なぜなぜ分析で不適合の原因をたどる手順のガイドです。参照した資料の改版があれば書き直します(確認日:2026年11月4日)。
- 場面
- 不適合や客先クレームの原因を、なぜなぜ分析でたどる場面。事象の書き方、枝分かれ、止める所、対策の強さを決める場面
- 対象
- 製造業の品質保証・生産技術の担当者。原因のたどり方までを扱う。報告書への書き方、横展開の範囲、効果の確認は別の記事に任せる
- 使うもの
- 不適合の事実の記録(品番・ロット・見つけた場所)、現物、作業と検査の記録、手順書、作業者への聞き取り
- 要点
- 事象は事実だけの1文にし、原因の候補は枝分かれさせて現物と記録で確かめる。「不注意」「確認不足」で止めず、手順・資料・設備・環境と、それを保つ管理までたどる。止める所は自社で変えられる所。対策には、教育のほかに手順や設備を変える手を入れる
なぜなぜ分析は、起きた事象に「なぜ」を重ねて、原因をたどる手法です。事象は事実だけの1文に決め、原因の候補は枝分かれさせて現物と記録で確かめます。「作業者の不注意」「確認不足」で止めずに、手順、資料、設備、環境のどこに、ミスを起こした条件があったかまで進めます。
止める所は、自社で変えられる条件と、それを保つ管理の仕組みです。対策には、教育や注意喚起のほかに、手順や設備を変える手を1つ以上入れます。なぜなぜ分析は規格が決めた方法ではないので、分析の質は進め方で決まります。
規格は方法を決めていない
JIS Q 9001:2015 の 10.2.1 b) は、不適合が再発や他のところで発生しないよう、原因を除去する処置の必要性を評価することを求めています。評価の中身は、不適合のレビューと分析、原因の明確化、類似の不適合の有無の確認です。条文に、なぜなぜ分析という名前は出てきません。
自動車向けの IATF 16949:2016 の 10.2.3 は、再発を防止する問題解決の文書化したプロセスに、根本原因分析、用いた方法、分析、結果を含めるよう求めています(c項)。顧客が問題解決の具体的な方法を規定している場合は、顧客の別の承認がなければ、その方法を用います。
JSQC-Std 00-001 の問題解決(7.5)は、問題に対して、原因を特定し、対策し、確認する一連の活動です。なぜなぜ分析は、その最初の段、原因の特定の道具です。
方法を選ぶのは組織で、客先に指定があればそれに従います。私の職場では、なぜなぜ分析を、客先クレームの是正処置、社内不良の再発防止、監査指摘への回答、QCサークルや改善活動で使っています。
事象を1文で決める
分析は、事象の文から始まります。この文に原因や評価が入ると、「なぜ」を重ねる前に、答えが決まったのと同じです。対象、見つけた場所、外れの中身だけを、事実で書きます。この記事の例は、すべて架空で、数量は入れていません。
| 書き方 | 事象の文(架空) | 直す点 |
|---|---|---|
| 原因が入っている | 作業者の確認ミスで、寸法の外れた部品が客先に出た | 「確認ミス」は分析で出す答えです。事象の文から外します |
| 評価が入っている | 検査が甘く、不良が流出した | 「甘い」は評価です。何が、どこで、どうなったかに直します |
| 事実だけ | 寸法が公差の外にある部品が、客先の受入検査で見つかった | 対象、見つけた場所、外れの中身が入っています |
事象の文は、対策を必要とする事実として置きます(IPA の障害分析手法 2.1.1。IT分野の資料です)。ADB の Serrat は、なぜなぜ分析を効果的に使う3つの要素の1つに、問題の正確で完全な記述を数えています。事象が2つ以上あるときは、事象ごとに別の分析にします。
枝分かれさせて事実で確かめる
最初の「なぜ」には、答えがいくつか出ます。もっともらしい答えを全部書き出し、それぞれに次の「なぜ」を続けると、図は木の形になります(Serrat 2009 の手順)。
