検針機が止まりすぎるときの切り分け:感度を下げる前に停止位置とテストピースを数える

この記事は、よくある場面をもとにした事例です(2026年9月に事例として書き直し、10月と11月に節を足しました)。

場面
縫製ラインの検針機が週に40回ほど止まり、班長から「感度を1つ下げてほしい」と頼まれた
対象
ベルト式の検針機1台と、そこを通る1品番
使うもの
停止の記録用紙(回数・位置・再通しの向きと結果)、鉄球のテストピース2種、検針機の台帳、メーカー点検の依頼
要点
感度を下げる前に、止まった位置とテストピースの抜けを1週間数え、変えたときは日付と理由を台帳に残す

検針機の停止が多いときは、感度のつまみを回す前に、止まったときの製品の位置と、テストピースを左端・中央・右端に通した結果を1週間数える。停止が片側に偏り、同じ側でテストピースがときどき抜けるなら、空運転と製品側を除いたうえで、ヘッドの不調の可能性を疑う。

感度を下げれば停止は減る。ただ、減った分が余計な鳴りなのか本物の異物なのかは、あとから分けられない。

目次

感度を下げたくなる場面

たとえば縫製ラインの出口に、ベルト式の検針機が1台ある。止まるたびに担当者が製品を取り上げて通し直し(再通し)、2回目に鳴らなければそのまま流す。ただし、針は入る向きで反応が変わるので、2回目は向きを90度変えて通し、鳴らなくても異物が無かった証明にはしない。止まるたびに班長が持ち場を離れて立ち会うので、1回あたり2分半ほどの手が止まる。

毎朝のテストピース照合は何年も合格している。機械は見つける力では合格で、問題は余計に鳴ることだけに見える。客先の検針基準は鉄球1.2ミリ、社内基準は1段厳しい1.0ミリで、いまの感度は1.0ミリを毎朝拾える値として決めてある。この径は例で、実際の基準は客先ごとに違う。

この状態で感度を1つ下げると、客先の基準は守れても、社内基準の1.0ミリを取りこぼすかどうかが分からない。回す前に、何が起きているかを数える。

記録を始める前に、空運転で止まるかを見る

停止の記録を始める前に、製品を乗せずにベルトを回して、止まるかどうかを見る。製品なしで止まるなら、原因は製品より手前にある。出方ごとに、疑うものと次の手を並べる。

空運転での出方 疑うもの 次の手
一周ごとに同じ位置のランプが点く。ベルトの同じところで止まる ベルトの表裏に付いた鉄粉 止まる位置に水性ペンで印を付けて数回確かめ、印の位置をベルトの表裏ともよく探して取る。見つからなければ、湿らせた布で拭く
運転スイッチを切って電源だけ入れても、モニターの赤ランプが点く 外部ノイズ 夜間や周りの機械を止めた状態で検針機だけ動かす。出なければ、周りの機械を1台ずつ動かして原因を絞る
仕様の感度で機械の周りを歩くと、レベル表示が全点灯してブザーが鳴る 床の振動 アジャスターボルトを全箇所固定する。床が弱ければボルトの下に板を敷く(ハシマの例は20cm角)。補強工事が要ることもある
検出レベルのランプが2/3以上点灯したままになる 検出ヘッドのトンネル上部に吸着した針やホッチキスの針 調べて取り除く。腕時計や磁気カードも外して確かめる

ベルトが止まらずランプだけ点くときは、サンコウ電子研究所の取扱説明書の手順で、感度をベルトが必ず止まる値まで一時的に上げて、位置を確かめる。目盛を動かす作業なので、元の値を班長の前で確かめてから動かし、終わったら戻す。

検針部の周りの条件は、サンコウ電子研究所の APA-6700 の取扱説明書に例がある。検針部の1m以内に、金属の机・椅子・ロッカー・柱を置かない。ミシン・裁断機・荷造機などの動く金属体からは4m以上、携帯電話・火花を出す機器・高周波式包装機からは10m以上離す。エプロンのポケットのはさみやホッチキスにも反応する。

