特採(特別採用)と、不適合品の処置のガイドです。不適合品が見つかってから、止める、処置を選ぶ、顧客へ特採を依頼する、記録を残すまでを順に書きました。参照した規格の改版があれば書き直します(確認日:2026年10月22日)。
- 場面
- 工程や検査で不適合品が見つかり、直す、捨てる、そのまま使う、のどれにするかを決めるとき。顧客へ特採を依頼するかの判断にも使う
- 対象
- 製造業の不適合品の処置(出荷前に見つけた物と、出荷後に見つかった物)。ISO 9001 の8.7を骨組みにした。原因を除く是正処置は対象外
- 使うもの
- 顧客の図面・仕様書・品質協定書、社内の製造規格、検査記録、不適合の記録の様式
- 要点
- 見つけたら止めて識別し、手直し・修理・再格付け・スクラップ・特採から処置を選ぶ。社内の製造規格だけから外れた物と、顧客との取り決め規格から外れた物を分け、後者は顧客の正式な許可を取る
不適合品が見つかったら、先に止めて識別し、そのあとで処置を選びます。処置は、手直し、修理、再格付け、スクラップ、特別採用(特採)の5つです。特採は、決めた要求事項から外れた物を、限った数量・期間・用途で使う許可です。
顧客との取り決めの規格から外れた物は、顧客へ特採を依頼します。社内の製造規格から外れただけで、顧客との取り決めの規格には入っている物は、顧客への依頼は要りません。社内で処置を決め、その記録を残します。
見つけたらまず止める
JIS Q 9001:2015 の8.7.1は、要求事項に適合しないアウトプットを識別し、管理して、誤った使用や引渡しを防ぐよう求めます。引渡しのあとに見つかった物にも適用されます。
- 現品を止める。不適合の表示を付け、置き場を分けて、ほかの物と離しておく。
- 範囲を数える。同じ条件で作った在庫、仕掛品、出荷済みの数を調べる。
- 知らせる先を決める。出荷済みの物があれば、顧客へ通知する要否を決める。
- 外れた規格を確かめる。社内の製造規格から外れたのか、顧客との取り決めの規格から外れたのかを、測定値と照らして調べる。
8.7.1 は、不適合の性質と、製品・サービスの適合に与える影響に基づいて、適切な処置をとるよう求めます。外れの大きさと影響が分かってから、処置を選びます。
処置は5つから選ぶ
8.7.1 は、処理の方法に、修正、分離・散逸防止・返却・提供停止、顧客への通知、特別採用による受入の正式な許可の取得を挙げます。製造現場で選ぶ処置は、ISO 9000:2026 の用語で整理できます。
| 処置 | ISO 9000:2026 | 中身 | 作例 |
|---|---|---|---|
| 手直し | 3.6.8 | 要求事項に適合させる処置 | ばりを除き、寸法を許容内へ戻す |
| 修理 | 3.6.7 | 意図した用途に使えるようにする処置。要求事項に適合するとは限らない | 欠けた所を補修して使える形にする |
| 再格付け | 3.6.6 | 別の要求事項に適合するよう、等級を変える処置 | 外観の基準を外れた品を、基準の低い用途へ回す |
| スクラップ | 3.6.5 | 当初の用途に使えなくする処置 | 割れた部品を破砕して廃棄する |
| 特別採用 | 3.6.9 | 要求事項に適合しない物の使用やリリースを認める許可 | 外観の軽微な傷のまま出荷する許可を得る |
修理した物は、要求事項に適合するとは限りません。外れが残るなら、特別採用の許可を併せて取ることがあります。手直しや修理をしたら、要求事項への適合を検証します。
特採と逸脱許可の違い
ISO 9000:2026 の3.6.9は、特別採用を、規定要求事項に適合していない製品・サービスの使用やリリースを認めることと定めます。注記に、限られた数量・期間・特定の用途について出されるのが普通とあります。
外れを認める許可は、出す時期で呼び名が変わります。逸脱許可(3.6.10)は、製品・サービスの実現に先立ち、当初の要求事項からの逸脱を認める許可です。
| 逸脱許可 | 特別採用(特採) | |
