是正処置の有効性を確かめて、案件を閉じるまでのガイドです。私は品質保証の仕事で、是正処置の報告を書いたり読んだりしています。規格の改版があれば書き直します(確認日:2026年10月22日)。
- 場面
- 是正処置を実施したあと、効果を確かめて案件を閉じる場面。仕入先から届いた報告の効果確認を読んで、受け取るか戻すかを決める場面にも使う
- 対象
- 是正処置の効果確認(実施した対策が、同じ原因の不具合を止めているかの確認)と、案件を閉じる条件の書き方
- 使うもの
- 是正処置報告書、改訂した手順書の版と日付、教育の記録、工程と検査の記録、不具合の件数の記録
- 要点
- 実施・定着・有効は別の証拠で確かめる。再発は同じ原因と是正処置の範囲で決める。期間は対策前の頻度から決め、不具合が出なかった結果は、何ロット見たかとあわせて読む
是正処置の効果確認は、同じ原因の不具合が止まったことを、記録で示す作業です。対策を実施した日付だけでは、止まった証拠になりません。
確認の期間を数字で定めた記述は、ISO 9001 Auditing Practices Group(APG)の手引きには見つかりませんでした。ISO 9001 の本文は有償で通読していないので、規定が無いとは言い切れません。期間は、対策前の不具合の出方から、自分で決めることになります。
効果確認に書く5項目(いつ・何で・誰が・基準・報告)は、是正処置報告書の書き方にあります。5項目を埋める前に、何を証拠にして閉じるかを決めておきます。
実施・定着・有効は別の証拠で確かめる
「対策を実施した」「現場で守られている」「同じ原因の不具合が止まった」は、別のことです。報告書では、証拠も別に用意します。
| 確かめること | 証拠にするもの | 記録の作例 |
|---|---|---|
| 実施:決めた対策を、決めた日に実施したか | 改訂した手順書の版と日付、教育の記録 | 手順書の改訂版と施行日、教育の受講者の署名 |
| 定着:現場がその手順で動いているか | 現場の運用記録(チェックシート、測定記録、巡回や監査の記録) | 追加した測定欄が、対策後の全ロットで記入されている |
| 有効:同じ原因の不具合が止まったか | 対象期間の発生の有無と、工程や出荷検査の指標 | 対象のロットで、同じ原因の不具合が出ていない |
ISO 9000:2026(第5版、2026年5月発行)は、是正処置(3.6.4)を、不適合の原因を除去し、再発を防止する処置と定義しています。有効性(3.7.17)は、計画した活動が実現され、計画した結果が達成された程度です(訳は筆者)。ISO 9001 の10.2.1 d) は、とった是正処置の有効性をレビューすることを求めています。上の3段目が、規格の言う有効性の確認にあたります。
実施の証拠がそろっても、現場がその手順で動いているとは限りません。定着の記録が無いまま不具合が出なかった場合は、対策の結果なのか、たまたま出なかっただけなのか、区別がつきません。
Bureau Veritas Japan(BV)の審査員向けコラム(2019年、二次資料)は、手順書を改訂して教育をし、現場で守られているのを見ただけで「有効」と判断する例を挙げています。そのコラムの整理では、定着の確認は有効と言うための必要条件で、それだけでは足りません。同じ不適合が再発しなかったことの確認が、最後に要ります。
再発は同じ原因と対策の範囲で決める
基準に「同じ不具合が出ない」と書くとき、「同じ」をどう決めるかが問題になります。名前が同じ不具合だけを数えると、原因が残ったまま、名前の違う不具合が出ても気づきません。
私は、再発かどうかを、不具合の名前ではなく、原因と、その原因に対する是正処置の範囲で決めるのがよいと考えています。BV のコラムにも、対象や現象が全く同じでなくても、原因とそれに対する是正処置が同じなら再発と言えるのではないか、という見方があります。決める元になる原因をどこまでたどるかは、なぜなぜ分析の進め方にあります。
APG の手引きは、不適合の原因が系統的か偶発的かを見分けているかを、審査員が確かめるよう求めています。系統的な不具合を偶発的な1度きりとして扱うと、是正処置は成功せず、再発のおそれが残ると手引きは述べています。同じ仕組みが残る限り、系統的な原因は形を変えて繰り返し出る、ということです。
| 起きたこと | 原因と対策の範囲 | 再発に数えるか |
|---|---|---|
| 治具の摩耗で、寸法Aが外れた(今回の不具合) | 原因は治具の摩耗。対策は、治具の交換基準を決めること | 基準になる不具合 |
| 同じ治具の摩耗で、寸法Bが外れた | 同じ原因で、対策の範囲に入る | 数える |
| 別の設備の調整不足で、寸法Aが外れた | 原因が違い、対策の範囲の外 | 数えず、別の案件にする |
対策の範囲を先に決めておくと、判定がぶれません。対策を入れた品番とラインを、効果確認の欄に書きます。
確認期間は対策前の頻度から決める
期間を決める出発点は、対策前に、同じ原因の不具合がどのくらいの頻度で出ていたかです。頻度は、過去の記録で、不具合が出たロット数を、見たロット数で割って出します。月に1度しか出ない不具合を1週間見ても、出ない週のほうが多いので、出なかったことは何の証拠にもなりません。
BV のコラムは、不適合が出た条件と同じ状態で、ある期間、同じ不適合が再発しなかったことを確かめればよいとしています。期間は、工程の種類、発生の頻度、発生する条件で変わります。処置の完了後3か月で判断すると一律に決める例もあり、根拠が明確ならかまわない、という整理です。
条件がそろっていないと、期間を長くしても確認になりません。特定の材料ロットや季節に偏って出ていた不具合は、その条件を含まないロットを数えても、確認にならないからです。不具合が出る条件のそろったロットだけを数えます。
日数で区切ると、生産の少ない週に不具合が出なくても、期間を満たしたことになってしまいます。効果確認の期間は、私は案件ごとにロット数で決めています。
「0件」は何ロット見たかで読む
報告書には、「14ロット中 0件」のように、見たロット数を添えます。結果が0件でも、原因が残っていることがあるからです。その起こりやすさは、式で見積もれます。
前提は2つです。ロットは互いに独立していること、原因が残っていれば毎ロット同じ割合 p で不具合が出ることです。この前提で、原因が残っているのに k ロット続けて不具合が出ない確率は、(1-p)^k と計算できます。Excel なら =(1-p)^k で出せます。
表は、原因が残っているのに、k ロット続けて不具合が出ない確率(%)を、対策前の割合ごとに並べたものです。
| 対策前の割合 p\続けて出ないロット数 k | 3 | 5 | 10 | 20 |
|---|---|---|---|---|
| 0.3(約3ロットに1度) | 34 | 17 | 3 | 1未満 |
| 0.2(5ロットに1度) | 51 | 33 | 11 | 1 |
| 0.1(10ロットに1度) | 73 | 59 | 35 | 12 |
| 0.05(20ロットに1度) | 86 | 77 | 60 | 36 |
報告書の書き方の記事にある作例は、3ロットで不具合が出なければ効果あり、という基準です。対策前に5ロットに1度出ていた不具合(p が0.2)なら、原因が残っていても、3ロット続けて出ない確率が約51%あります。半分は、対策が働いていなくても基準を通る計算です。10ロットに1度の不具合でも、20ロット続けて出ない確率が、まだ12%あります。
見るロット数を、見逃す確率から決める方法もあります。n ロット続けて不具合が出なかったとき、不具合の割合の片側95%の上限は、1-0.05^(1/n) で見積もれます。3ロットなら63%、5ロットなら45%、10ロットなら26%です。割合が10%以下と、95%の信頼で言うには、29ロット続けて出ないことが要ります。5%以下なら59ロットです。
この上限を 3÷n で近似する「3の法則」もありますが、n が小さいと外れます。5ロットでは、3÷n が60%、式で出した値が45%です。
どの数字も、合否の基準ではなく、見逃しやすさの目安です。実際の原因は、材料ロットや季節に偏って出ることがあり、独立という前提は崩れます。私は、この表を基準として使うより、「n ロット中 0件」が見逃しをどのくらい含みうるかを確かめるために使うのがよいと考えています。
有効性の確認の書き方:閉じる条件の作例
案件を閉じる条件は、結果が出る前に、効果確認の欄へ書いておきます。結果を見てから基準を決めると、基準が結果に合わされてしまうからです。対策前の割合が20%なら、14ロット続けて不具合が出ないとき、原因が残っていた場合の確率は約4%です。この見積もりでロット数を決めた作例を置きます。数字は説明のための例です。
| 書く項目 | 作例 |
|---|---|
| 対象とする再発 | 治具の摩耗が原因の不具合。寸法の名前が違っても、原因が同じなら数える |
| 対策前の頻度 | 過去6か月に、10ロット中2ロットで発生(p が0.2) |
| 見る期間と量 | 対策後に生産する14ロット。治具が摩耗する長さの運転を含める |
| 実施の証拠 | 治具の交換基準を入れた手順書の改訂版と施行日、教育の記録 |
| 定着の証拠 | 治具の交換の記録が、14ロット分そろっていること |
| 有効の基準 | 14ロット続けて、同じ原因の不具合が出ない |
| 基準に届かないとき | 1件でも出たら案件を閉じず、原因分析に戻る。結果は「14ロット中 0件」の形で客先へ報告する |
仕入先から届いた報告を読むときも、この7項目が埋まっているかで、閉じてよいかを判断できます。
いま是正処置の案件があれば、効果確認の欄に、対策前の頻度と、見るロット数を書き足してください。欄は、ものづくりポータルの是正処置報告の様式(Excel・8D のシートつき)に置いています。
次に読む
効果確認の5項目と、報告書に入れる欄の全体の書き方です。

