- 場面
- 輸送中の破損の連絡が客先から続き、緩衝材を足しても止まらない
- 対象
- 段ボール箱とパレットで出荷する部品の梱包仕様書
- 使うもの
- 破損の切り分け表と、客先と決め直す6項目の記入欄
- 要点
- 破損の位置を3件そろえてから、6項目を1つずつ客先と合意する
同じ品番で輸送中の破損が3か月に2件続いたら、緩衝材を足す前に梱包仕様書を開く。
客先と決め直す項目は、荷姿と入り数、内装と緩衝材、外装箱、積み付けと固定、表示、受入時の確認と破損時の連絡の6つ。先に破損した箱の位置を記録して疑う場所を絞り、そのあとで空欄の項目と守られていない項目を1つずつ客先と合意する。
たとえば、樹脂の成形品を1箱20個入りで出している工場で、客先から「角が欠けている」という連絡が月に1件ずつ来る。梱包の担当者は気泡緩衝材を1枚足し、翌月も同じ連絡が来る。梱包仕様書を開くと、書いてあるのは入り数と外装箱の品番だけで、積み付けの段数も破損時の連絡先も空欄のまま、という形はよくある。
破損の位置で疑う場所を絞る
破損が梱包のどこで起きているかは、外装箱の傷み方と、破損した製品が箱の中のどこにあったかの2つで絞る。
| 破損の出方 | 疑う場所 | 確かめる記録 |
|---|---|---|
| 外装箱は無傷で、製品の角や縁が欠けている | 箱の中での製品の動き(入り数・仕切り・緩衝材) | 破損した製品の、箱の中での位置 |
| 外装箱のつぶれと同じ面の製品が割れている | 外装箱の強度か、上に積んだ荷の重さ | パレットの何段目の箱か |
| 製品の表面に擦れやキズがある | 内装材との擦れか、輸送中の振動 | 製品と触れている内装材の材質 |
| 外装箱に穴や破れがある | 荷扱い(フォークの爪・落下) | 受入のときの外装箱の写真 |
破損3件分の記録を並べ、同じ段、同じ位置に破損が寄っていれば、疑う場所はほぼ1つに絞れる。最下段の箱に寄るなら積み付けの重さを、箱の壁ぎわや四隅に寄るなら箱の中の動きと緩衝材を疑う。位置が毎回違うなら、輸送中の振動か荷扱いを疑い、運送会社に積み替えの有無を聞く。

