管理図の判定ルール:7・8・9点の違いと使い分け、誤報の増え方

管理図の判定ルールをまとめたガイドです。参照した資料の改版があれば書き直します(確認日:2026年10月26日)。

場面
管理図に使う判定ルールを決めるとき、または資料ごとの点数の違いに迷ったとき
対象
シューハート管理図で点の並びを見るルール(同じ側に続く点、一方向に動く点、交互に上下する点、2σ・1σの外の点)。小さなずれ向けの管理図は、あるという案内だけ
使うもの
JIS Z 9020-2:2016 の図3と附属書B、NIST/SEMATECH e-Handbook の6.3.2、客先の要求書、社内の手順書、管理図の記録欄
要点
同じ側に続く点は、図3が7点、NIST が8点、附属書Bが9点。ルールを足すと誤報が増えるので、工程の状態に合わせて選び、使ったルールを記録に書く

管理図の点の並びを見るルールは、同じ種類でも点数が資料で違います。中心線の同じ側に点が続くルールは、JIS Z 9020-2:2016 の図3では7点、同じ JIS の附属書Bでは9点、米国の NIST(国立標準技術研究所)のハンドブックでは8点です。

管理図の種類の選び方、管理限界の引き方、2つの段階、I-MR を使う前の確認は、管理図の選び方と読み方に書きました。この記事は、並びのルールだけを扱います。

目次

3つの資料の点数を並べる

並びのルールは、中心線の両側をゾーン A・B・C に分けて見ます。各ゾーンの幅は1σで、中心線に近い側から C、B、A です(JIS Z 9020-2:2016 の8)。Aの外側が管理限界です。

見る並び JIS 図3 JIS 附属書B NIST 6.3.2
限界の外 ルール1 ルール1 3σの外の1点
同じ側に続く点 ルール2:7以上 ルール2:9 8
一方向に動く点 ルール3:7 ルール3:6 6
交互に上下する点 なし ルール4:14 14
同じ側の2σの外(3点中2点) なし ルール5 あり
同じ側の1σの外(5点中4点) なし ルール6 あり
Cの中に集まる点 なし ルール7:15 なし
両側でCに点がない なし ルール8:8 なし

数字は、続く点の数です。「なし」は、その資料に同じ種類のルールが載っていないことを示します。図3のルール4は点数の指定がなく、Cに入る点が約2/3より大幅に少ないときに、不規則でない並びを疑う形です。

NIST の6.3.2で Western Electric(WECO)のルールにあたるのは、限界の外、2σの外、1σの外、同じ側に続く点の4つです。一方向に動く点と交互に上下する点は、傾向のルールとして別に挙がっています。JIS の附属書Bの図B.1は、ウェスタン・エレクトリック社のルールとして知られる8つを載せています。

同じ並びでも、警報が出る点が違います。中心線の同じ側に9点続く並びでは、図3は7点目、NIST は8点目、附属書Bは9点目で警報を出します。

管理限界(3σ) A B C 中心線 1 2 3 4 5 6 7 8 9 7点目:JIS 図3のルール2 8点目:NIST の8点のルール 9点目:JIS 附属書Bのルール2
中心線の同じ側に9点続いたときに警報が出る点:図3は7点目、NIST は8点目、附属書Bは9点目 ※概念図(実測データではありません)

同じ並びなら、図3のルールは附属書Bのルールより2点早く警報を出します。早く気づける代わりに、工程が変わっていなくても警報が出る回数は増えます。

ルールを足すと誤報が増える

誤報は、工程が変わっていないのに出る警報です。JIS の言葉では、第1種の過誤にあたります。管理限界の外だけで見ても誤報は出て、ルールを足すと、その回数が増えます(JIS Z 9020-2:2016 の8と13.3)。

ルールの組み合わせ NIST:何点に1回 JIS:1,000点あたり何回 検算:何点に1回
管理限界の外だけ 371 約3 約370
図3のルール1〜3 なし 約10 約93
NIST の WECO(4つ) 91.75 なし 約92
ルール1+同じ側7点 なし なし 約96
ルール1+同じ側8点 なし なし 約153
ルール1+同じ側9点 なし なし 約217
附属書Bの8つすべて なし なし 約73

NIST と JIS の数字は、資料にある値です。検算(独立・正規・中心線と σ は既知と仮定)は、警報が出たら点の履歴を空にして数え直した結果で、NIST の91.75と JIS の約10に近い値です。実際の管理図は管理限界を測定値から決めるので、数字は変わります(NIST 6.3.2)。

同じ側に続く点を7点にするか9点にするかで、誤報の回数は2倍以上違います(検算)。毎日打つ管理図なら、約3か月に1回と約7か月に1回の差です。

使うルールの決め方

JIS Z 9020-2:2016 の附属書Bは、図3のルールを、規定ではなく指針として使うよう勧めます。ルールは、工程のいつもの状態に合わせて決めます。

JIS が挙げる例は、半導体製造工程の酸化工程です。気圧の影響を受けて管理図に連(同じ側に続く点)が現れやすく、それは異常でなく、いつもの正常な状態とされます。

初期流動期と量産流動期でも、使うルールは変わります(附属書B)。

  • 初期流動期:工程を安定させて、変動を減らす段階です。複数のルールを使い、突き止められる原因を積極的に探します。誤報が増えても、探索的なデータ解析とみなします。
  • 量産流動期:工程を管理状態に保つ段階です。非常に小さな誤報の確率が要求されるので、複数のルールの同時使用は避けるのが望ましいとされます。