枝の先は、まだ原因ではありません。JSQC-Std 00-001:2023 の用語では、現象を引き起こす可能性のあるものが要因(7.1)で、そのうち、引き起こしていると特定されたものが原因(7.2)です。特定には事実が要るので、次の「なぜ」へ進む前に、その答えを現物か記録で確かめます(Serrat 2009)。確かめられない枝は「確認できない」のままにします。確認の状態の分け方は、是正処置報告書の書き方が詳しいです。
確かめ方の土台は、三現主義(7.9)です。現場で、現物を見ながら、現実的に検討を進める考え方です。
| 確かめ方 | 確かめること | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 現物を見る | 不良品、型、治具、測定器の状態 | 同じ状態の現物が残っているうちに見る |
| 記録を確かめる | 加工条件、検査記録、設備の点検記録、変更の履歴 | 記録と現物が合っているかも見る |
| 作業者に聞く | 実際の手順、手順書と違うやり方、迷った所 | 責める聞き方をしない |
私の職場で、原因を決める前に使う確かめ方は、現物を見る、記録を確かめる、作業者に聞く、の3つです。
聞くときの前提は、個人を責めないことです。IPA の資料(IT分野)は、分析の目的を、個人を責めることでなく、原因を究明して組織として再発防止策を検討することだと明記しています。
枝がそろったら、一番先の原因から事象へ向かって、「だから」でつないで読み返します。例なら、「段取り替えの手順書を見直す決まりがない。だから、設定値を確かめる手順が足されなかった。だから、設定値が入れ直されなかった。だから、寸法の外れた部品ができた」の順に読みます。つながらない所が、間に抜けた段のある論理の飛躍です。
枝を出し切ったか迷うときは、特性要因図を使います。JSQC の用語は、特性要因図を、原因についての仮説を議論するツールとしています(17.3 注記1)。図に出た要因は仮説なので、1本ずつ事実で確かめます。
確かめられない枝や、今回は分析から外す枝は、理由と一緒に前提条件として記録に残します。IPA の資料の例(IT分野)にも、会議に参加できなかった人に強く関係する原因を、今回の分析対象から外すと前提条件に書いた図があります。
「不注意」で止めずに条件を問う
「確認不足」「忘れた」は人の行動で、「不注意」は本人の注意力にあたります。JSQC-Std 62-001:2024 は、うっかり忘れた、取り違えたなどの意図しないエラーを、人の不適切な行動に含めています(3.6)。
この行動に直接影響を与える条件が、局所要因です。本人の注意力・意識・知識・スキルのほかに、業務の手順、資料・情報、設備・機器・材料、環境、周りの人の行動が含まれます(3.7 注記1)。
注意力は条件の1つです。そこで止めると、手順、資料、設備、環境、周りの人の行動のどこに条件があったかが、分析から抜けます。局所要因を適切な状態に保つマネジメントの状態が、組織要因です(3.8)。組織要因は、根本原因と呼ばれる場合もあります(3.8 注記2)。
| 層 | 問い | 例(架空) |
|---|---|---|
| 人の行動 | 何をした、または何をしなかったか | 段取り替えのあとに、前の品番の設定値を入れ直さなかった |
| 局所要因 | その行動に直接影響した条件は何か。注意力のほか、手順、資料、設備、環境、周りの人の行動 | 手順書に、設定値を確かめる手順がない。確認欄のある記録票もない |
| 組織要因 | その条件を適切に保つ管理が、どうなっていたか | 品番が増えたとき、段取り替えの手順書を見直す決まりがない |
表の最後の行は、JSQC-Std 00-001 が根本原因(6.8)の例に挙げる「決めていない」にあたります。6.8 の注記2は、再発防止では根本原因にまでさかのぼって処置をとることが大切だとしています。原因の欄の最後の行が人の行動のままなら、分析は途中です。「なぜ」を1段足して、その行動に直接影響した条件を問います。
JSQC-Std 62-001 の実施手順(5.3〜5.8)の目次も、同じ向きです。人の行動と物理的な事象の整理、着目する人の行動の特定、局所要因の分析、組織要因の分析、対策の検討、対策の実施と効果の確認の順です。公開の試し読み版には各手順の中身が入っていないので、詳しくは全文で確かめてください。
