- 場面
- 客先ごとに検査成績書の様式が違い、転記と確認に手間がかかっている
- 対象
- 出荷のたびに客先へ出す検査成績書の様式
- 使うもの
- 欄の棚卸し表と、共通様式1枚の欄の並び
- 要点
- 欄ごとに使っている客先と目的を書き、本体・別紙・削除に振り分ける
客先ごとに違う検査成績書を1枚の共通様式に寄せるなら、半数以上の客先が使う欄を本体に残し、それに届かない欄は客先ごとの別紙に回し、どの客先も使っていない欄は削る。判定と出荷の許可にかかわる欄は、使っている客先の数によらず本体に残す。
振り分けの材料は、欄の棚卸し表1枚で足りる。欄の名前、その欄を使っている客先、客先がその欄で確かめていること、値の出どころの4つを書き出せば、残すか削るかは表の上で決まる。
たとえば客先が6社ある工場では、検査成績書の様式も6種類になる。同じロットの同じ測定値を客先ごとに違う位置へ転記し、欄の名前も「外径」「φD」「寸法1」と客先ごとに違う。転記のたびに確認の手間がかかり、転記の誤りは客先の受入で見つかる。
欄を棚卸し表に並べる
客先ごとの様式を1部ずつ並べ、全部の欄を棚卸し表の行に書き出す。同じ中身で名前が違う欄は1行にまとめ、客先での呼び名は欄の名前の横に括弧で残す。1枚の様式の中で同じ値が2か所に出る欄も、この段階で1行にまとめる。下の表は、外径を測る部品で途中まで埋めた例。
| 欄の名前 | 使っている客先 | 客先が確かめていること | 値の出どころ | 振り分け |
|---|---|---|---|---|
| 品番・図番と版 | 全社 | 注文どおりの品物か | 生産指示書 | 本体 |
| ロット番号・数量 | 全社 | さかのぼって追えるか | 出荷記録 | 本体 |
| 外径の測定値(客先Bは「φD」) | 全社 | 受入の判定 | 検査記録 | 本体 |
| 客先の注文番号 | 4社 | 注文との照合 | 注文書 | 本体(使わない客先は空欄) |
| 外径の全数の測定値 | 1社 | 工程のばらつき | 検査記録 | 別紙 |
| 客先指定の管理番号 | 1社 | 客先のシステムへの取込み | 客先の指定表 | 別紙 |
| 社内の工程コード | なし | なし(以前の社内用) | 生産指示書 | 削る |
「使っている客先」が「なし」の欄でも、客先との品質協定や購入仕様書で指定されていれば、客先がふだん見ていなくても残す。削る前に、協定と仕様書を客先ごとに1回ずつ開いて確かめる。
欄の振り分けの線
棚卸し表の最後の列は、次の線で埋める。上の行から当てはめ、最初に当てはまった行き先に決める。
| 欄の条件 | 行き先 |
|---|---|
| 判定と出荷の許可にかかわる | 本体(使っている客先の数によらない) |
| 品質協定や購入仕様書で指定されている | 指定どおりの場所(本体か別紙) |
| どの客先も使っていない | 削る |
| 半数以上の客先が使う | 本体(使わない客先の分は空欄で出す) |
| 使う客先が半数に届かない | 客先ごとの別紙 |
出荷を許可した人の欄は本体に残す
判定と出荷の許可にかかわる欄は、測定値、判定、使った測定器、検査した人、出荷を許可した人の5つ。どの客先も出荷を許可した人の欄を指定していなくても、本体に残す。ISO 9001:2015 の8.6は、客先への出荷の許可の記録に「合否判定基準及びリリースを正式に許可した人(又は人々)に対するトレーサビリティ」を含めるよう求めている。
判定の欄だけを残して測定値の欄を削ると、客先の受入で判定が割れたときに突き合わせる値が無くなる。測定値は、測った個数と、最小値・最大値を本体に置く。
別紙は本体の番号でつなぐ
別紙は客先ごとに1枚にする。1社だけが求める客先の管理番号、全数の測定値、工程能力指数などが別紙に入る。別紙の上には本体の検査成績書の番号を書き、本体と別紙が離れても対になる相手が分かるようにする。
共通様式1枚の欄の並び
