校正証明書に書いてあること、書いていないこと、証明書の値から測定器が使えるかを決める手順のガイドです。規格やガイドの改版があれば書き直します(確認日:2026年10月22日)。
- 場面
- 校正から戻った証明書を受け取り、その測定器を使い続けてよいかを決める場面。校正を頼むときに、何を頼むかを決める場面にも使う
- 対象
- 工程や検査で使う測定器の校正証明書(JCSS 校正証明書で読み方を説明する)と、証明書の値から合否を決める手順
- 使うもの
- 校正証明書、測定器ごとの許容差、測定器の管理台帳、校正の依頼書
- 要点
- 証明書にあるのは校正の値と不確かさで、有効期限は無く、合否も必須の欄ではない。合否は使う側が許容差と比べて決め、比べ方は校正を頼む前に決める
校正証明書に書いてあるのは、基準と比べた測定器のずれ(校正の値)と、その値の不確かさです。使ってよいかの合否は、証明書の値を使う側の許容差と比べて、使う側が決めます。
記載事項は、計量法の校正事業者登録制度 JCSS の校正証明書で確かめました。JCSS 以外の証明書には、この決まりが及びません。何が書いてあるかは、手元の証明書と発行元で確かめてください。
校正の周期と、校正切れ・外れが見つかったときの遡りは、校正周期の決め方と、校正切れ・校正外れが見つかったときの遡り方に書きました。証明書の読み方と合否の決め方は、その前の段階の話です。
校正・検証・調整の違い
校正、検証、調整は別の作業で、結果に出るものも違います(経済産業省の計量標準FAQ)。
- 校正:基準とする計量器と比べて、測定器の指示値がどの程度ずれているかを確かめます。結果は、ずれの値と、その不確かさです。
- 検証:ずれが、JIS などの規定された範囲に入っているかを確かめます。結果は、通常は合格か不合格かの判定です。
- 調整:ずれが大きいときに、所定の指示値を示すよう測定器に手を入れます。結果は、手を入れたあとの状態です。
校正の定義に、合否の判定は入っていません。証明書に合否が付いていなくても、証明書の不備ではありません。証明書の値を許容差と比べる作業は、上の「検証」にあたります。
証明書に書いてあること
JCSS の校正証明書には、校正の値と測定不確かさを必ず書きます。不確かさには、包含係数 k と、信頼の水準が約95%の区間であることを添えます(JCRP21-26 の5.2.2.3)。NITE の見本証明書(ガラス製温度計)では、1ページ目に依頼者、品名、製造番号、校正項目、校正方法、校正年月日が並びます。2ページ目は、校正結果と校正条件です。受け取ったら、次の欄を確かめます。
- 品名・形式・製造番号:管理番号と突き合わせて、手元の測定器と同じ1台の証明書であること
- 校正項目・校正した点:使う範囲が、校正した点の範囲に入っていること
- 校正年月日・校正条件:証明書の値がいつの状態のものかと、温度や湿度が使う場所と大きく違わないこと
- 指示値・校正値:校正した点ごとの、ずれの大きさと向き
- 拡張不確かさ:校正値の確かさ。許容差に比べて小さいこと
- JCSS 標章・認定シンボル:国家計量標準へのトレーサビリティの証明(NITE の FAQ)
見本の校正結果は、指示値、校正値、拡張不確かさの3列です。指示値が0.00 ℃のとき、校正値は −0.04 ℃で、拡張不確かさは0.04 ℃です(NITE のリーフレット)。JIS Z 8103 の器差は、指示値から真値を引いた値で、真値の代わりに参照値を使うのが一般的です(JEMIC の情報箱に転載)。校正値を参照値とみなせば、指示値から校正値を引いた差が器差です。見本では、0.00 から −0.04 を引いた +0.04 ℃が器差で、正しい値を得るには、指示値から器差を引きます。
証明書に書いていないこと
有効期限は書いてありません。JCSS 校正証明書に有効期間はなく、再校正の時期は、使用頻度や使用環境から使う側が検討します(NITE の FAQ)。校正周期の推奨を書く場合も、顧客との合意が前提で、「次回校正は1年以内に実施しなければならない」のような書き方はできません(JCRP21-26 の5.2.2.3(11))。
合否も、必須の欄ではありません。適合性の表明は、証明書に含めてよい付随情報の1つです。付けるときは、校正結果とは区別して書き、どの仕様のどの項目に適合したかを明記します(5.2.2.3(7)、5.2.2.4)。付けてもらえるか、どの判定ルールで付けるかは、校正事業者に確かめます。
校正ラベルが貼ってあっても、合格を意味しません。ラベルは校正の状況を示すもので、測定器が製品としての品質や仕様に適合していると認証したものではありません(JCRP21-26 の用語(6))。使う側の許容差は、使う側にしか決められません。
測定器を選ぶ目安:不確かさと許容差の比
許容差と比べる前に、その許容差をこの測定器で判定できるかを見ておきます。目安として「4対1」や「10対1」の比がよく出てきますが、何を何で割った比かが書かれていないことがあります。測定の不確かさと適合性評価の指針 JCGM 106 も、こうした規則は定義があいまいなことがあると注意しています(7.6.4)。