|---|---|---|
| 出す時期 | 作る前 | 作ったあと |
| 対象 | これから作る製品 | できあがった不適合品 |
| 作例 | 材料の切り替え中の1ロットに限り、寸法の許容を広げる | 寸法が許容を外れた物を、数量と期間を限って出荷する |
書類の名前が「特採」でも、作る前の許可なら、中身は逸脱許可です。私なら、書類に、作る前か作ったあとかを1行入れて区別します。
社内の規格と顧客の規格を分ける
不適合は、要求事項を満たさないことです。要求事項の出どころは1つに限りません。JIS Q 9000:2015 の「要求事項」の定義には、顧客などの利害関係者からも、組織自身からも出るとする注記があります。製造現場の2つの規格も、決める人が違います。
| 規格 | 決める人 | 外れたときの扱い |
|---|---|---|
| 社内の製造規格(工程の管理値、社内の検査基準) | 自社 | 自社の権限で処置を決める。顧客への特採の依頼は要らない。処置の記録は残す |
| 顧客との取り決めの規格(図面、仕様書、品質協定書の値) | 顧客と自社 | 使う前に、顧客の正式な許可を取る |
社内の製造規格が顧客の規格より厳しい場合、社内の規格だけから外れた物は、顧客の要求には合っています。顧客の規格から外れた物は、顧客の要求に合っていません。
8.7.1 の d) は、特別採用による受入の正式な許可の取得を挙げますが、誰から取るかは書いていません。顧客の要求事項から外れた物は、その要求事項を決めた顧客から取る、と私は考えます。顧客の図面や品質協定書に特採の定めがあれば、それに従います。
8.7.2 は、どちらの場合も、不適合ととった処置、処置を決める権限をもつ者の記録を求めます。顧客への依頼が要らなくても、記録は省けません。
顧客へ特採を依頼する
顧客の様式があれば、それに書きます。次の表の中央は、様式に入れる中身です。右は、様式が無いときに、自社の依頼書へ入れる欄です。
| 項目 | 顧客の様式に入れる中身 | 顧客の様式が無いときに入れる欄 |
|---|---|---|
| 対象 | 品名、品番、ロット、数量 | 品名、品番、ロット番号、数量、出荷予定日 |
| 外れの内容 | 外れた特性、規格値、実測値 | 外れた特性、規格値、実測値の最小と最大、見つけた工程と日付 |
| 影響の根拠 | 使ったときの機能・安全・組付けへの影響と、その確認結果 | 影響の評価の欄と、試験や測定の結果の添付 |
| 条件 | 特採を認めてほしい数量・期間・用途 | 数量、期間、用途の欄。対象のロットを限る |
| 識別 | 特採品の表示と、ほかの物との混入の防止 | 表示の方法の欄(ラベル、荷姿) |
| 再発防止 | 原因の見立てと、是正処置の予定 | 原因の欄と、是正処置の期限の欄 |
| 承認 | 顧客の承認者の署名と日付 | 顧客の承認者、日付、自社の申請者の欄 |
外れの大きさだけを書いても、顧客は判断できません。使ったときの影響と、その根拠を添えます。依頼も承認も、書面でやり取りします。
自動車の顧客向けでは、IATF 16949:2016 の8.7.1.1が、承認されている製品や製造工程と異なるとき、さらなる処理の前に顧客の特別採用か逸脱許可を得るよう求めます。
私の職場で、顧客へ連絡せずに社内で特採を認めるのは、製造規格からは外れているが、顧客との取り決め規格には入っている場合だけです。顧客へ特採が可能かの依頼は品証から行い、当社としても規格の交渉をしたい場合は積極的に申請します。特採申請は顧客ごとに様式が異なることがほとんどです。
特採の承認と記録
8.7.2 は、次の4つを書いた文書化した情報を保持するよう求めます。
| 項目 | 書く中身(作例) |
|---|---|
| a) 不適合 | 品番、ロット、数量、外れた特性と値 |
| b) とった処置 | 手直し、特採などの別と、実施日 |
| c) 取得した特別採用 | 顧客の承認書の番号、日付、数量、期限 |
