社内で工程・設備・材料・人を変えるときの、変更管理の進め方のガイドです。参照した規格や資料の改版があれば書き直します(確認日:2026年10月27日)。
- 場面
- 工程条件、設備、材料、作業者を変えることが決まり、変える前に社内で何を評価し、だれが許可し、何を記録するかを決めるとき
- 対象
- 社内の変更管理の6つの段(明確化、評価、承認、文書化、実行、確認)と記録の欄。計画していない変化(人の交代、設備の修理、材料ロットの切り替え)の知らせ方も含む。客先へ出す書き方は対象外
- 使うもの
- ISO 9001:2015 の8.5.6、JSQC-Std 00-001:2023 の8.6、作業標準、QC工程表、初物確認の記録、客先の変更申請の要領
- 要点
- 変更は6つの段で進める。評価では、目的が達成されるかと、ほかに悪い影響がないかを確かめる。記録には、評価の結果、許可した人、必要な処置を残す
変更管理は、製品の仕様、設備、工程、材料・部品、作業者などを変えるとき、変更に伴う問題を未然に防ぐための一連の活動です。変更の明確化、評価、承認、文書化、実行、確認の6つの段で進めます(JSQC-Std 00-001:2023 の8.6)。
客先へ出す側は、4M変更申請書の書き方と記入例に書きました。この記事は社内の側です。変える前に評価して許可し、変えたあとに確かめる流れと、記録の欄を扱います。
社内の変更管理と客先への申請
客先への申請が要るかどうかは、客先の要領で決まります。社内の変更管理は、申請が要らない変更にも必要です。ISO 9001:2015 の8.5.6は、製造とサービス提供の変更を、要求事項への適合が続くのに必要な程度まで、レビューして管理することを要求しています。
残す記録は3つです。レビューの結果、変更を正式に許可した人、レビューから生じた必要な処置を、文書化した情報として保持します(8.5.6)。
| 区分 | 客先へは | 社内で残すもの |
|---|---|---|
| 承認を取る | 評価の資料を出し、承認が出てから変える | 申請書、承認の回答、評価の結果、許可した人 |
| 知らせるだけ | 承認は求めず、内容と時期を伝える | 知らせた日と相手、評価の結果、許可した人 |
| 社内記録 | 出さない | 評価の結果、許可した人、必要な処置 |
どの区分に当てるかは、社内の感覚で決めず、客先の要領の区分に当てて決めます。当て方と期限は、4M変更申請書の記事に書きました。
設計・開発の変更は8.3.6、品質マネジメントシステムそのものの変更は6.3で、別に決まっています。この記事が扱うのは、製造とサービス提供の変更(8.5.6)です。条文は2015年版で確かめました。2026年9月16日に第6版が発行されています(ISO 9001:2026 の変更点と移行)。本文は有償で、8.5.6 の2015年版との差は確かめていません。
何を変更として扱うか
変更は、計画した変更と、計画していない変化の2つに分けます。計画した変更は、変える前に6つの段へ乗せます。計画していない変化は、起きた日のうちに現場から品質保証へ知らせる決まりです。
| 変える物 | 計画した変更の例 | 計画していない変化の例 |
|---|---|---|
| 人 | 配置換え、新しい作業者の配属 | 休みと交代、応援 |
| 設備 | 設備の入れ替え、治工具・型の変更 | 故障と修理、型の補修 |
| 材料 | 材料・部品・購入先の変更 | 材料ロットの切り替え |
| 方法 | 工程条件、作業手順、測定方法、検査項目の変更 | 条件の微調整、手順どおりにできない日の代替 |
計画していない変化が同じ形で繰り返すときと、影響が読めないときは、品質保証が計画した変更に格上げして、6つの段で評価します。何回続いたら格上げするかは、職場で先に決めておきます。
手順の6つの段
6つの段を表にします。例は、成形機の冷却時間を18秒から15秒に縮める変更です。明確化と評価の中身は JSQC-Std 00-001:2023 の注記にあります。承認から先の例は作例です。