客先の受入では品番とロットを先に照合するので、本体は識別の欄を上に、判定と出荷の許可の欄を下に置く。
- 表題、検査成績書の番号と版、発行日
- 宛先の客先名、客先の注文番号(使わない客先は空欄)
- 製品の識別:品番、図番と版、ロット番号、数量、出荷日
- 検査項目の表:項目、規格値、測定器の管理番号、測った個数、測定値(最小・最大)、判定
- 総合判定、検査した人、出荷を許可した人
- 別紙の有無と枚数、備考
検査項目の表は、項目の数が品番ごとに違っても同じ様式で出せるように、行を増やせる形にする。Excelで作るなら、項目の表だけを品番ごとのシートから読み込み、見出しと判定の欄は全品番で同じ位置に置く。
切り替えは8週間で組む
共通様式への切り替えは、例として8週間の段取りで組む。客先の確認に時間がかかるので、社内の作業は前半に寄せる。
- 1〜2週目:客先ごとの現行の様式を1部ずつ集め、棚卸し表を埋める。品質協定と購入仕様書で指定されている欄には印を付ける。
- 3週目:振り分けを決め、共通様式の本体と、客先ごとの別紙の案を作る。
- 4〜6週目:客先ごとに案を送り、別紙の中身と、本体で空欄にする欄を確かめてもらう。
- 7週目:客先ごとの切替日と、切替日より前に出荷した分の扱いを決める。旧様式で出した分を再発行するかどうかも、この週に客先と合意する。
- 8週目以降:切替日から共通様式で出す。旧様式は版を止め、保管期限を決めて残す。
客先の返事が遅れて切替日がそろわないときは、返事の来た客先から切り替える。全社がそろうまで待つと、新旧の様式が社内で長く並び、どの客先にどちらを出すかを取り違える。
客先の様式を残す場合
客先のシステムに取り込むために様式を指定している客先には、共通様式を受け取ってもらえないことがある。残すかどうかは、客先の様式が品質協定や購入仕様書に書かれているかで決める。書かれていれば、その客先だけ客先の様式を残す。書かれていなければ、共通様式と別紙で受け取れるかを客先に1回相談する。
客先の様式を残す場合も、値は共通様式と同じ元データから客先の様式のセルへ引く。手で打ち直す手間が無くなり、2つの様式の測定値がそろう。私なら、客先の様式を残すかどうかの相談は、切替日を決める前の4〜6週目に済ませる。
今月出した検査成績書を客先ごとに1部ずつ集め、棚卸し表の5つの列(欄の名前、使っている客先、客先が確かめていること、値の出どころ、振り分け)を埋めるところから始める。品質協定と購入仕様書で指定されている欄には、埋める前に印を付ける。
決めた切替日を客先に伝える前に、ものづくりハンドブック S31 検査成績書の書式変更を求められたときの受け方で、客先から変更を求められた側の手順と照らし合わせる。「それ以前に出荷した分の扱い」を客先と合意する項目は、自社から様式を変える場合にも同じ形で要る。
この記事の欄の並びで作った本体と別紙の様式を、ものづくりポータルの検査成績書の共通様式(Excel)に置いた。
参考書籍(PR)
『生産性』(伊賀泰代)は、成果に結びつかない作業を減らす側から生産性を考える本として知られる。欄を1つずつ削るかどうかを決める前に、部署で読み合わせる1冊に向く。
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紙とExcelに同じ検査記録があるなら、下の記事で、探しやすさ、改ざんへの強さ、現場の入力負担の3つの基準から正本を1つに決める。共通様式の元データの置き場所も、同じ3つの基準で決まる。

集計は元データをテーブルにしてピボットで出し、客先がセルの位置を指定する提出様式だけは関数で値を引く。別紙や客先の様式へ値を写す仕組みは、この分け方で組める。

免責: 本記事は、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。検査成績書の様式や記載事項は客先との取り決めと各社の規程によって異なるため、実際の運用は自社の基準に沿ってご判断ください。