是正処置報告の書き方のガイドです。是正処置報告は、客先へ出すことも仕入先から受け取ることもある書類です。私は品質保証の仕事で、客先へ出す報告を書き、仕入先から届く報告を読んでいます。様式や規格の改版があれば書き直します(確認日:2026年9月28日)。
- 場面
- 客先から不具合の指摘を受け、是正処置報告を求められた。仕入先から届いた報告を読んで、受け取るか戻すかを決める場面にも使う
- 対象
- 是正処置報告(不具合の原因と対策を、客先や仕入先との間でやり取りする報告書)。様式は客先の指定に従う
- 使うもの
- 客先指定の様式、不具合の現品、工程と検査の記録、出荷の記録
- 要点
- 発生原因と流出原因、暫定処置と恒久対策をそれぞれ分けて書き、水平展開の範囲を入れる。効果確認は、いつ・何で・誰が確かめるかを決めて書く
是正処置報告は、不具合の事実、暫定処置、原因、恒久対策、水平展開、効果確認の順に書きます。客先への報告で、私は次の3つを必ず入れています。発生原因と流出原因の区別、暫定処置と恒久対策の区別、そして水平展開です。
差し戻しの理由として、私は3つを挙げます。原因の掘り下げが浅いこと、対策が教育と注意喚起だけのこと、効果確認がないか曖昧なことです。3つとも、提出前の見直しで直せます。
報告書に入れる欄
様式は客先ごとに違うので、客先の様式があればそれに従います。欄の名前が違っても、中身は次の3つを分けて書きます。
| 分けて書く欄 | 書くこと |
|---|---|
| 発生原因と流出原因 | 発生原因は、不具合を作った原因(工程、設備、材料、手順)。流出原因は、検査や出荷前の確認で止められず、客先まで出た原因。対策も、原因ごとに分けて書く |
| 暫定処置と恒久対策 | 暫定処置は、いまある物への処置。在庫と仕掛品の選別、出荷の停止、客先にある物の置き換えなどと、その範囲と結果。恒久対策は、同じ原因で再発しないように手順、設備、検査を変える中身と、実施日と担当 |
| 水平展開 | 同じ原因が起こりうるほかの品番、ライン、工程。そこへ同じ対策を入れるか、入れない場合はその理由 |
例として、寸法の外れた部品が客先で見つかった場合を考えます。発生原因は寸法が外れた理由、流出原因は出荷検査でその外れを止められなかった理由です。発生原因だけを書くと、検査で止められなかった理由が報告から抜けます。流出原因の欄があれば、作り方と検査の両方に手を打ったことを読み手が確かめられます。
ISO 9001 の監査員向けに、ISO/TC 176 と IAF の ISO 9001 Auditing Practices Group(APG)が手引きを出しています。この手引きは、不適合への対応を「修正」「原因の分析」「是正処置」の3つに分けています。修正は見つかった不適合そのものを除く処置、是正処置は原因を除いて再発を防ぐ処置です。報告書の暫定処置と恒久対策の分け方は、この区別と重なります。同じ手引きは、原因を分析するうちに、ほかの場所で起こりうる不適合が見つかる場合にも触れています。水平展開の欄は、その洗い出しの結果を書く場所です。ISO 9001 の是正処置の要求事項そのものは、規格の本文で確かめてください。
差し戻されやすい3つの所
次の3つは、客先から戻されやすい所と、仕入先の報告で私が戻す所を合わせて挙げたものです。
原因の掘り下げが浅い
たとえば、原因の欄が「作業者の確認不足」で終わっている報告です。これでは、確認できなかった理由が読み手に伝わりません。手順に確認の項目が無い、見えにくい位置にある、時間が足りない、のどれに当たるかまで下ります。そのうえで、現物や記録で確かめた根拠を原因ごとに添えます。
APG の手引きも、最初に見つけた要因をそのまま根本原因にしないよう求めています。考えられる要因を並べ、「確認できない」「可能性あり」「確認済み」に分けて記録に残す、という進め方です。
対策が教育・注意喚起だけ