ハシマの設置の案内では、扇風機、天井のファン、金属製の台車、バキューム台、梱包機も離す対象に入る。空調の風、近くのドアの開閉、乾燥して風のある環境も、磁界を乱す要因になる(YKK の取扱説明書)。距離は機種で違うので、自社の取扱説明書の数値で確かめる。

空運転で止まらず、製品を通すと止まるときは、次の節の製品側を調べる。

製品そのものが反応しているとき

空運転で止まらず、製品を通すと止まるなら、製品の側に反応するものがある。候補は次の4つ。

  • 付属:検針対策をしていない金属の付属が紛れている(磁石につかない金属のボタン・前かん・ファスナー、鉄製や電解ニッケルめっきの付属)。検針対策の付属でも、1着に付く数が多いと反応が足し合わさる。
  • 素材と染料:特定の色だけが止まる染料、金属粉を含むゴム底がある。ナイロンやウレタンのように磁石につかない素材でも、磁場に影響して誤検知する報告がある。
  • 裁断と汚れ:裁断機の刃を研いだときの鉄粉と砥石粉、機械油に混じる金属粉、錆が製品に付く。
  • 中身と仕上げ:中綿(ダウン)に混じった磁性異物、プリントや下げ札、不良品マーキングのシール、洗い加工(ストーンウォッシュ)に残った金属不純物、縫い目や厚い所、折り返しに残った折れ針。

出典:サンコウ電子研究所「検針機Q&A」と取扱説明書(付属、裁断の鉄粉、油、錆)、ハシマ「検針機のトラブルシューティング」(染料、ゴム底、付属の数)、ハシマ「検針機誤検知について」(ナイロン、ウレタン)、YKK の取扱説明書(中綿、プリント、洗い加工、縫い目)。

ゴム底のように製品全体に微小な鉄分が含まれると、折れ針のかけらは入っておらず、ハンディ検針器でも見つからないことが多い。再通しで鳴らない停止が特定の色や付属の多い品に偏るときは、この型を疑う。

これらの反応は、鉄の反応と逆向き(マイナス方向)に出て、針の反応を打ち消すことがある。折れ針の見逃しにつながるので、ハシマは1枚ずつの検針を勧める。反応しないところまで感度を下げるなら、そのあとで客先の基準のテストピースを通し、確実に検出することを確かめる。下の2水準の比べ方は、この確かめを位置別・1週間の記録で行う形だ。

検針対策の付属を、NC(Needle Care)商品という。サンコウ電子研究所のQ&Aでは、ファスナーと前かんが鋼球換算0.8ミリ以下で NC-A、ボタン類が1.5ミリ以下で NC-B になる。YKK のファスナーの NC-F06/07/08 は、鋼球換算値のグループ分けの名称だ。検針の検査基準や検針機の設定を示すものではない。客先の検査に適合する保証でもない。ニッケルめっきなど、一部の表面処理は検針の対象外だ。

止まった品と止まらなかった品の違いを調べる。同じ1品番でも、付属の数、色、ロットが違えば反応は変わる。記録用紙には、次の節の3つの欄のほかに、品番・付属の数・色(ロット)の欄を1つ足す。

記録用紙に足す3つの欄

A4 1枚の記録用紙をヘッドの脇に挟み、停止のたびに次の3つを書く。

  1. 止まった日時:1日の回数と、時間帯の偏りを見るため。
  2. 止まったときの製品の位置:ベルトの上に養生テープで2本の線を引いて左端・中央・右端の3区画に分け、製品の中心がどこにあったかに丸をつける。
  3. 再通しの結果と向き:鳴ったか、鳴らなかったか。向きは、1回目と同じか、90度変えたか、裏返したかを書く。鳴ったものは検査員が製品をほどいて中を確かめ、異物の種類と長さを書く。

