測定システム解析(ゲージR&R)の進め方:組み方・計算・読み方

場面
測定器を入れたとき、客先から測定システム解析の結果を求められたとき、Cp・Cpk を出す前に測定の揺れを確かめたいとき
対象
寸法など計量値の検査。部品・人・回数の組み方、平均と範囲の方法の計算、結果の読み方
使うもの
人×部品×回数の記録表、公差、客先の様式、ポータルの簡易 GR&R
要点
測定のばらつきを繰り返し性と人による差に分け、全体の変動と公差に対する割合で読む。AIAG の目安の線だけでは決めない

ゲージ R&R(GR&R)は、測定システム解析(MSA)のうち、測定のばらつきを、同じ人の測り直しの揺れ(繰り返し性)と、人による差(再現性)に分けて大きさを出す評価です。よく使う組み方は、部品10個を3人が2〜3回ずつ測る形で、結果は全体の変動と公差に対する割合で読みます。

同じ人が同じ物を測り直す繰り返し性だけの確認は、同じ人・同じ物・10回の測り方に書きました。人を増やし、部品を増やして、人による差まで分ける方法はこの記事で扱います。

目次

測定のばらつきの内訳と用語

測った値のばらつきは、部品そのものの差と、測定システム(測定器、測る人、測り方)のばらつきが合わさったものです。GR&R は後者を取り出して、内訳を見ます。

  • 繰り返し性(EV):同じ人が同じ部品を同じ測定器で測り直したときの揺れ
  • 再現性(AV):人が替わったときの、平均値の違い
観測された全体の変動 部品の差 測定のばらつき (GR&R) 繰り返し性 人による差
測定値の全体の変動は、部品の差と測定のばらつきに分かれ、測定のばらつきは繰り返し性と人による差に分かれる ※概念図(実測データではありません)

NIST/SEMATECH e-Handbook の2.4は、測定のばらつきを繰り返し性、再現性、安定性に分けています。この記事は繰り返し性と再現性を扱います。

用語は、現場と JIS で少しずれます。

JIS Z 8103 の言葉 変わる条件 GR&R では
繰返し性 なし 繰り返し性(EV)
オペレータ間再現性 人 再現性(AV)
再現性 場所・人・測定システムのすべて 扱わない

JIS Z 8103:2019 の再現性は、測定場所、人、測定システムのすべてが違う条件での精密さです(JEMIC の転載)。GR&R で変えるのは人だけなので、現場で言う再現性は、JIS の再現性より狭い意味です。

人だけが違う場合の呼び名は、中間再現性の注記にあります。オペレータが異なる再現性を「オペレータ間再現性」と呼ぶ、という注記です(JIS Z 8103:2019 の条文ページ)。「再現性」の言葉で話すときは、どちらの意味かを先に確かめます。

GR&R をやる場面

  • 測定器を新しく入れたとき、測り方や治具を変えたとき、修理や調整のあと
  • 同じ検査を複数の人がしているとき、担当が替わったとき
  • 客先から結果を求められたとき。様式と割合の分母は、客先の指定に合わせる
  • Cp・Cpk を出す前。測定のばらつきは工程のばらつきに上乗せされて見える(工程能力指数の読み方)

すべての寸法に毎回はやれません。私なら、公差が狭い寸法と、客先に値を出す寸法から始めます。

部品・人・回数の組み方

冒頭の部品、人、回数の組み合わせは、Minitab の解説が条件に挙げている数です。NIST の2.4.2は、これより低い下限を示しています。

項目 Minitab NIST 2.4.2
部品 10個以上 3個以上
人 3人以上。少なければ全員 3人以上。少なければ全員
回数 各人が各部品を2回以上 記載なし
日 記載なし 人が1人なら3日以上

部品は、工程が実際に作る幅に広がるように選びます。連続して作った部品、1シフトだけ、1ラインだけ、不良品置き場だけの選び方は避けます。部品の差が小さく見え、全体の変動に対する割合が大きく出るためです。

実際に測る人が3人に満たないときは、いる人全員で行います。人が1人だけなら、日を変えて測り、日を人の代わりの要因にする方法があります(NIST 2.4.2)。2人でも計算はできますが、人による差の見積もりは粗いです。私なら目安として扱い、人が増えたときにやり直します。

測る順番と記録の決まり

Minitab の解説は、各回の中で全員が部品を無作為の順に測り、全員が全部品を測り終えてから次の回に入る、としています。NIST の2.4.3.1も、繰り返しのたびに順番を無作為にやり直します。

前の値は測る人に見せず、書き取りは別の人がします。測るたびに測定器を外して置き直します。そろえる条件は、先の記事にまとめた6つが基本です。

記録表は人×部品×回数の形にして、上の欄に品番、測定箇所、測定器の管理番号と最小目盛り、測った日時を置きます。

計算の手順:平均と範囲の方法

計算の方法には、平均と範囲の方法と ANOVA(分散分析)があります。ANOVA は、人と部品の交互作用(人によって部品ごとの出方が違うこと)まで分けられ、AIAG の第4版(2010年)が勧める方法です(Symphony Technologies の解説)。電卓や表計算でできる平均と範囲の方法を、ここでは手順にします。

係数はSPC for Excelの表の値です。部品数を n、回数を r とします。

  1. 人×部品の組ごとに繰り返した値の範囲を出し、全組の平均 R̄ を取る。繰り返し性 EV=R̄×K1。K1 は回数で決まり、2回は 0.8862、3回は 0.5908。
  2. 人ごとに全部品・全回の平均を出し、最大と最小の差 X̄diff を取る。人による差 AV=√{(X̄diff×K2)²−EV²÷(n×r)}。K2 は人数で決まり、3人は 0.5231。ルートの中が負なら 0。
  3. GR&R の値 GRR=√(EV²+AV²)。
  4. 部品ごとに全員・全回の平均を出し、最大と最小の差 Rp を取る。部品間 PV=Rp×K3。K3 は部品数で決まり、10個は 0.3146。
  5. 全体の変動 TV=√(GRR²+PV²)。