恒久対策の欄が「作業者に再教育した」「朝礼で注意喚起した」だけの報告です。教育は残してかまいません。そのうえで、人の注意に頼らない手を1つ以上加えます。例として、手順書の改訂、治具や表示の変更、検査項目の追加です。対策は原因ごとに書き、どの原因に当てた対策かが読み手に分かるようにします。
効果確認がない・曖昧
「今後、様子を見る」「効果を確認する」とだけ書いた報告です。いつ、誰が、何を見て効果ありと決めるのかが、これでは読み取れません。APG の手引きは、不適合を閉じる前に、是正処置が実施され効果を上げていることを客観的証拠で確かめるよう求めています。報告書には、その証拠を何で示すかを先に書きます。済んだ処置の欄に書く日付は、完了した日です。
効果確認の決め方
効果確認の期間は、私は案件ごとに決めています。期間を決めたら、報告書には次の項目を書きます。
- いつ:確かめる期間。日付の範囲で決めるか、ロット数や生産数で決める
- 何で:確かめに使う記録。工程内の検査記録、出荷検査の結果、客先の受入検査の結果など
- 誰が:確かめる部署と担当者
- 基準:効果ありと判断する条件。例として「対象の期間に同じ不具合が0件」
- 報告:結果を客先へ伝える日と方法
書き方の作例を1つ置きます。数字は説明のための例です。
「対策後に生産する3ロットを対象に、出荷検査で該当寸法を全数測る。確認するのは品質保証の担当者で、同じ不具合が0件なら効果ありと判断する。結果は最後のロットの出荷から1週間以内に、書面で客先へ報告する。」
この5項目が書いてあれば、客先は効果確認の終わる時期と中身を報告書だけで追えます。期間を決めずに「効果を確認する」とだけ書くと、3つ目の差し戻しに当たります。
書く順番
報告書を一から書くときは、次の7つの手順で進めます。
- 客先の様式と提出の期限を確かめる。様式の指定が無ければ、自社の様式で出してよいかを客先に聞く。
- 不具合の事実を書く。品番、ロット、数量、見つかった場所と日付、現品の状態を入れる。
- 暫定処置を書く。選別や出荷停止をした範囲(在庫、仕掛品、客先の在庫)と、その結果を入れる。
- 発生原因と流出原因を分けて調べる。現物や記録で確かめた根拠を、原因ごとに添える。
- 恒久対策を原因ごとに書く。実施日と担当を入れ、教育だけで終わらせない。
- 水平展開の範囲を書く。同じ原因が起こりうる品番やラインと、そこで入れる対策を並べる。
- 効果確認の計画を書く。いつ・何で・誰が・どの基準で確かめるかを入れ、終わったら結果を報告する。
いま手元に提出前の報告があれば、出す前に3点を見直してください。原因の欄が発生原因と流出原因に分かれていること、対策に教育以外の手が入っていること、効果確認に期間と担当が書かれていることです。仕入先から届いた報告を読むときも、同じ3点で受け取るか戻すかを決められます。
書く順番のとおりに欄を並べた様式を、ものづくりポータルの是正処置報告の様式(Excel・8D のシートつき)に置いています。客先から 8D の形を求められたときのシートも、同じファイルに入れました。
次に読む
報告の期限に間に合わないとき、途中経過で伝えることと延長の相談の仕方です。

流出原因を調べる前に、客先と自社の検査を突き合わせる手順です。

出典
- ISO 9001 Auditing Practices Group「Guidance on: Nonconformity – review and closing」(ISO/TC 176 と IAF の手引き・第1版 2016年1月13日。ISO の承認手続きを経た文書ではないと本文に断りがある)
- ISO「ISO 9001 Quality management systems — Requirements」(規格の本文の入手先)
免責:このページは、是正処置報告の書き方の手引きと書式の作例です。ISO 9001 の要求事項は規格の本文で、報告の様式と求められる中身は客先の要求で確かめてください。