位置の欄は厳密でなくてよい。5日続ければ偏りは見える。再通しで鳴って折れ針が出たら、縫製の折れ針台紙と突き合わせ、「先端のみ未回収」の記録と合うかを確かめる。

機種によっては、機械が検出の位置を表示する。ハシマの HN-880C は、検出した異物の混入位置をポジションランプで示す(取扱説明書)。旧機種の HN-600C は位置のランプが8個、HN-610C と HN-620C は10個で、3機種とも製造を終えている(ハシマのトラブルシューティング)。ランプとベルト上の位置の対応は取扱説明書で確かめ、養生テープの区画の代わりにランプの番号を書いてよい。

サンコウは、コンベア式検針機の状態を、検出レベルのメーターで見るよう書く。日ごろと違う動きがあれば、メンテナンスを頼む(Q&A の日常メンテナンス)。日ごろの動きと比べるには、点検の直後にテストピースを通したときの点灯の様子を、台帳に書いておく。

テストピースは3か所に、1日3回

毎朝1回の照合は、中央に1回通すだけになりがちだ。調べる期間は、鉄球1.0ミリと1.2ミリの2種を、左端・中央・右端の3か所に、始業・昼・終業の1日3回通す。私なら、感度の相談を受けたその日に、記録用紙と一緒にこの通し方を始める。

使う板は管理番号つきのものにし、摩耗が無いことを先に確かめる。同じ位置で、ある時間帯だけ鳴らないという出方は、この回数を通して初めて見える。

テストピースは高さも通す

上で書いた左端・中央・右端は、ベルトの幅の位置だ。高さも変える。トンネル型の検針部は、通る高さで感度に若干の差があり、高さの中心付近が最も低い(サンコウ電子研究所)。感度の設定は、この最も低い部分にテストピースを通して行う。

高さの中心に加えて、上側と下側のそれぞれの左右を通す「9点」で点検する現場もある(サンコウ電子研究所のQ&A)。ハシマの新しい機種の始業前検査にも、ベルト上の3か所で3段階の高さに鉄球を流す「9 POS」がある(HN-2880CS の取扱説明書)。テストカードは、テストスタンドで10mm単位に高さを変えられる。感度の設定は、NC 商品の反応を考えて決める。9点で感度の低い点が見つかっても、感度を上げすぎると付属が反応する。

この記事の例の「3か所×1日3回」を9点に直すなら、たとえば次の割り振りになる。

通す時 通す点 1サイズあたりの通し数
始業 幅3点×高さ3点の9点すべて 9
昼 高さの中心の左端・中央・右端 3
終業 高さの中心の左端・中央・右端 3
1日の計 (始業9+昼3+終業3) 15

高さの中心は感度が最も低いので、昼と終業も通す。上側と下側は、感度の差を見るために始業に1回通す。1.0ミリのテストピースは、1日15通り、週5日で75通りになる。

NC 商品でも、センサー内で感度の高い所を通ると反応することがある。この感度差の出方は、機種、使用年数、メンテナンスの状況で変わる(YKK のよくある質問)。上側や下側の点で鳴りすぎや抜けが偏るときは、その点の記録を残してメーカー点検に出す。