量産に入ってからも、小さな変化や傾向が想定できる特性には、補足のルールが役立ちます。附属書Bの例は、ルール1に、ウェスタン・エレクトリック社のルール5(図B.1では3点中2点)を足す形です。

補足のルールを足すと、誤報の確率は増えます(JIS Z 9020-2:2016 の13.3)。標準値を与えない管理図を初期流動期に使うときは、補足のルールの併用が望ましいとされます。

NIST は、WECO のルールを足しながら、その警報に調べる手間をかけすぎない使い方を紹介しています。足したルールの警報を、管理限界の外の点と同じ重さで扱うかどうかも、決めておく項目です。

私なら、量産中の特性はルール1を基本にして、補足のルールは1つまでにします。足すのは、ずれの向きや大きさに心当たりがある特性だけです。初期流動期は、複数のルールで原因を探します。

筆者の実例

私の職場では、管理図の判定を管理限界の外の点だけで行っています。

数える管理図の下側のゾーン

p、np、c、u の管理図で管理下限を0に設定すると、中心線より下に1σのゾーンを3つ作れません(JIS Z 9020-2:2016 の8の注記2)。

ゾーンを使うルールは、下側では作れません。ゾーンを使わない、同じ側に続く点のルールは、下側にも当てはまります。どちらも筆者の読みです。

数える特性は、分布が偏ることがあります。NIST 6.3.1 の例では、ポアソン分布で np が0.8のとき、3σの上側の限界を偶然に超える確率は0.001から0.009に上がります。正規分布で出した誤報の数字は、そのまま当てはまりません。

小さなずれは別の管理図で

シューハートの X̄ 管理図は、平均のずれが標準偏差の1.5倍以下だと、うまくは機能しません(JIS Z 9020-2:2016 の13.3)。

補足のルールを足す手のほかに、指数型重み付き移動平均(EWMA)管理図と累積和管理図があります。作り方と読み方は、この記事の範囲の外です。

使ったルールを記録に残す

ルールの点数は資料で違うので、管理図の記録欄には、使った資料とルールを書いておきます。書く項目の例は、次のとおりです。

  • 使った資料と版(例:JIS Z 9020-2:2016 の図3)
  • 使ったルールと点数(例:ルール1とルール2の7点)
  • そのルールを選んだ理由(初期流動期か量産流動期か、客先の指定か)
  • 警報が出た日、そのルール、原因と処置

ルールに当てはまる並びが出たら、突き止められる原因を診断して、是正します(JIS Z 9020-2:2016 の8)。客先の要求書や社内の手順書に決まりがあれば、それに合わせます。

ルールを途中で変えたときは、変えた日も記録に書きます。変える前後の点を、同じ基準で比べられなくなるからです。

ものづくりポータルのX̄-R 管理図の作成、I-MR 管理図の作成、数える値の管理図(p・np)は、管理限界の外の点を示します。並びのルールの判定は出ないので、図を見て点を数えます。数えたルールと点数は、上の項目に沿って記録欄に書き足してください。

次に読む

管理図の種類の選び方、管理限界の引き方、2つの段階の使い分けです。この記事の前提にあたります。

あわせて読みたい
管理図の選び方と読み方:X̄-R・I-MR を軸に、p・np・c・u の選び方まで 管理図の選び方を、データの取り方(群で測る・1個ずつ測る・数える)から決める手順。X̄-R・I-MR・p・np・c・u の式、管理限界と規格の違い、判定の規則の点数(NIST と JIS の違い)、管理限界を決める2つの段階をまとめました。

管理図で安定を確かめたあとに、規格に対する余裕を数える手順です。

あわせて読みたい
工程能力指数 Cp・Cpk:1.33で出しても、客先は1.67を求めることがある 工程能力指数 Cp・Cpk の式と読み方。1.33 や 1.67 などの基準値は客先の要求書が先で、1.33 で出しても足りないことがあります。平均が規格の中心なら、1.66 で規格外は約0.6ppm。データ数による揺れも。

段取り替えや始業のあとに最初の製品を確かめる手順です。警報の原因を、段取りの記録と照らすときに使います。

あわせて読みたい
初物確認の手順:忙しい日ほど後回しになり、確認前の品が量産に混じる 初物確認の手順を、確かめるきっかけ・確かめる人・何を確かめるか・記録の欄に分けて整理。忙しい日ほど確認が後回しになり、確認前の品が量産に混じります。新規品の初物管理は最後の節で分けました。

出典

免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。ただし、JIS と NIST から引いた点数と回数は、資料の記載のとおりです。使うルールは、客先の要求書と社内の手順書で確かめてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

素材メーカーに勤めて10年以上。検査員から始めて、生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは品質保証の責任者です。クレーム対応と是正処置、ISO・客先・仕入先の監査、製品含有化学物質の調査回答(chemSHERPA・REACH など)、部下の教育まで担当しています。QC検定2級、ISO 9001 内部監査員。座右の銘は「ピンチはチャンス」。

目次