原因が「人の不注意」や「確認不足」で止まっていたことに、人の報告書を見て気づきました。客先から指摘されたこともあります。
止める所は自社で変えられる所
止める所の基準は、対策すれば同じ原因での再発が止まる所で、かつ自社で手を打てる所です。IPA の資料(IT分野)では、根本原因は、対策すれば問題が再発しなくなる原因のことです。JSQC-Std 00-001 の自責(6.12)は、問題が、自分または自部門が責任と権限をもつプロセスに起因することを指します。Serrat は、問題が起きると他人や外部の出来事のせいにしたくなるが、根本原因はたいてい身近にあると述べています。
止める前に、次の3点を確かめます。
- その原因を直す手が、自社か自部門で打てる(自責、6.12)
- その手を打てば、同じ原因での再発が止まると言える
- 原因を反転して出した対策が、費用と人手に見合う。見合う対策が出ないときは、分析をやり直す(IPA 2.1.2)
原因が仕入先や客先にあると分かったときも、私なら、自社の受入検査、仕入先への要求の出し方、変更の連絡の取り決めに、変えられる条件がないかを問います。
発生原因と流出原因は別の流れ
不適合には、2つの問いがあります。なぜ起きたか(発生)と、なぜ出荷前の検査や確認で止まらなかったか(流出)です。同じ事象でも、たどる流れは別になります。
| 流れ | 問い | 例(架空) |
|---|---|---|
| 発生 | なぜ寸法の外れた部品ができたか | 前の節の流れ。設定値を確かめる手順がなく、手順書を見直す決まりもない |
| 流出 | なぜ出荷前の検査で止まらなかったか | 出荷検査の項目に、その寸法が入っていない。項目は旧品番の表を写して作り、図面とつき合わせていない |
私の職場で発生原因と流出原因を分けて書く場面は、求められたときだけです。それでも、分けて掘ることを勧めます。IPA の資料(IT分野)にも、原因の欄を「障害が起きた原因」と「障害復旧が失敗した原因」の2点に絞る例があります。製造での分け方と理由は、是正処置報告書の書き方が詳しいです。
対策は人に頼らない手から選ぶ
原因ごとに、対策を1つ以上考えます。医療安全の IHI の資料(RCA2)の指針は、特定した原因のそれぞれに、強い手か中間の手を少なくとも1つ入れることです。教育や方針の変更は必要な手ですが、単独では持続した改善につながる見込みが小さいとされます。
同じ資料の例は、入浴中に患者が椅子から滑り落ちた事故です。滑り落ちを防ぐベルトの付いた椅子が強い手、転倒のリスクのある患者への職員の追加が中間の手、職員への手順の再教育が弱い手に挙がっています。
分野は医療ですが、製造でも、教育だけを対策にすると、人の注意に頼る形のままです。前の節の例なら、設定値を確かめる手順を手順書に足し、確認欄のある記録票を使う手があります。品番を替えると、違う設定値では加工が始まらない設備にする手もあります。私の職場でいちばん長く続いたのは、工程や手順を変える対策です。
対策を入れたあとの確かめ方は、是正処置の有効性の確認が詳しいです。
分析の結果は人で変わる
同じ事象でも、分析する人で結果が変わるのが、この手法の弱点です。JSQC-Std 62-001:2024 の第4章は、なぜなぜ分析を、原因調査でよく使われる手法としています。ただし自由度が大きいので、人間信頼性工学やマネジメントの知識と経験が十分でないと、表層的な分析に留まります。論理の飛躍が多い分析にもなる、という指摘です。
Serrat は、この手法への批判として、3つを挙げています。症状で止まること、手元の情報や知識の外に考えが及ばないこと、チームごとに別の原因が出ることです。Card(BMJ Quality & Safety、2017。医療分野)の指摘は、因果の道筋が1本に絞られること、根本原因が1つと決めてかかること、最も遠い原因が対策に最適だと前提されることです。同じ事故でも、チームごとに別の妥当な道筋が出る例が載っています。