「抜けた」と決める前の4つの確認

テストピースが抜けたと数える前に、次の4つを満たしていたかを確かめる。満たしていない通しは、検査として成立していない。

  1. 光電センサー:機種によっては、ベルトを止めるかどうかは、光電センサーが製品を見たときに決まる。薄い物や、テストカードと付属品を単体で置いた通しは、センサーに見えず、反応があっても止まらないことがある。薄さの目安は、ハシマの旧機種の説明で4mm以下、HN-880CS 系の取扱説明書で1cm以下。ハシマの新しい機種には、この通しのためのテストカードモードがある。始業前検査は光電管を遮らないと動作せず、テストカードだけでは行えない。
  2. 再スタート直後:動き出してすぐの数秒は、検出しない機種がある。サンコウのAPA-6700は、作動中ランプが約2秒点滅している間は検出動作を行わない。APA-750Wは、コンベアスイッチを押してから約5秒間、検出回路がホールドされ、針があっても検出できない。ランプが点灯に変わってから、テストピースや製品を置く。止まって再通しするときも同じで、動き出してすぐ置いた物は検査されていない。
  3. 向き:付属のテストピースは、シール面を上にして通す(サンコウ)。
  4. ガイド幅:製品はガイドの内側の、できるだけベルトの中心を通す。ガイドからはみ出した部分は検出できない(ハシマ)。左端と右端の点も、ガイドの内側で取る。

4つを満たしたことは、記録用紙に丸で残す。下の2水準の比べ方でも、抜けは、この4つを満たした通しだけで数える。

2水準を1週間ずつ比べる条件

感度を比べるなら、いまの目盛と1つ下の目盛を1週間ずつ流す。そろえる条件は次のとおり。

そろえるもの 内容
製品 同じ1品番だけを通す
ベルトの速さ 変えない
通す人 検針の担当者1人に固定する
記録 上の3つの欄と、テストピースの全通り
目盛の変更 週の初めに、担当者と班長の前で目盛を指さして確かめる

たとえば、週5日稼働のラインで、いまの目盛で週41回止まり、再通しで鳴ったのは2回(ホチキスの針と折れ針の先端)、鳴らなかった39回のうち27回が右端だったとする。1つ下の目盛では週9回に減ったが、1.0ミリのテストピースが45通り中4通り、すべて右端の昼に抜けた。回数だけ見れば下げた週が良く見える。位置を並べると、鳴りすぎも取りこぼしも同じ右端で起きている。

偏りの読み方

1週間の記録がそろったら、次の表に当てる。

記録の出方 疑うもの 次の手
再通しで鳴る停止がある 本物の異物 製品をほどいて異物を特定し、折れ針台紙と突き合わせる
鳴らない停止が全幅に散り、テストピースは全数鳴る 感度が製品や周囲の条件に対して高い 社内基準の鉄球を全位置で拾える範囲で、メーカーと感度を相談する
鳴らない停止が特定の色やロット、付属の多い品に偏る 製品側の反応 止まった品と止まらなかった品の付属、染料、裁断の鉄粉、油、錆を比べる
鳴らない停止が片側に偏り、同じ側でテストピースがときどき抜ける ヘッドの不調の可能性(ヘッド面に吸着した針片、ベルト・ロールの鉄粉など) 空運転と製品側を除いたうえで、感度はいまの目盛に戻し、メーカーに点検を頼む
テストピースが全位置で抜ける 感度不足か故障 ラインを止め、前回の合格から後に通した製品をさかのぼって再検針する

片側の偏りは、つまみの目盛の高低だけでは説明しにくい。同じ側で鳴りすぎと抜けが両方出るなら、目盛より先に、その側で信号を乱しているものを探す。ベルトの鉄粉は一周ごとに同じ位置で反応し、ヘッド面には針やホッチキスの針が吸着することがある。

点検のあとに残す記録

メーカー点検でカバーの止めネジの緩みやヘッド面の付着物、ベルトの鉄粉が見つかったら、締め直しと清掃のあと、同じ記録用紙でもう1週間数える。偏りが消え、テストピースが全位置で鳴れば、感度はいまの目盛のままでよい。

そのうえで、次の2つを運用に足す。

  • 校正や点検の作業報告書に、メーカーが見た項目と結果を1行ずつ書いてもらう。「異常なし」だけでは、何を見たかが残らない。項目は、ハシマとサンコウの取扱説明書の点検の項から選ぶ(ヘッド面の付着物、ベルトの張りと蛇行、光電センサーのほこり、環境ノイズの検査)。
  • 清掃の範囲に、ベルトの表裏とロール、光電センサーの発光部と受光部、ヘッド面の付着物の確認を入れる。周期と薬剤は機種で違うので、次の節の表を見て、自社の機種の取扱説明書で決める。