| 段 | 決めること | 例 |
|---|---|---|
| 1 明確化 | 対象、内容、範囲、時期 | 成形機2号機のA品番。冷却時間を18秒から15秒へ。切り替え日の最初のロットから |
| 2 評価 | 目的の達成と、ほかへの悪い影響 | サイクルは縮むか。寸法、反り、外観は変わらないか |
| 3 承認 | だれが、どこまで許可するか | 品質保証の責任者が許可する |
| 4 文書化 | 改訂する文書と版 | 成形条件票の冷却時間と版を改訂する |
| 5 実行 | 切り替えの日、対象ロット、周知 | 切り替えた日と最初のロット番号を記録する |
| 6 確認 | 変えたあとの初物と続くロット | 初物と続く3ロットで寸法と外観を見る |
評価で確かめる2つ
評価で確かめるのは、変更の目的が達成されるかと、ほかに悪い影響を与えないかの2つです(8.6の注記2)。悪い影響は、変える物ごとに探す所が違います。
| 変える物 | 悪い影響を探す所 | 確かめ方の例 |
|---|---|---|
| 人 | 手順の理解、検査の見落とし | 作業への立会い、教育の記録 |
| 設備 | 条件の再現、ほかの品番への影響 | 試作、初物、条件の記録の比較 |
| 材料 | 加工条件との相性、規格にない特性 | 現行品との並べ比較、加工して確かめる |
| 方法 | 測定値のつながり、後工程への影響 | 新旧の方法で同じ品を測って比べる |
評価の欄が「品質に影響なし」だけだと、確かめた中身が残りません。私なら、比べたもの、見た特性と数と条件、結果とデータ、評価していない範囲の4点を書きます。
承認・文書化・確認
承認は、変更の前に、だれがどこまで許可するかを決めておきます。許可した人の名前と日付は、8.5.6が求める記録です。許可の線は、変更の大きさで分けます。例は、工程条件の小さな調整が製造課長、材料と設備の変更が品質保証の責任者です。軽微かどうかの判断は、出す現場でなく品質保証に置きます。
文書化は、実行の前に、作業標準とQC工程表の該当する所を直すことです(JSQC-Std 00-001:2023 の9.3、9.4)。文書を直さずに現場だけ変えると、標準と実際が食い違います。
確認は、変えた直後の初物と、続く数ロットで行います。初物の手順と記録の欄は、初物確認の手順にあります。続く数ロットで見るのは、評価で動く可能性があるとした特性です。
記録の欄の作例
記録の欄は、8.5.6が求める3つ(レビューの結果、許可した人、必要な処置)に、変更の内容と確認の結果を足した5つにします。
| 欄 | 書くこと | 根拠 |
|---|---|---|
| 変更の内容・範囲・時期 | 対象、変更前と変更後、範囲、切り替えの日 | JSQC 8.6 注記1 |
| 評価の結果 | 目的の達成と悪い影響の確認結果、評価していない範囲 | ISO 8.5.6 |
| 許可した人 | 名前、役職、許可した日 | ISO 8.5.6 |
| 必要な処置 | 文書の改訂、教育、客先への連絡など | ISO 8.5.6 |
| 確認の結果 | 初物と続くロットの結果、確認した人と日付 | JSQC 8.6 |
根拠の列は、その欄に対応する規格の箇条です。欄の名前と並びは、職場の様式に合わせて直してください。
変化点の知らせ方
計画していない変化は、起きた日のうちに、決めた様式で品質保証へ知らせます。項目は4つです。日付と工程、何が変わったか、変化のあとに確かめた品質の結果、知らせた先を書きます。
| 項目 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 日付と工程 | いつ、どの工程か | 10月27日、成形2号機 |
| 何が変わったか | 人、設備、材料、方法のどれが、どう変わったか | 型の補修のあとに再開 |
| 確かめた結果 | 変化のあとに確かめた品質の結果 | 再開後の初物は寸法、外観とも規格内 |
