます。式と読み方は工程能力指数 Cp・Cpk の読み方と計算式にまとめました。
データの種類で管理図を選ぶ
- 群で測る(同じ条件で作った2〜10個ほどを1回で測る。例:1時間ごとに5個測る寸法):X̄-R 管理図。ポータルの道具はX̄-R 管理図の作成
- 1個ずつ測る(例:ロットごとの濃度、1日1回の測定、破壊試験の結果):I-MR 管理図。ポータルの道具はI-MR 管理図の作成
- 不良品を数える(良・不良に分けた個数か比率):np 管理図(検査数が一定)か p 管理図(検査数が変わる)
- 欠点を数える(1個の中の傷や汚れなどの数):c 管理図(検査する量が一定)か u 管理図(検査する量が変わる)
私の職場では、群で測る寸法に X̄-R、ロットごとの濃度に I-MR、外観の不良の個数に p や np、欠点の数に c や u を使っています。
1群には、同じ時期に同じ材料・同じ設備で作った数個をまとめます。群の中は偶然のばらつきだけ、群と群の間は変化が出れば気づける、という分け方にします(JIS Z 9020-2 の合理的な群)。I-MR は、そうした群が作れない特性に使う管理図です。群を使う管理図より、工程の変化への反応は鈍くなります。本文を確かめられたのは2016年版で、現行の2025年版(2025年9月改正)の本文は未確認です。
群の大きさは4か5が多く、管理限界を最初に決めるときは、その群を25組以上集めます。群の大きさが10以上になると、JIS は範囲 R より標準偏差 s を使う X̄-s 管理図が望ましいとします。NIST では、R を使う方法は10くらいの群までです。
I-MR に最低個数を決めた数字は、NIST にありません。JIS は、個々の測定値の管理図にも群で測る場合と類似の手順を当ててよいとするので、群の25に合わせて25個以上を目安にします。
X̄-R と I-MR の中心線と管理限界
どちらも、中心線から標準偏差(σ)の3倍の位置に管理限界を引きます(3シグマの限界)。上側を UCL、下側を LCL といいます。正規分布に従うデータで工程が変わらなければ、点が管理限界の外に出る確率は約0.3%です。
- X̄ 管理図:中心線は群平均 X̄ の総平均、管理限界は総平均 ± A2×R̄
- R 管理図:中心線は R̄、上限は D4×R̄、下限は D3×R̄
- I 管理図:中心線は個々の値の平均 x̄、管理限界は x̄ ± 3×MR̄÷1.128
- MR 管理図:中心線は MR̄、上限は 3.267×MR̄、下限は 0
R は群の最大値から最小値を引いた範囲で、R̄ はその平均です。MR は隣り合う2つの値の差の絶対値(移動範囲)で、MR̄ はその平均です。A2・D3・D4 は群の大きさ n で決まる係数で、n=5 なら A2=0.577、D3=0、D4=2.115 です(NIST 6.3.2.1 の表)。n が6以下では D3 が0なので、R 管理図に下限は引きません。
I-MR の 1.128 は n=2 の d2、3.267 は n=2 の D4 です(NIST 6.3.2.2)。移動範囲は2個ずつの範囲なので、n=2 の値を使います。
管理限界は規格限界と別の物差し
管理限界は、工程が安定しているかを判断する線で、測定データから計算します。規格限界は、製品が意図どおりに働くかを判断する線で、図面で決まります(NIST 6.3.2)。X̄ 管理図の点は群の平均なので、管理限界は個々の値の散らばりより狭くなります。
作例です。外径の規格が 10.000 ± 0.050 mm の部品を5個ずつ25群測り、総平均が 10.000 mm、範囲の平均 R̄ が 0.024 mm だったとします。数値は説明用に作ったもので、実在の工程の値ではありません。
| 線 | 値(mm) | 決め方 |
|---|---|---|
| 規格 | 9.950〜10.050 | 図面の公差 |
| X̄ 管理図の管理限界 | 9.986〜10.014 | 10.000 ± 0.577×0.024 |
| R 管理図の上限 | 0.0508 | 2.115×0.024(下限は引かない) |
ある群の5個が 10.012、10.014、10.016、10.017、10.021 だったとします。平均は 10.016 で、X̄ 管理図では上限 10.014 の外の点になりますが、5個とも規格の内側です。この点は、その群を作った間に工程が変わった見込みが高いという合図です。不良品かどうかの判定ではありません。原因を調べる出発点になります。逆に X̄ 管理図の点が管理限界の内側でも、個々の値は群の平均より広く散るので、規格を外れる値が混ざることはあります。
管理限界の外と並びの癖で安定を見る
管理限界の外の点が出たら、工程が管理された状態にない見込みが高いとみて、原因を調べて取り除きます(NIST 6.3.1)。工程が変わらなくても、管理限界の外の点は平均で約371点に1回出ます(NIST 6.3.2.1)。
原因が見つかった群は除いて管理限界を引き直し、原因が見つからない点は残したまま計算します(JIS Z 9020-2:2016 の7.2・7.3)。
点がすべて管理限界の内側でも、並びに癖があれば工程に何かが起きています。たとえば30点のうち初めの25点が中心線の上で、残る5点が下なら、管理限界の内側でも理由を調べます(NIST 6.3.1 の例)。並びの癖を見る規則は、NIST 6.3.2 に載っています。8点連続で同じ側などが Western Electric の規則、6点連続の上下と14点連続の交互が傾向の規則です。
| 並びの癖 | 規則の例(NIST) | 作業記録で確かめる所 |
|---|---|---|
| 中心線の片側に続く | 8点連続で中心線の同じ側 | 段取り替え、材料ロットの切り替え、設備の調整 |