位置の欄とテストピースの3か所通しは、点検のあとも続ける。回数は始業と終業の1日2回に減らしてよい。

ベルトの清掃と交換の周期

サンコウは、ベルトが汚れるとノイズ(疑似信号)が大きくなり、ベルトが止まるなどの誤作動を招くと書く(APA-750W の取扱説明書)。

作業 サンコウ(APA-6700、APA-750Wの取扱説明書) ハシマ
ベルト面と周囲 毎日1度、検針作業が終わり次第、軟らかい清浄な布で乾拭きするか、よく絞った布で拭く。2週間に1度、中性洗剤を水道水で100〜200倍に薄めた液で2〜3回拭き、水拭きで洗剤を残さない ベルトは毎週よく掃除する(トラブルシューティング)。HN-2880CS は、硬く絞った雑巾で拭き、乾いた柔らかい布で水分を取る
ベルトの裏面とリターン側 1〜2か月に1度。コンクリート床の場合は1か月に1度。拭いたあと水拭きで仕上げる 周期の記載は確かめられなかった。HN-2880CS は、ベルトのヨレの目視確認と、蛇行やスリップのときのテンション調整を挙げる
黒ずんだとき 半年以上清掃を怠って黒くなったら、塗料うすめ液(シンナー)、工業用アルコール、染み抜き剤で落とす HN-2880CS は、ベンジンなどの有機溶剤とアルコールを使わないよう書く
ベルトの交換 搬送ベルトは2年、駆動ベルトは1年ごとの取り替えを勧める。ベルトは消耗品扱い 汚れがひどくなるとベルト交換が必要になる。年数の記載は確かめられなかった

薬剤の可否は、サンコウとハシマで逆になっている。周期も薬剤も、自社の機種の取扱説明書で確かめる。ヘッド面の付着物と光電センサーのほこりは、ベルトとは別に見る。HN-880C はヘッド面の針やホッチキスの針をガムテープなどで取り除くとし(取扱説明書)、HN-2880CS は光電センサーの発光部と受光部を、清潔な綿棒か乾いた柔らかい布で拭くとする(簡易版)。清掃した日は、台帳に書く。

台帳と感度変更の履歴

停止の記録用紙のほかに、検針機の台帳を1冊持つ。ニッセンケンは、検針作業の手順と検針機の点検方法をマニュアルにするよう書く。日付、検査数、異常の有無、異常があったときの内容と処置は、「検針日報」に記録して保管する(第15回)。サンコウの取扱説明書には、保守点検記録の様式が付く。欄は、品名、型式、機械No.、検出器No.、購入先、年月日、記録、検印だ(APA-750W)。

台帳の列は、日付、時刻(始業・昼・終業)、担当、感度の目盛、テストピース(径と管理番号)、通した点と結果、異常の内容と処置、確認印とする。日付・異常の内容と処置・検印は上の2資料にある項目で、目盛とテストピースの列は、この記事の記録用紙に合わせて足した。

感度を変えたときは、誰が、いつ、何から何へ変えたかと、その理由を残す。ハシマの HN-880C は、どの作業者が感度を変えたかを履歴に残し、履歴のレポートを USB で PC に取り出せる。HN-880CS と HN-2880CS の履歴画面は、感度の値、作業者、日時を一覧にし、パスワードのロック中に感度を変えると、MODIFY(直読式は MODIFY-D)として記録する。作業者の名前は、管理画面で作業者のパスワードを ON にしたときだけ出る(簡易版)。履歴の列に理由の欄はないので、理由は台帳に書く。