| 知らせた先 | 知らせた日と相手 | 同日、品質保証の窓口 |
私の職場では、変化点(人の交代や設備の修理など)を3つの形で知らせています。変化点の連絡票やボード、朝礼や口頭、それに評価と承認の欄がある変更申請の様式です。
申告が要るか迷う変化は、現場で要否を決めずに出します。要否の判断は、受け取る品質保証が行います。
記録した変化点は、不具合が出たときに、対象範囲の始まりを決める根拠になります。範囲の決め方は、不具合の対象範囲の決め方にあります。
自動車向けの上乗せ
IATF 16949 には、変更の管理を補う8.5.6.1と、プロセス管理の暫定的変更を定める8.5.6.1.1があります。8.5.6.1の本文は有償で、読めていません。解説サイト(二次資料)は、変更の検証と妥当性確認、リスク分析の証拠、生産トライアルなどを挙げています。
8.5.6.1.1は、主要なプロセス管理と、承認されたバックアップ法又は代替法のリストを、特定し、文書化し、維持するよう求めます(IATF 公式解釈 SI 11、2025年11月版)。主要なプロセス管理ごとにバックアップを設ける要求はありません(SI 11、FAQ 17)。
主要な管理が使えなくなり、代替が決まっていないときは、リスクを考え、承認を得て、標準作業を作って実施します。元の管理に戻したら、妥当性確認をやり直します。使った代替は定期的にレビューして、工程フロー、FMEA、コントロールプランの更新に生かします(FAQ 17、2026年6月版)。私なら、代替を始めた日、戻した日、戻したあとの確認を、変化点の記録に残します。
つまずく所と防ぐ欄
| つまずく所 | 防ぐ欄 |
|---|---|
| 「品質に影響なし」だけを書く | 評価の結果に、比べたものと評価していない範囲を書く |
| 承認者が決まっていない | 許可した人の欄と、許可の線を前もって決める |
| 作業標準を直さずに変える | 文書化の段で、改訂する文書と版を書く |
| 元に戻したことを記録しない | 戻した日と、戻したあとの確認を書く |
| 変化点が品質保証に届かない | 起きた日のうちに出す様式を決める |
職場の変更申請の様式を、上の5つの欄と見比べて、欠けている欄を1つ足してください。ひな形が要るときは、ものづくりポータルの4M変更連絡票の様式(Excel)が使えます。社内で書き換えて構いません。
次に読む
変える計画を客先へ申請するかを決めるときに使います。6つの欄、申請の範囲、期限の決め方です。

変えたあとの最初の製品を確かめる手順です。6つの段の「確認」にあたります。

変更の漏れで不具合が出たときの書き方です。発生原因と流出原因を分けて書きます。

出典
- JIS Q 9001:2015「品質マネジメントシステム-要求事項」(8.5.6、8.3.6、6.3。公開された写しで確認)と、ISO 9001:2015 の英文の写し(8.5.6)
- ISO「ISO 9001」の規格ページ(第6版・2026年9月16日発行)
- 日本品質管理学会「JSQC-Std 00-001:2023 品質管理用語」(8.6 変更管理と注記1・2、9.3 QC工程図/QC工程表、9.4 作業標準。PDFの表紙は「01-001:2023」と印字)
- IATF「IATF 16949:2016 公式解釈集(日本語)」(2025年11月版。SI 11)
- IATF「IATF 16949:2016 Frequently Asked Questions」(2026年6月版・英語。FAQ 17)
- ISO/IATF SCHOOL「8.5.6.1 変更の管理-補足」(二次資料。規格本文は未確認)
- ものづくりポータル「4M変更連絡票の様式(Excel)」
免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。ただし、ISO・JSQC・IATF から引いた条文番号と内容は、資料の記載のとおりです。変更を客先へ出すかどうかと、社内の許可の線は、客先の要領と社内の手順書で確かめてください。