平面度や振れのように0に近いほどよい特性の工程能力指数をまとめたガイドです。参照した資料の改版があれば書き直します(確認日:2026年10月26日)。
- 場面
- 客先から平面度や振れの Cpk を求められ、どの式で出すかを決める場面
- 対象
- 平面度、真直度、振れ、同軸度のように、0未満にならず、0に近いほどよい特性。規格は上限だけ
- 使うもの
- 測定データ、客先の仕様書や様式、Excel などの表計算ソフト
- 要点
- 平均と標準偏差の普通の式は、0に近い側へ偏った分布で上限側の裾を軽く見積もる。分位点の方法などの選択肢があり、データ数が少ないと不安定になる。客先の指定を確かめ、使った方法を報告書に書く
平面度、真直度、振れ、同軸度は、0未満の値になりません。規格は上限だけで、値は0に近いほどよい特性です。
Cpk の普通の式は、平均を中心に左右対称の山形になるデータが前提です。0に近い側へ寄ったデータにこの式を使うと、上限側の裾を軽く見積もります。そのずれの大きさを、作例の数字で示します。
Cp・Cpk の式と読み方は、別の記事に書きました。正規分布でない特性は、その記事では扱っていません。この記事が続きにあたります。
0に近い特性で普通の式がずれる
上限だけの規格では、普通の式で上側の指数 Cpu を出します。(上限−平均)÷(3×s) で計算します(s は標準偏差)。
正規分布なら、平均+3s が分布の99.865%の点にあたります。普通の式は、この点から上限までの距離を測っています。
平均が0に近い工程では、データが0を下回れないので、山は0の近くに寄り、右側へ長く裾を引きます。この形では、平均+3s が実際の99.865%の点より低くなることがあります。普通の式は、上限までの余裕を実際より大きく見せる形です。
作例で見る、普通の式との差
作例です。ある部品の平面度(mm)は、半正規分布に従うものとします。0を中心にした正規分布の絶対値をとった形で、0に山があり、右へ裾を引く分布です。元の正規分布のばらつきは0.010、上限は0.040です。
この分布の平均は0.00798、標準偏差は0.00603、中央値は0.00674、99.865%の点は0.03205です。平均+3s は0.0261で、それより低い位置にあります。上限0.040を超える割合は、約63 ppm(100万分の63)です。
普通の式では (0.040−0.00798)÷(3×0.00603)=1.77 です。次の節の分位点の方法では、(0.040−0.00674)÷(0.03205−0.00674)=1.31 です。
| 求め方 | Cpu | 外れる割合 |
|---|---|---|
| 普通の式 | 1.77 | 約0.05 ppm |
| 分位点の方法 | 1.31 | 約40 ppm |
| 真の割合から | 1.28 | 約63 ppm |
外れる割合は、その Cpu が正規分布のものだったとして直した見込みです。最下段は、作例の真の割合(約63 ppm)から逆に求めた Cpu です。
普通の式の1.77が示す見込みは約0.05 ppm で、真の約63 ppm の約1,200分の1です。Cpk の目安に1.33を使う客先なら、普通の式の1.77は合格、分位点の方法の1.31は不合格です。
JIS の定義は分位点を使う
JIS Z 8101-2:2015 の2.7.4は、上側工程能力指数 CpkU を、上側規格限界と50%点の差を99.865%点と50%点の差で割る形で表します。
CpkU=(U−X50%)÷(X99.865%−X50%)
U は上側規格限界、X50% は分布の50%点、X99.865% は99.865%点です。正規分布では、X50% が平均、X99.865% が平均+3s なので、普通の式と同じ値になります。非正規分布では、X50% に中央値を使います(注記2、注記3)。
JIS は、この式を統計的管理状態の工程について表しています。管理図で安定を確かめてから計算します。
非正規分布の X99.865% などの求め方として、JIS の注記には、適切な確率紙(例は対数正規)と、ISO/TR 22514-4 にある標本のとがりとゆがみから求める方法が載っています。ISO/TR 22514-4:2007 は廃止され、後継は ISO 22514-4:2016 です。本文は有償で、読んでいません。
データから直接読む方法もあります。NIST のハンドブックには、中央値と分位点を使う Cnp・Cnpk が載っています。分位点は、99.865%点と0.135%点を使う形と、99.5%点と0.5%点を使う形の2通りです。
上限だけの規格には、上側の式を使います。作例に99.5%点の形を当てはめると、Cpu は1.56です。同じ分位点の方法でも、どの点を使うかで値が変わります。
Excel なら、中央値は MEDIAN、99.865%点は PERCENTILE.INC(範囲, 0.99865) で出せます。
この方法は、データ数が少ないと不安定です。PERCENTILE.INC では、データが741個以下のとき、99.865%の点は最大値と2番目に大きい値の間に入ります。最大値の付近を読むことになり、取り直すたびに値が大きく変わります。作例の分布から乱数でデータを取り、各データ数で2,000回ずつ計算した中央値が、次の表です。
| データ数(個) | 分位点の方法 | 普通の式 |
|---|---|---|
| 50 | 1.87 | 1.79 |
| 100 | 1.66 | 1.78 |
| 300 | 1.48 | 1.77 |
| 1,000 | 1.38 | 1.77 |
| 10,000 | 1.32 | 1.77 |
