客先に生値を求められたときの出し方:先に決める6つと残し方

測定の生値(丸める前の測定データ)を客先へ出すときのガイドです。私は品質保証の仕事で、客先へ検査成績書と測定の記録を出しています。参照した資料の改版があれば書き直します(確認日:2026年10月3日)。

場面
客先から、検査成績書の合否や代表値だけでなく、1個ずつの測定値(生値)も出してほしいと求められた
対象
出荷検査や工程内検査で測定器から得た値と、それを客先へ出す形式。出す範囲は客先との取り決めと品質契約に従う
使うもの
検査の記録(測定器の出力ファイル、記録用紙)、検査成績書、客先の要求書
要点
出す前に、範囲・形式・加工の可否・測定条件・時期・控えと訂正の6つを客先と決める。生値は最初に記録したまま残し、成績書の値はそこから作る

客先に生値を求められたら、出す前に6つを客先と決めます。出す範囲、形式と送り方、丸めや平均などの加工をしてよいか、添える測定条件、出す時期、出した控えと訂正の仕方です。決めないまま出すと、成績書の値と生値が食い違って見える、ロットごとに形式が変わる、といった行き違いが残ります。

生値は、測定器の出力や記録用紙に最初に残した値です。成績書の平均値や合否は、その生値から作ります。生値を手で写して成績書を作るなら、写した値を別の人が元の値と突き合わせてから出します。

目次

客先と決める6つ

決めること 中身
範囲 どの検査項目の、どのロットの、何個分の値か。品質契約に開示の取り決めがあれば、その範囲と照らす
形式と送り方 成績書の別紙か、CSV か Excel か。列の並び(ロット、個体の番号、項目、値、単位)と、メールか客先のシステムか
加工の可否 測定器が出した桁のまま出すか、丸め・平均・単位の換算をしてよいか。加工したときは、何をしたかを添える
測定条件 測定器の種類と最小目盛り、測定箇所、測定日。客先の測定と食い違ったときに比べる材料になる
時期 出荷と同時か、ロットの合格後か、求められたときだけか
控えと訂正 いつ、誰に、何を出したかの控えの残し方。出したあとで誤りが分かったときの出し直し方(訂正版と分かる書き方と、訂正の理由)

例として、成績書に外径20.03と書き、生値の別紙に20.033と書いたロットを考えます。加工の可否と桁を決めていないと、客先からどちらが正しいのかという問い合わせが来ます。成績書は小数第2位に丸めた値、別紙は測定器の桁のまま、と決めて書き添えておけば、2つの値は同じ測定の結果として読めます(数字は説明用の例)。

決めた6つは、客先の要求書か打ち合わせの議事録に残し、次のロットからも同じ形で出します。成績書の様式に生値の別紙を足すなら、本紙には個数・最小・最大を書き、1個ずつの値は別紙に回すと、本紙の様式を客先ごとに変えずに済みます。

生値の残し方

出す前提で生値を残すなら、次の4つを社内で決めます。

  1. 測定器から直に出る値は、そのままのファイルで保存する。ファイル名にロットと測定日を入れる。
  2. 保存した場所は、測った人が後から書き換えられないようにする。書き込みの権限を絞り、別の部署にも写しを置く。
  3. 成績書の値は、保存した生値から作る。手で写すときは、別の人が元の値と突き合わせる。
  4. 測り直した値も消さずに残し、測り直した理由を書く。

この4つは、検査データの書き換えが問題になったあとに国土交通省が免震材料の製造事業者に報告を求めた観点(生データの保存、保存した生データの保全、成績書を作る過程での書き換えの防止と点検)に沿っています。日本アルミニウム協会のガイドラインも、最初に記録した値を残すことと、手で写すときに複数の人で確かめることを勧めています。

出せない値があるとき

限界ゲージや合否だけを表示する検査機のように、数値が残らない検査には生値がありません。その項目は、生値が無いことと、代わりに出せる記録(判定の結果、ゲージの管理番号と校正の期限)を客先に伝えます。過去のロットで生値を残していなかった項目も、残っていないことをそのまま伝え、残し始めるロットを答えます。

私なら、生値を求められた最初の回に6つを1枚の取り決めにまとめ、客先の担当者に確かめてもらってから出します。

本体に測った個数と最小・最大を書き、1個ずつの値は求める客先にだけ別紙の「測定値の明細」で出す形の様式を、ものづくりポータルの検査成績書の共通様式(Excel)に置いています。

生値を出す流れ(依頼の受け取りから控えの記録、訂正が分かったときの出し直しまで)は、ものづくりハンドブックのT30 顧客へ検査の生データ(測定の生値)を求められたときの扱いにもまとめてあります。

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出典

免責:このページは、測定の生値を客先へ出すときの手引きと書式の作例です。出す範囲と形式は、客先の要求書と品質契約で確かめてください。

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この記事を書いた人

素材メーカーに勤めて10年以上。検査員から始めて、生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは品質保証の責任者です。クレーム対応と是正処置、ISO・客先・仕入先の監査、製品含有化学物質の調査回答(chemSHERPA・REACH など)、部下の教育まで担当しています。QC検定2級、ISO 9001 内部監査員。座右の銘は「ピンチはチャンス」。

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