同じ簡易版の強制検査(Ver2.50 以降)を ON にすると、始業前検査に合格するまで自動運転を始められない。検査を求めるタイミングも設定できる。HN-2880CS の情報画面には、点検サービスを行った直近の日付が出る。「検針機校正時期のお知らせ」のメッセージは、必要に応じてサービスを依頼するよう案内する。点検の間隔を数字で示したメーカー資料は、今回確かめた範囲では見つからなかった。間隔はメーカーに聞いて、台帳の表紙に書いておく。

検針の基準は誰が決めているのか

検針の鉄球径や頻度を数値で定めた公的な基準は、今回調べた範囲では見つからない。日本繊維産業連盟の「輸入繊維製品の品質ガイドライン」(2008年4月)は、製造上必要な品質の確認に「検針など」を挙げるが、鉄球径も頻度も書かれていない。

サンコウ電子研究所の検針機は、同社とアパレルメーカー、服飾付属品メーカーの3者共同で定めた検出基準と非検出基準をクリアしている。ミシン折れ針の検査(AA 感度)は鉄球1.0ミリ、待ち針の検査(B 感度)は2.5ミリ。

NC 商品の測定方法と判定基準の指定検査機関は、財団法人日本紡績検査協会(現ボーケン品質評価機構)だった。ボーケンは2023年3月15日に、NC 試験と鉄球換算値試験を終了した。依頼が年々減り、試験用の検針機が老朽化して修理できなくなったためだ。

折れ針の鉄球径は、資料ごとに違う。サンコウ電子研究所の AA 感度は1.0ミリ(工業用ミシン針 No.7〜9 の糸穴先に相当)。YKK の取扱説明書は、折れ針を1.2ミリ、付属に求める反応を0.8ミリ以下とする。

ニッセンケン品質評価センターの解説は、品質基準(検針)に検針機のゲート数と検針感度を明記することを例に挙げる。検針条件の例として、別の回はベルトコンベア型、感度 Fe 1.0 ミリ、天地逆転の90度方向を載せる。基準は、自社と客先の文書で決まる。

この記事の例の「客先1.2ミリ、社内1.0ミリ」は、客先の基準に社内で余裕を持たせた置き方の一例だ。径を変えるときは、客先の文書と社内の基準書の両方を見直す。

鉄球の径と折れ針の対応

鉄球の径と折れ針の大きさの対応は、ハシマが公的な測定機関で測った質量で見当がつく。針先は、DB×1 の針を先端から3mm、直角に切ったもの。

鉄球の径 鉄球の質量 質量が近い針先(先端3mm) 検出できる最小径がこの値になる検出高さ
0.8ミリ 0.002083 g SF9番 0.002060 g 120mm
1.0ミリ 0.004063 g 9番 0.004180 g 140mm
1.2ミリ 0.007030 g 14番 0.007040 g 160mm
1.5ミリ 0.013737 g 記載なし 180mm

表の4列目は、ハシマの HN-880CS と HN-2880CS の仕様を並べた(取扱説明書)。検出高さ(ヘッド開口の高さ)が120mmなら0.8ミリ以上、140mmなら1.0ミリ以上、160mmなら1.2ミリ以上、180mmなら1.5ミリ以上を検出できる。同じ機種でも、開口の高さで届く径が変わる。サンコウの APA-6800 は、高さ100mmで0.8ミリ以上、140mmで1.0ミリ以上。付属が無い品に限り、100mm仕様の0.8ミリで検査できる。付属が付く品で感度を上げすぎると、付属まで反応する。

ただし、実際の折れ針は切り口も向きも一定でない。センサーへの入り方(縦・横・垂直)で反応が変わり、縦なら検出できても、横では検出できないことがある。質量が鉄球を上回る針でも、横向きに入ると見逃すことがある。そのため基準は、針先の大きさを使わず、鉄球換算値で決める(ハシマ、サンコウ)。表の針先は DB×1 の例で、針のメーカー、番手、切り口によって質量は変わる。