母集団の値は、分位点の方法で1.31、普通の式で1.77です。50個では、分位点の方法の1.87が普通の式の1.79より大きく、甘く出ます。100個では、2,000回のうち9割が1.2から2.2に散らばりました。1,000個でも1.38で、10,000個になって1.32です。
普通の式は、データを増やしても1.77付近に落ち着き、分位点の方法の1.31にも、真の割合から出した1.28にも近づきません。この表は作例の分布で試した結果で、ほかの分布では数字が変わります。
分位点以外の3つの方法
分位点を直接読むほかに、資料に載っている方法が3つあります。
- 変換:Box-Cox 変換のような変換で、データを正規分布に近づけます。変換後の値と、同じ変換をかけた規格に、普通の式を使う形です。NIST のハンドブックは、変換がうまくいくなら、それを使うのが望ましいとしています。
- 分布のあてはめ:対数正規分布などをデータにあてはめ、その分布から50%点と99.865%点を読みます。JIS の注記にある確率紙も、分布を当てはめる道具です。
- Z スコア法:外れる割合を求め、同じ割合になる正規分布の Z 値を3で割って Cpu とします。作例の真の割合(約63 ppm)からは1.28です。Minitab は、非正規データの全体の指数を、既定でこの方法で計算します。
私なら、データが数百個に届かないときは、分位点を直接読むのをやめて、分布のあてはめか変換を試します。方法によって値が変わるので、使った方法は報告書に書きます。
片側規格では下限に0を置かない
上限だけの規格は、上側の指数だけを出します。下限に0を置くと、0から離れるほどよい物として扱われ、下側の指数が足を引っ張ります。
作例で下限に0を置くと、Cpl=(0.00798−0)÷(3×0.00603)=0.44 です。Cpk は小さい方をとるので、0.44になります。平均が0に近いほど、下側の指数は小さくなります。0に近いほどよい特性では、評価が逆です。
日科技研のよくある質問(2011年更新、2次資料)も、0に近いほど望ましい特性では、下限規格値に0を設定しないとしています。上限だけの規格で出る (上限−平均)÷3s は、Cpk と見なしてよいとしています。
客先の様式に下限の欄があるときは、空欄のまま出してよいかを客先に確認します。
0に近い特性はばらつきを減らす
両側規格の特性は、平均を規格の中央へ寄せて指数を上げられます。0に近い特性は、平均がすでに0の側に寄っていて、寄せる余地がありません。
作例の分布では、平均も標準偏差も、元のばらつき(0.010)に比例します。ばらつきを0.008に小さくすると、分位点の方法の Cpu は1.31から1.71に、上限を超える割合は約63 ppm から約0.6 ppm になります。実際の工程で平均とばらつきがどれだけ連動するかは、工程次第です。
客先へ出すときに書くこと
最初に、客先の仕様書や様式に、指数の求め方の指定があるかを確かめます。指定があれば、それに従います。
指定がなければ、普通の式(平均と標準偏差)のままでも受け付けられることがあります。
客先から平面度の Cpk を求められました。普通の式(平均と標準偏差)のまま上限側を出して提出し、そのまま通りました。
普通の式で通る場合も、書いておく内容は同じです。0に近い特性では、作例のように普通の式が上限側の裾を軽く見積もるので、報告書には使った方法と、その計算に使った値を書きます。
- 方法(普通の式、分位点の方法、変換、あてはめ、Z スコア法など)
- データの数と、測定した条件
- 上限値と、上側の指数だけを出したこと
- 方法に使った値(平均と標準偏差、または中央値と99.865%の点)
どの方法がよいか迷うときは、提出の前に客先へ確認します。
私なら、客先の指定がなくても「上限側のみ、平均と標準偏差による」のように1行書き添えます。あとで客先から別の方法を求められたとき、どこを変えればよいかがすぐ分かります。
正規分布に近い特性なら、ものづくりポータルのCpk 計算ツールが使えます。Excel の列を貼ると、平均と標準偏差から Cp・Cpk と、規格から外れる見込みが出ます。平面度や振れのような0に近い特性では、正規分布を仮定したその見込みは実際とずれるので、そのまま使えません。
次に読む
Cp・Cpk の式、1.33の目安、データ数による揺れです。この記事の前提にあたります。

指数を出す前に、工程が安定しているかを管理図で確かめる手順です。

指数に使う測定値が、測定そのもので、どれだけばらつくかを確かめる方法です。

出典
- 日本規格協会「JIS Z 8101-2:2015 統計-用語及び記号-第2部:統計の応用」(販売ページ。2.5.7〜2.5.9、2.7.2〜2.7.4 の確認には、転載された条文を使った)
- NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods「6.1.6. What is Process Capability?」(片側の指数の式、非正規データへの対処、Cnp・Cnpk)
- ISO 22514-4:2016(販売ページ。題名と、ISO/TR 22514-4:2007 を置き換えた経緯の確認のみ。本文は有償で未読)
- 日科技研「片側規格の場合の工程能力指数Cpについて(よくあるご質問)」(2011年11月15日更新。2次資料。下限規格値に0を設定しない理由)
- Minitab「Capability indices for nonnormal data」(ソフトのヘルプ。Z スコア法が既定で、百分位の方法(ISO 法)も選べること)
- ものづくりポータル「Cpk 計算ツール」(計算の前提:全データの標準偏差と正規分布)
免責:製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。ISO 22514-4 の本文は有償のため、通読していません。報告書の求め方は、客先の指定を優先してください。