JCGM 106 は、この比を測定能力指数 Cm として定義しています。公差の幅(上限−下限)を T、拡張不確かさ(k=2)を U とすると、Cm=T÷(2U)です(7.6.2)。許容差を ±a で書くなら T=2a なので、Cm は「許容差(片側)÷U」と同じになります。Cm が4以上とは、U が許容差(片側)の4分の1以下、公差の幅の8分の1以下という意味です(7.6.4)。式の4という数は、約95%の区間に合わせた便宜上の選び方で、理論から決まる値ではないとも書いています(7.6.3)。
| 比の目安 | 何と何の比か | 出典での扱い |
|---|---|---|
| Cm(測定能力指数) | 公差の幅 ÷(2×U)=許容差(片側)÷U | JCGM 106 の定義(7.6.2) |
| 4対1(TUR 4:1) | 許容差(片側)÷U が4以上 | JCGM 106 は Cm≧4 と同じ意味だと言い直している(7.6.4) |
| 3対1 | U が許容差の3分の1以下 | 計量器の検証(法定計量)で使われてきた例。Cm≧3 にあたる(8.2.3) |
| 10対1(分解能) | 最小表示が公差の幅を10以上に分ける | 一次資料では確かめられませんでした。Minitab の解説が AIAG の「Rule of Tens」として紹介しています(二次情報) |
下の作例の温度計(許容差 ±0.25 ℃、U=0.07 ℃)なら、0.25÷0.07≒3.6 で、4対1 には届きません。器差が許容差の内側でも、合格と言い切れない点が出やすい組み合わせです。
JCGM 106 では、比の線は当事者が合意して決めます。許容できる最大の拡張不確かさ Umax を決めておく形です(8.2.3)。比が届かないときは、ガードバンドで誤って合格とする確率を抑えるか、不確かさの小さい測定器や校正に替えます。どちらにするかは、測る物の重さと費用で決めます。JCGM 106 も、測定を良くする費用と、判定の誤りが減る分の兼ね合いで決まるとしています(9.5.6.3)。繰り返し測って平均を使うと、繰り返しの成分は s÷√m に小さくなります。最小表示による成分 d÷(2√3)は、回数を増やしても変わりません。
U を自分で見積もるときは、ものづくりポータルの測定の不確かさの見積もり(バジェット表)に、校正証明書の U と k、最小表示、繰り返し測定の値を入れると、U と許容差との比まで出ます。測る人や測る物を替えたときのばらつきも含めて見るなら、ゲージR&R の進め方で、公差に占める割合を出します。
合否は使う側が決める
手順は、許容差を決める、校正点ごとに器差を出す、器差と不確かさを許容差と比べる、の順です。許容差は、測定器の仕様、規格、客先の要求、測る物の公差から、使う側が決めます。比べ方は2通りあります。
1つは、器差の大きさだけを許容差と比べる方法で、単純受入といいます。不確かさを無いものとして扱います。もう1つは、許容差の内側に、不確かさの分だけ余裕(ガードバンド)を取る方法です。器差の大きさに拡張不確かさを足して許容差と比べることになり、ガードバンドの幅 w を不確かさ U と同じにする「w=U」がよく使われます。
Global ACI の TECH-1-002(旧 ILAC-G8)の表は、片側の仕様と正規分布を仮定したとき、偽って合格とする確率を、単純受入で50%未満、w=U で2.5%未満と示します(6.2)。不確かさを足すほど、合格と言い切れる点は減ります。不合格が返ってきた依頼者は、製品への影響を調べる必要が出ます(6.4)。
私なら、校正を頼む前に、どちらの比べ方にするかを決めて、依頼書と管理台帳に書きます。校正事業者に合否の表明を頼むときは、判定のルールを依頼者と合意するのが ISO/IEC 17025 の7.1.3 の決まりです。TECH-1-002 は、その合意を測定の前にしておくことを期待しています(3.3、5.2.3。規格の本文は有償で通読しておらず、文言は TECH-1-002 の引用で確かめました)。自分で比べるときも、結果を見てから比べ方を選ぶと、都合のよい方を選んでしまいます。
作例です。NITE の見本証明書の数値を借りて、許容差を ±0.25 ℃ と仮に置きます。許容差は筆者が置いた値で、見本の値ではありません。器差は、指示値から校正値を引いた値です。拡張不確かさは、0 ℃の点で0.04 ℃、ほかの5点で0.07 ℃と、見本の値をそのまま使います。右端の列は、器差の大きさにこの不確かさを足した値です。数値は説明のための例です。
| 指示値(℃) | 校正値(℃) | 器差(℃) | 器差の大きさ+不確かさ(℃) |
|---|---|---|---|
| 0.00 | −0.04 | +0.04 | 0.08 |
| 10.00 | 9.97 | +0.03 | 0.10 |
| 20.00 | 19.94 | +0.06 | 0.13 |
| 30.00 | 29.93 | +0.07 | 0.14 |
| 40.00 | 39.90 | +0.10 | 0.17 |
| 50.00 | 50.20 | −0.20 | 0.27(0.25 超え) |
器差だけで見ると、6点とも許容差の内側で、全点が合格です。不確かさを足すと、50 ℃ の点が0.27 ℃になり、0.25 ℃を超えます。この点の器差は −0.20 ℃で、拡張不確かさ0.07 ℃(約95%)を含めると、本当の器差は −0.27 から −0.13 ℃の間にあると読めます。−0.25 ℃より外れる可能性が残るため、この点は合格と言い切れません。ガイドの分け方では、条件つき合格にあたります(5.2.3)。