たとえば、公差 10.00±0.08mm(公差幅 0.16mm)の軸径で、手順1〜4を終えて次の値が出たとします。

量 式 値(mm)
EV 手順1の値 0.0021
AV 手順2の値 0.0023
PV 手順4の値 0.0208
GRR √(EV²+AV²) 0.0031
TV √(GRR²+PV²) 0.0210
全体に対する割合 GRR÷TV 約15%
公差に対する割合 6×GRR÷公差幅 約12%
ndc 1.41×PV÷GRR 9

ndc は、測定システムが見分けられる区分の数です。式はSigma Zone のヘルプにあり、整数に切り捨てます。

結果の読み方

割合の分母には、全体の変動と公差があります。報告には、どちらの分母かを書きます。

  • 全体の変動に対する割合:GRR÷TV。標準偏差の比なので、EV と AV の割合を足しても、全体の割合と合いません。部品の幅が狭いと、大きく出ます。
  • 公差に対する割合:6×GRR÷公差幅。合否の判定に使う測定は、私ならこちらを先に見ます。

作例では、EV と AV がほぼ同じ大きさです。分散で比べると、およそ半分ずつで、AV のほうが少し大きくなります。AV が大きいときは、測り方の手順、治具、測る位置の指定、教育を先に見直します。

EV が大きいときは、測定器、固定のしかた、最小目盛り、置き直しの手順を見ます。人ごとの平均を並べて、特定の人だけ外れていないかも確かめます。

ndc は5以上が目安とされ、5未満だと分解能が足りない可能性があります(Minitabが AIAG の手引きとして紹介)。作例の9は、この目安を超えています。

AIAG の目安の線の扱い

AIAG の MSA の目安として、全体の変動に対する割合が10%未満なら許容、10〜30%なら用途や費用しだい、30%超なら改善、と広く引かれています(Minitab のブログ)。公差に対する割合にも同じ線を当てる解説があります。

手引き本文は有料で、この記事は二次の解説で確かめました。第4版は、この線だけでは受け入れを決められず、測る物の重要さで判断すると解説されています(Symphony)。

作例の割合は、どちらも中間の帯に入ります。私なら、合否の境目に来る部品がどれだけあるか、不良が流出したときの影響、測定器を替える費用で決めます。客先の基準や様式があれば、そちらが先です。

手持ちの様式の掛け数も確かめます。公差に対する割合は、σに掛ける数が古い版の5.15か、Minitab などの6かで、同じデータでも値が変わります(Symphony、Minitab)。

筆者の実例

私の職場では、GR&R の結果を客先に出したことがあります。

よくある失敗と防ぎ方

  • 連続して作った部品を選ぶ:部品の差が小さく、全体に対する割合が大きく出る
  • 測る人が前の値を見ている:値が寄って、繰り返し性が小さく出る
  • 同じ部品を続けて測る:置き直しの揺れが消えて、繰り返し性が小さく出る
  • 最小目盛りが粗い測定器で行う:値が数種類にしかならず、揺れが目盛りに隠れる。分解能が足りない測定器の調査からは、役に立つ情報が得られない(NIST 2.4.5.1)

割合だけを報告して、分母を書かないのも失敗のもとです。同じ値でも、全体の変動に対してか公差に対してかで、読みが変わります。

簡易 GR&R の道具でできること

ものづくりポータルの簡易 GR&R は、入力の形によって計算が変わる道具です。同じ人が同じ物を繰り返し測った値を貼ると、標準偏差と、その6倍を公差幅で割った割合が出ます。複数の人が部品を数個ずつ測った表なら、繰り返し性、人による差、両方を合わせた測定のばらつきが分かれて出ます。

後者の計算は、NIST のハンドブックにある分散成分の方法に沿っています。この記事の平均と範囲の方法や ANOVA とは別の計算です。繰り返し性は、各人・各部品の標準偏差をまとめた値です。人による差は、同じ部品を測った人どうしの平均の散らばりから、繰り返し性の分を引いて出します。人×部品の交互作用は分けず、人による差に含まれます。部品間のばらつきは使わないので、全体に対する割合と ndc は出ません。合否と、目安の線も示しません。

貼る表は人ごとに分け、行は測った回、列は部品にします。使い方は測定の繰り返し性(簡易 GR&R)のページにあります。

次に読む

同じ人・同じ物・10回で、繰り返し性だけを先に確かめる手順です。人を増やす前の第一歩になります。

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校正証明書の器差と不確かさを、許容差と比べる手順です。GR&R が見る揺れとは別に、測定器のずれを確かめます。

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測定の揺れを確かめたあとに、工程能力指数 Cp・Cpk を出して読む手順です。

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出典

免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。ただし、NIST、JIS、各解説から引いた数値は、資料の記載のとおりです。AIAG の手引き本文は確かめていません。使う様式と合否の基準は、客先の要求書と社内の手順書で確かめてください。

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この記事を書いた人

素材メーカーに勤めて10年以上。検査員から始めて、生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは品質保証の責任者です。クレーム対応と是正処置、ISO・客先・仕入先の監査、製品含有化学物質の調査回答(chemSHERPA・REACH など)、部下の教育まで担当しています。QC検定2級、ISO 9001 内部監査員。座右の銘は「ピンチはチャンス」。

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