不適合品が見つかったあとに、社内で決める物と顧客へ依頼する物を分けて、特採を進める手順です。

検査で0個なら合格とするとき、不良の混ざったロットを通す確率を、同じ式で計算する話です。

出典
- ISO「ISO 9000:2026 Quality management — Fundamentals and vocabulary」(第5版・2026年5月発行。是正処置 3.6.4 と有効性 3.7.17 の定義は、ISO のオンライン閲覧(OBP)の公開ページで確認)
- ISO「ISO 9001 Quality management systems — Requirements」(規格の本文の入手先。本文は有償)
- ISO「ISO 9001:2026 launched」(2026年9月16日)
- ISO 9001 Auditing Practices Group「Guidance on: Nonconformity – review and closing」(ISO/TC 176 と IAF が審査員向けに出した、不適合の確認と終結の手引き・第1版 2016年1月13日。ISO の承認手続きを経た文書ではないと本文に断りがある)
- Fritz Scholz「STAT 498 B Industrial Statistics」の講義資料(ワシントン大学)(二項分布の信頼限界と、不具合が0件のときの上限の式、3の法則)
- Jovanovic and Levy「A Look at the Rule of Three」(The American Statistician、1997年。3の法則の論文)
免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。規格の要求事項は規格票の本文で、効果確認の期間と基準は客先の要求で確かめてください。