記録は客先にも頼む。受入で破損を見つけたら、開梱する前の外装箱と、パレットの段、箱の中の位置が分かる写真を撮ってもらう。この頼み方は、6項目のうち「受入時の確認と破損時の連絡」の欄にそのまま書き込む。
梱包仕様書で決め直す6項目
記入例は、樹脂の成形品を段ボール箱に入れてパレットで出す場合のもの。
| 項目 | 欄に書く中身 | 記入例 |
|---|---|---|
| 1 荷姿と入り数 | 1箱の入り数、製品の向き、仕切りの有無 | 20個入り・2段重ね・段の間に仕切り板 |
| 2 内装と緩衝材 | 製品と直接触れる材料、緩衝材の種類と置く位置 | 1個ずつ袋に入れる・箱の四隅に緩衝材 |
| 3 外装箱 | 箱の品番と内寸、段ボールの種類、封かんの方法 | 両面段ボール・テープで十字に封かん |
| 4 積み付けと固定 | パレットの寸法、1段の箱数、積む段数の上限、固定の方法 | 1段8箱・4段まで・フィルムで巻いて固定 |
| 5 表示 | 品番・数量・ロットのラベルの位置、荷扱い図記号 | 側面の2面にラベル・上向きとこわれもの |
| 6 受入時の確認と破損時の連絡 | 客先が受入で見る点、破損を見つけたときの連絡先と期限、写真の撮り方 | 外装箱を見てから開梱・当日中に営業へ・写真3枚 |
積み付けは段数の上限まで書く
積み付けの欄は、自社の出荷場と客先の倉庫の両方にかかわる。自社で4段に積んだパレットも、客先の倉庫で別の荷の下に置かれれば、下の箱には想定より重い荷がかかる。積む段数の上限は、客先の倉庫での置き方を聞いてから決め、客先の保管にも当てはまる数字として梱包仕様書に書く。
段数の上限は外装箱の表示でも伝える。荷扱い図記号には、上に積んでよい段数を示す記号がある。
表示は客先の指定を先に聞く
ラベルの位置と書く中身は、客先が受入の都合で指定していることがある。棚に差したときに見える面、フォークで持ち上げたときに読める面など、客先の倉庫の置き方で決まる。荷扱い図記号はJIS Z 0150の図記号から選び、どの記号を外装箱のどの面に付けるかまで欄に書く。
破損時の連絡は期限と写真まで
6つ目の項目は、梱包仕様書に欄そのものが無いことがある。書くのは、客先が受入で見る点(外装箱のつぶれ・濡れ・破れ)、破損を見つけたときの連絡先と期限、写真の撮り方、破損品の置き方の4つ。破損品は外装箱ごと残してもらい、廃棄は自社が現品を確かめてからにする。運送会社へ申し出る場合に備えて、受け取った日時と外装箱の状態も記録に残してもらう。
客先と決める欄、自社で決める欄
6項目は、変えるたびに客先の合意が要る欄と、自社の判断で変えてよい欄に分けて、梱包仕様書の上で区別しておく。
| 項目 | 決める側 | 変えるときの手続き |
|---|---|---|
| 荷姿と入り数 | 客先と合意 | 客先のラインに投入する単位にかかわるため、変える前に連絡する |
| 内装と緩衝材 | 自社(製品に触れる材料は客先の承認) | 製品に触れる材料を替えるときは、変更の事前連絡に載せる |
| 外装箱 | 自社 | 内寸や外寸を変えるときだけ、客先の保管棚に収まるかを聞く |
| 積み付けと固定 | 客先と合意 | 段数の上限を変えるときは、客先の倉庫での置き方を聞き直す |
| 表示 | 客先の指定に従う | 客先の指定が変わったら、梱包仕様書の版を上げる |
| 受入時の確認と破損時の連絡 | 客先と合意 | 窓口の担当者が替わったら、連絡先を書き直す |
私なら、内装と緩衝材のうち「製品に触れる材料」だけは客先の承認欄に入れる。緩衝材を足す、材質を替えるといった手当ては梱包の担当者の判断で日々起きる。製品に触れる面だけは、自社の判断で替えない線を引く。
改訂は切替日と旧資材まで
決め直した梱包仕様書は、版を上げて切替日を決めるところまでを1回の改訂にする。
- 破損3件分の位置の記録と、現行の梱包仕様書を並べる。6項目のうち空欄の欄と、書いてあるのに守られていない欄に、別の色で印を付ける。
- 印を付けた欄ごとに、自社の案を書く。緩衝材や外装箱を替える案は、同じ便で新旧の箱を並べて2回出荷し、受入の写真を客先にもらって比べる。
- 客先との打ち合わせで6項目を1つずつ確かめ、合意した欄の横に客先の確認日を書き込む。
- 版番号と切替日を決め、旧資材の在庫と、旧梱包で出荷を待っている製品の扱いを決める。
- 切替後の最初の3回の出荷は、受入のときの外装箱の写真を客先から送ってもらい、新しい梱包で破損が出ていないかを見る。
切替日を決めずに新しい梱包仕様書を配ると、出荷場で旧資材を使い切るまで新旧の梱包が混ざる。混ざった期間に破損が出ると、どちらの梱包で起きたかを後から分けられない。
次に破損の連絡が来たら、その日のうちに客先へ、開梱前の外装箱とパレットの段、箱の中の位置が分かる写真を頼む。手元にある過去の破損の記録も、段と位置が分かるものは同じ表に足す。3件分がそろったら、梱包仕様書の6項目を1枚に書き出し、空欄と守られていない欄に印を付けて、客先との打ち合わせの議題に載せる。
梱包・輸送・保管のどこで傷が付いたかの切り分けは、ものづくりハンドブック TS39 客先で開梱時に汚れ・キズを指摘されたときの切り分けに初動の順で載っている。原因が決まるまで「確認できた事実とできていない事実を分けて記録する」進め方は、破損の連絡への返事にも使える。
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破損の出どころを1つずつ掘り下げる手順を梱包の担当者と共有するなら、小倉仁志『なぜなぜ分析 実践編』を1冊置いておく。なぜなぜ分析の進め方を、実務で使う側から扱った本だ。
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判定が割れたら、原因を探す前に、基準の版、測り方と測定器、現品と位置、輸送と保管、生の測定値の5つを自社と客先で並べる。破損ではなく寸法で不合格になったときは、この突き合わせ表から入る。

一次回答を、事実の確認状況・流出品の処置・次回連絡の期日・推定原因の4つの欄で出す書き方と、期限の決め方。

免責: 本記事は、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。梱包の仕様や破損時の扱いは客先との取り決めと運送の契約によって異なるため、実際の対応は自社の規程に沿ってご判断ください。