合格と言い切れない点が出たときは、使う範囲を40 ℃までに限る、証明書の校正値で補正して使う、といった扱いがあります。補正して使えば、残るのは不確かさの0.07 ℃で、許容差の内側です。補正して使うときは、補正のしかたを作業標準に書き、使う人が必ず補正する運用にします。条件つき合格を外れとして遡りの対象にするかは、先に決める項目です。
校正を頼むときの確認
校正を頼む時点で次の4つを決めておくと、証明書が届いてからの判定が止まりません。依頼先は、NITE の JCSS 登録・認定事業者検索で校正条件が合う事業者を選び、直接頼みます(NITE の FAQ)。
- 調整前の値と調整後の値を、分けて出してもらう。調整前は as found、調整後は as left と呼ばれます(NIST の SOP 26)。調整後の値は、調整したあとの状態を示すだけです。使っていた間にどれだけずれていたかは、調整前の値でしか分かりません。NIST は、再校正の報告に調整前(as submitted)と校正後(post calibration)の両方のデータを入れて、周期の確認と見直しに使うよう書いています(推奨校正間隔のページ)。
- 調整してよいかを書く。校正と調整は別の作業なので、ずれが大きかったときに、調整してよいか、先に連絡がほしいかを決めておきます。
- 合否が要るかと、判定のルールを書く。要るなら、どの仕様(許容差)のどの項目かと、単純受入か w=U かを、校正の前に合意します。
- 校正する点と不確かさを確かめる。使う範囲と、許容差に近い点が校正点に入っているか。不確かさが許容差に対して大きいと、器差が小さくても合格と言い切れなくなります。見積りの段階で事業者に聞きます。
証明書が届いたら、台帳の許容差と器差(調整前)の欄に、証明書の値を書き写します。不確かさを足して判定するときは、器差の大きさに不確かさを足した値と、使った比べ方を、証明書の控えに書き添えてください。台帳は、ものづくりポータルの測定器の管理台帳(校正の期限と遡りの記録・Excel)に置いています。
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校正の周期の決め方と、校正切れや外れが見つかったときの遡り方です。証明書の合否を決めたあとの話になります。

校正の結果が示すのは測定器のずれで、同じ物を測ったときの揺れは別に確かめます。同じ人・同じ物・10回で、揺れの大きさを見る手順です。

出典
- 経済産業省「計量標準FAQ(全般)」(A-4-1 Q1。校正・検証・調整の定義)
- NITE「JCRP21 JCSS 登録及び認定の一般要求事項」(第26版・2026年10月7日改正。5.2.2.3、5.2.2.4、用語(6)の校正ラベル)
- NITE 認定センター「JCSS よくあるお問い合わせ(FAQ)」(校正証明書の有効期間、JCSS 標章とトレーサビリティ、校正事業者の探し方)
- NITE「JCSS校正証明書は計量トレーサビリティの証です」(リーフレット・Ver.202003。ガラス製温度計の見本の証明書)
- Global ACI「ACI-TECH-1-002 Guidelines on Decision Rules and Statements of Conformity」(第1.0版・2026年6月26日。ILAC-G8:09/2019 を内容を変えずに移した文書。3.3、5.2.3、6.2、6.4)
- JCGM「JCGM 106:2012 Evaluation of measurement data – The role of measurement uncertainty in conformity assessment」(2012年10月・BIPM が公開。7.6.2〜7.6.4 の測定能力指数 Cm、8.2.3 の最大許容不確かさと法定計量の例、9.5.6.3 の費用の考え方。2026年11月7日に確認)
- Minitab「What is gage tolerance (gage resolution)?」(二次情報。AIAG の「Rule of Tens」の紹介。AIAG の MSA の本文は有償で、確かめていません)
- JEMIC「情報箱」(JIS Z 8103 から転載された、器差と許容差の定義)
- NIST「Recommended Calibration Interval」(再校正の報告に入れる調整前・校正後のデータ)
- NIST「SOP 26 Gravimetric Calibration of Dynamic Volumetric Systems」(NISTIR 7383-2019。as found と as left の使い方)
- ISO「ISO/IEC 17025:2017」(現行版の確認先。本文は有償)
免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。許容差の値、判定のルール、校正の依頼内容は、客先の要求と社内の手順書、校正事業者との合意で確かめてください。ISO/IEC 17025 の本文は有償のため、通読していません。