| 一方向に動き続ける | 6点連続で上がり続ける、または下がり続ける | 刃具の摩耗など、少しずつ進む変化の記録 |
| 交互に上下する | 14点連続で交互に上下 | 設備や作業者が交互に入る組み合わせ |
規則を足すと小さな変化に早く気づけますが、誤った警報も増えます。管理限界の外だけなら誤報は平均371点に1回で、Western Electric の規則を加えると約92点に1回です(NIST 6.3.2)。
JIS Z 9020-2:2016 の附属書Bは、規則を指針として使い、工程のいつもの状態に合わせて決めるとしています。初期流動期は、複数の規則を使って原因を積極的に探す段階です。量産に入ったら複数の規則の同時使用を避け、小さな変化や傾向を想定する特性にだけ補足の規則を足します。管理限界の外の点がなく、並びにも癖がなければ、安定とみて Cp・Cpk に進みます。
数える特性は p・np・c・u から選ぶ
数えるデータは2種類あります。製品を1個ずつ良・不良に分けて数える不良品の個数や比率と、1個の中にある欠点の数です。1個の不良品には欠点が1つ以上あるので、どちらを数えるかを先に決めます(NIST 6.3.3.1)。
検査数(検査する量)が毎回同じかも見ます。不良品の個数を数える np と、欠点の数を数える c は、検査数が同じときに使います。検査数が変わるなら、不良品の比率を見る p と、1単位あたりの欠点の数を見る u を使います(JIS Z 9020-2:2016 の10)。検査数が一定のときは、p と np、u と c のどちらでも使えます。
検査数が変わると群ごとに管理限界が変わり、検査数が小さい群ほど管理限界は広くなります。検査数の変動が平均の±25%以内なら、平均の検査数で引いた1組の管理限界で実用上は足ります。
- np 管理図(不良品の個数):中心線は n×p̄、管理限界は n×p̄ ± 3√(n×p̄×(1−p̄))
- p 管理図(不良品の比率):中心線は p̄、管理限界は p̄ ± 3√(p̄×(1−p̄)÷n)
- c 管理図(欠点の数):中心線は c̄、管理限界は c̄ ± 3√c̄
- u 管理図(1単位あたりの欠点の数):中心線は ū、管理限界は ū ± 3√(ū÷n)
n は1群の検査数(u では検査した単位の数)です。p̄ は全群の不良の個数の合計を検査数の合計で割った値、c̄ は欠点の合計を群の数で割った値、ū は欠点の合計を検査した単位の合計で割った値です。計算した下限が負になるときは、下限を引きません。p と c の式は NIST の6.3.3.2と6.3.3.1に、np と u の式は JIS Z 9020-2:2016 の計算例にあります。np は p を n 倍した値、u は c を n で割った値なので、np と u の式は p と c の式からも導けます。
下側の管理限界を下回る点は、工程が良くなった印のほかに、検査の基準が甘くなった可能性もあります。原因を調べ、良くなった理由が分かれば作業標準に反映します(JIS Z 9020-2:2016 の10)。c 管理図は、欠点の平均が5以上であることが前提です。5を下回る特性は、変数変換か確率限界で管理限界を引く方法があります(NIST 6.3.3.1)。
管理限界を引くときの注意
- R 管理図を先に見ます。X̄ 管理図の管理限界は R̄ から計算するので、R が不安定なまま X̄ を読んでも当てになりません(JIS Z 9020-2:2016 の7)。
- 群は、段取り替えや材料ロットの切り替えをまたがずに作ります。群を取る間隔が広いほど R̄ が大きくなって管理限界が広がり、変化に気づきにくくなります(JIS Z 9020-2:2016 の11.4・12.1)。
- I-MR の移動範囲は、ラインの停止や別のバッチ生産をまたいで取りません。つなぎ目の2点の差には、工程の変化が入るからです(JIS Z 9020-2:2016 の6.2)。
- 管理限界の引き直しは、理由があるときだけです。NIST が挙げる理由は、工程が変わらないまま30点以上が増えたとき、工程を大きく変えたとき、防げた原因で工程が変わったときです。
いま管理図を付けている特性を1つ選び、最初の節の一覧でデータの取り方から管理図の種類を確かめます。合っていなければ、直近のデータで引き直します。合っていれば、最近の点を管理限界の外と並びの癖で見て、気になる点は作業記録と照らし、見つかった原因を日付・処置とあわせて管理図の記録欄に残してください。
出典:NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods 6.3.1/6.3.2/6.3.2.1/6.3.2.2/6.3.3.1/6.3.3.2/JIS Z 9020-2(日本規格協会、本文を確認した版は2016年)
ものづくりポータルのX̄-R 管理図の作成は、群ごとの測定値を貼ると X̄ 管理図と R 管理図を描き、管理限界の外の点を示します。I-MR 管理図の作成は、1個ずつ測った値を測った順に貼ると、個々の値の管理図と移動範囲の管理図を描きます。値はどこにも送らず端末の中で計算し、合否は出しません。安定を確かめたあとは、工程能力指数(Cp・Cpk)の計算に進めます。
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管理図の範囲 R や移動範囲 MR には、測定の揺れも乗る。群を取る前に、同じ人・同じ物・10回で揺れの大きさを確かめるときに使う。

段取り替えや始業のあとに最初の製品を確かめる手順。管理図の平均が動いた時期を、段取りの記録と照らすときに使う。

免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。計算例の数値は説明のための作例です。使う管理図の種類と判定の規則は、客先の要求書と社内の手順書で確かめてください。