| d) 決定する権限をもつ者 | 処置を決めた人の氏名と役職 |
誰が決められるかは、手順書で先に決めておきます。そうすると、d) の欄を埋められます。
口頭の了承だけで出さない
2018年に公表された特別調査委員会の最終報告書は、規格から外れた測定値を、規格内の値へ書き換えていた事案を扱っています。厚みが上限を外れた場合の書き換えは、顧客から口頭で了承を受けていたとされますが、正式な書面は作られていませんでした。
同じ報告書には、社内で管理していた規格が誤って顧客との規格より厳しく、書き換えの対象になった値が、結果的には顧客との規格から外れていなかった事案もあります。どの規格から外れたかを確かめる手順が、書き換えの前に要ります。
- 口頭の了承だけで出さない。依頼も承認も書面で残す。
- 検査の値を規格内へ書き換えない。外れた値はそのまま記録し、処置の欄に特採を書く。
- 特採を常態にしない。同じ外れで特採が続くなら、原因を除く是正処置へ進む。
特採のあとにすること
特採は、限った数量・期間・用途の許可です。数量と期限を超えた分は、許可の外になります。出荷する特採品には特採の表示を付け、通常品と分けます。
8.7 は、見つけた不適合を処置する箇条です。原因を除く処置は10.2の是正処置にあたり、調べ方と報告書の書き方は、是正処置報告書の書き方にまとめています。
2026年版で変わる所
ISO 9001:2026 は、2026年9月16日に発行されました。全体の変更点は、ISO 9001:2026 の変更点と移行の段取りにまとめています。
8.7.2 は、CQI・IRCA の2026年6月の説明資料(最終案をもとにした解釈)によると、記録の書き出しが「保持する」から「証拠として利用可能」に変わります。確定した条文は規格票で確かめてください。
用語の規格の ISO 9000 も、2026年5月に第5版が発行され、2015年版を置き換えました。この記事の ISO 9000 の番号は2026年版のものです。JIS Q 9000 の2026年版は確認できていないので、JIS の番号は書いていません。
手元に不適合の記録の様式があれば、8.7.2 の4項目と、社内の規格から外れたのか、顧客の規格から外れたのかを分ける欄があるかを見直してください。
次に読む
特採のあとに原因を除くときの、報告書の書き方です。発生原因と流出原因を分けて書く所から読めます。

出荷した物に顧客から指摘が来たとき、原因が分かる前に出す最初の回答の書き方です。

残りのロットを何個抜いて見るかを決める手順です。特採のあとの検査の数を見直すときに使います。

出典
- ISO「ISO 9000:2026 Quality management — Fundamentals and vocabulary」(第5版・2026年5月発行。特別採用などの用語の番号と定義の入手先)
- 日本産業標準調査会(JISC)「JIS 検索」(JIS Q 9001:2015 の8.7、JIS Q 9000:2015 の定義は、ここの閲覧で確認できる)
- ISO「ISO 9001 Quality management systems — Requirements」(規格の本文の入手先)
- ISO「ISO 9001:2026 launched」(2026年9月16日)
- CQI・IRCA「ISO 9001:2026 ブリーフィングノート」(2026年6月。最終案(FDIS)をもとにした CQI の解釈で、和訳は便宜的なものと断りがある)
- 2018年に公表された特別調査委員会の最終報告書(2018年3月28日)
- IATF「IATF 16949:2016 – Sanctioned Interpretations」(2025年11月版。8.7.1.1 の本文を確認)
免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。規格の要求事項は規格票の本文で、特採の依頼の様式と承認の条件は顧客の要求で確かめてください。