この記事の例の社内基準1.0ミリは、機種の検出高さによっては、機械が検出できる最小の径にあたる。検出高さ140mmのHN-880CS 系なら、検出できる最小の径がちょうど1.0ミリで、社内基準に感度の余裕がない。使っている機種の検出高さと検出能力は、取扱説明書の仕様の欄で確かめる。

感度を下げる以外に試せる手

感度のつまみに触る前に、メーカーが挙げている別の手がある。2水準の比べ方の表は製品とベルトの速さをそろえているので、どれも感度の比べ方とは別の週に、1つずつ試す。

手 メーカーの書き方
再通しの向きを変える サンコウは、針の進入方向で感度に差があるので、1回目に対して2度目は90度変えるよう勧める(Q&A)。ハシマは、2台の間に人が立って裏表を返す2度検針を挙げ、検針機をL字に置くと向きを90度変えやすいとする。1台だけの機械では、製品の長さによって向きを変えられないことがある(2度検針について)
ツーヘッドの機種にする 前後のセンサーヘッドの角度の違いで、方向による見逃しが減る。製品の向きと裏表は変えられない(ハシマ)。サンコウの APA-6800W は、2重検針の能力を備える(サンコウ)
1枚ずつ流す 誤検知の反応が鉄の反応と逆向きに出て、針の反応を打ち消すことがあるので、ハシマは1枚検針を勧める(誤検知について)
ベルトの速さを変える ハシマの HN-880CS と HN-2880CS は、40〜15m/分の範囲で設定できる(簡易版)。サンコウは、検出感度をベルトのスピードに合わせて電子回路で調整していると書く(Q&A)。速度を下げると停止が減るのかは、今回確かめた資料に書かれていない

速度を変えるなら、そのあとでテストピースを全位置に通し直し、速度を記録して、メーカーにも問い合わせる。付属が多くて検針機で通せない品は、X線検査機で確かめることもある(QTEC)。止まった品は、検針が済んだ品、これから検針する品、異物が見つかった品と混ぜない。

感度を下げてよいかの判断

下げた目盛で社内基準の鉄球を1回でも取りこぼしたら、その目盛は使わない。客先の基準を満たしていても、社内基準には理由がある。過去に拾った折れ針の先端の長さや、針の太さに近い値として置かれていることがある。

中間の目盛で拾えるという話があっても、その目盛で1週間数えた記録が無いうちは決めない。止まりすぎの相談が来たら、つまみを回す前に1週間だけ位置を数える。感度を比べるための2週間は、感度以外の原因を見つけるためにも使える。前の節の手を試した週も、同じ記録用紙に残す。目盛を変えると決めたら、日付、担当、変更前後の目盛、理由を台帳に書く。

参考書籍(PR)

条件をそろえずに比べると、数字が減っても理由は言えない。伊藤公一朗『データ分析の力』は、比べる相手をそろえて原因に迫る考え方を新書1冊で扱っている。2水準を1週間ずつ流す組み方の土台になる。

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出典

確認日は2026年10月18日。11月1日に足した節の出典は、11月1日にも開いて確かめた。メーカーの資料は機種と版で数値が違うので、版が分かるものは括弧に書いた。

免責: 本記事は、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、記録・手順の作例です。数値は説明のための例です。検針機の感度・テストピースの仕様・照合の頻度は機種と製品、客先の要求によって異なります。設定の変更は機器メーカーの取扱説明と各社の基準に従ってご判断ください。

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この記事を書いた人

素材メーカーに勤めて10年以上。検査員から始めて、生産技術・品質保証・品質管理・新規事業開発を経験し、いまは品質保証の責任者です。クレーム対応と是正処置、ISO・客先・仕入先の監査、製品含有化学物質の調査回答(chemSHERPA・REACH など)、部下の教育まで担当しています。QC検定2級、ISO 9001 内部監査員。座右の銘は「ピンチはチャンス」。

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