5回という回数は目安で、決まりではありません(Serrat 2009)。少なくても多くても構いません。止める所は回数でなく、前の節の基準で決めます。私なら、分析を1人で閉じず、当事者と別の部署の人に見せて、「だから」の読み返しが最後までつながるかを確かめます(Serrat の手順にも、分析のあとで他の人に示し、論理を確認する段があります)。
手元の1件で確かめる4点
直近の是正処置報告書を1件開き、次の4点を確かめます。
- 原因の欄の最後の1行が、忘れた、見落とした、のような人の行動で終わっていない
- 原因ごとに、現物か記録で確かめた根拠が書いてある
- 発生原因と流出原因が、別々の流れで書いてある
- 対策に、教育や注意喚起のほかに、手順や設備を変える手が1つ以上ある
人の行動で終わっている行があれば、その下に「なぜ」を1段足し、手順、資料、設備、環境、周りの人の行動のどれに条件があったかを書きます。条件が見つかったら、それを保つ管理(決まりの有無、見直しの機会)まで、もう1段進めます。
原因と根拠を書く欄は、ものづくりポータルで配っている是正処置報告の様式(Excel・8D のシートつき)にあります。発生原因と流出原因を分け、考えられる要因を「確認できない」「可能性あり」「確認済み」に分ける表がついています。客先の指定の様式があれば、そちらに従ってください。
次に読む
分析で出た原因を、発生原因と流出原因に分けて、根拠つきで報告書に書く型と、差し戻される所です。

原因が分かったあと、同じ原因が起こりうるほかの工程や製品へ、どこまで広げるかの決め方です。

対策を入れたあと、実施・定着・有効の3段で確かめる方法と、再発を数える基準の決め方です。

出典
- 日本規格協会「JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」10.2.1 b)(規格票の原本は開いていない。条文は全文を写した解説で照合した)
- IATF「IATF 16949:2016 公式解釈集」の SI 20(10.2.3 問題解決法の文面で確認した。IATF 16949:2016 本体は開いていない)
- 日本品質管理学会「JSQC-Std 00-001:2023 品質管理用語」(6.8 根本原因、6.12 自責、7.1 要因、7.2 原因、7.5 問題解決、7.9 三現主義、17.3 特性要因図)
- 日本品質管理学会「JSQC-Std 62-001:2024 根本原因分析(RCA)の指針」(3.6 人の不適切な行動、3.7 局所要因、3.8 組織要因、第4章冒頭、5.3〜5.8 の項名。公開の試し読み版の文面で確認した。全文は開いていない)
- 情報処理推進機構「情報処理システム高信頼化教訓集(ITサービス編)別冊Ⅱ 障害分析手法」(2020年3月16日改訂。2.1.1、2.1.2、図2-1、参考1.3。IT分野の資料)
- Serrat O.「The Five Whys Technique」ADB Knowledge Solutions 30(2009年2月)(開発金融の分野の資料)
- Card AJ.「The problem with ‘5 whys’」BMJ Quality & Safety 2017;26(8):671(医療分野)
- Institute for Healthcare Improvement「Patient Safety Essentials Toolkit: Action Hierarchy (part of RCA2)」(2019年。医療分野)
- ものづくりポータル「是正処置報告の様式(Excel・8D のシートつき)」(原因の欄の構成。この記事の表は説明用の作例で、規格の根拠ではない)
免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。ただし、JIS Q 9001、IATF 16949、JSQC-Std から引いた条文の番号と文言は、資料の記載のとおりです。規格の文面は、原本で確かめてください。原因分析の方法と対策は、客先の要求書と社内の手順書で確かめてください。