- 期間
- 2026年5月7日〜6月5日(現場で止まる様子を見た日から、感度2水準を1週間ずつ流し、メーカー点検を挟んで、元の感度でもう1週間数えるまで)
- 対象
- 縫製ラインの出口に置いたベルト式の検針機1台と、そこを通る布製カバー1品番
- 体制
- 品質保証の管理職である私と、検針の担当者1人、出荷検査の検査員1人。縫製の班長が停止のたびに立ち会った
- 結論
- 感度は下げずに元の目盛7へ戻した。止まりすぎの原因は感度ではなく右側のヘッドの不調で、点検後の停止は週41回から12回に減った。
縫製ラインの出口に、腰の高さのベルトコンベアが1台ある。ベルトの中ほどに白い門型のヘッドがかぶさっていて、製品はその下をくぐって出荷検査の台へ流れていく。門の右の柱に赤いランプ、その下に「感度」と書かれたつまみ。つまみの目盛は7を指していて、目盛の脇には去年の日付の校正シールが貼ってある。私が現場に立ったのは5月7日の木曜の午後で、ランプは私が見ている10分のあいだに2回点いた。
週に41回止まる機械
止まるたびに、検針の担当者が製品を取り上げて、もう一度ベルトに載せる。2回目は鳴らない。それを「再通し」と現場では呼んでいて、鳴らなければそのまま流す。班長が私に言ったのは「感度を1つ下げてほしい」だった。1日に8回も9回も止まる週があり、そのたびに縫製の手を止めて立ち会っているという。1回止まると、担当者が再通しをするのに40秒ほど、班長が縫製の持ち場から歩いてきて戻るまでに2分ほど。回数の記録はこの時点では誰も取っておらず、8回も9回もというのは班長の体感だった。
毎朝のテストピース照合は合格している。鉄球の入った樹脂の板をベルトに載せて、ヘッドが鳴るかを見る手順で、記録は3年分さかのぼっても不合格がない。つまり機械は「見つける力」については合格で、「余計に鳴る」ことだけが問題になっていた。
感度を下げれば止まる回数は減る。それは私にも分かる。分からないのは、下げたあとで何を見逃すかだった。
この製品は人の肌に触れる用途で、客先の検針基準は鉄球1.2ミリ。社内基準はそれより1段厳しい1.0ミリにしてあり、目盛7はその1.0ミリを毎朝拾えている値として、前任者が決めたものだった。
2水準で1週間ずつと決めた
その場でつまみを回す気にはなれなかった。回して減ったとして、減った分が「余計な鳴り」なのか「本当の異物」なのかを、あとから分けられない。私が班長に返したのは、2週間だけ数えさせてほしい、だった。
条件は次のとおりに揃えた。製品は同じ1品番、ベルトの速さは変えない、通す人は検針の担当者1人に固定する。1週目の5月11日から15日は現行の目盛7、2週目の5月18日から22日は目盛5。記録するのは3つで、止まった回数と、止まったときに製品がベルトのどこを通っていたか(左端・中央・右端)と、再通しで鳴ったか鳴らなかったかの別。鳴ったものは検査員が製品をほどいて中を確かめる。
位置の欄を入れたのは、私の思いつきというより検査員の一言からだった。「右のほうでよく止まる気がする」と、条件を決める打ち合わせの席で言われた。気がする、で終わらせたくなかったので欄にした。ベルトの上に養生テープで3本の線を引き、製品の中心がどの区画にあったかを担当者が目で見て丸をつける。厳密ではないが、5日続ければ偏りは出る。
テストピース照合は毎朝1回だったのを、始業・昼・終業の1日3回にした。鉄球は1.0ミリと1.2ミリの2種類を、それぞれ左端・中央・右端の3か所に通す。1回の照合で6通り、1日で18通り。5日で90通りになり、鉄球1種でみれば45通りずつだ。照合に使う板は2枚とも管理番号つきで、去年の点検で摩耗なしと記録されていることを先に確かめた。
記録用紙は私がA4で1枚作り、ヘッドの脇のクリップに挟んだ。2週間ぶんの欄は10行。

目盛7の1週間
1週目、止まった回数は5日で41回だった。月曜が11回、火曜9回、水曜6回、木曜8回、金曜7回。このうち再通しで鳴ったのは2回で、検査員がほどくと、1つはホチキスの針が縫い代に挟まっていて、もう1つは折れ針の先端だった。長さは3ミリ。どちらも出荷前に止まってよかった異物で、機械はちゃんと仕事をしていた。
折れ針の方は、縫製の折れ針台紙と突き合わせた。縫製では針が折れると欠片を全部そろえて台紙に貼る決まりで、5月12日の火曜に折れた1本が「先端のみ未回収」のまま台紙に残っていた。検針機が拾ったのはその先端で、折れてから見つかるまで2日。台紙の未回収が出荷前に見つかる形になったのはこの1件が初めてで、班長はこの日だけは何も言わなかった。
残りの39回は再通しで鳴らなかった。これが現場の言う「余計な鳴り」で、私が見たかったのはこの39回の内訳だった。位置の欄を集計すると、右端が27回、中央が8回、左端が4回。ベルトの幅は60センチで、製品は担当者が中央に載せているつもりでも、実際には左右に流れる。それにしても右に寄りすぎていた。
テストピース照合は1.0ミリも1.2ミリも、45通りのうち45通りで鳴った。
金曜の終業後に班長へ数字を見せると、「だから下げてくれと言ってる」と返ってきた。右端の27回の話をしても、この時点では「載せ方の問題でしょう」で終わった。私にも反論の材料がない。1週目の時点で私が持っていた答えは、まだ回数だけだった。41回。

目盛5の1週間
2週目の月曜、私がつまみを5に合わせ、担当者と班長の前で目盛を指さして確認した。回した瞬間は、正直なところ気が楽になった。この週は止まった回数が5日で9回。月曜3回、火曜1回、水曜2回、木曜2回、金曜1回。再通しで鳴ったのは1回で、中身は折れ針の先端、長さは4ミリだった。再通しで鳴らなかった8回の位置は右端6回、中央1回、左端1回。
担当者は「楽になった」と言い、班長は何も言わなかった。言わなくても顔で分かる。水曜の午後には、縫製の持ち場から出口までの通路に、班長が立ち会い用に置いていた丸椅子が片づけられていた。
問題はテストピースだった。1.2ミリの鉄球は45通りのうち45通りで鳴った。1.0ミリの鉄球は45通りのうち41通りで、鳴らなかった4通りはすべて右端、火曜の昼に2回、木曜の昼に2回。同じ日の始業と終業では鳴っている。
客先の基準は1.2ミリで、それは満たしている。目盛5のままでいく理屈は、この時点で作れた。社内基準の1.0ミリは自分たちで決めた値で、客先に約束したものではない。班長にそう言われたら、私はすぐには言い返せなかったと思う。
木曜の昼、2回目の抜けを記録用紙で見たとき、私は担当者に頼んで同じ右端にもう2回通してもらった。今度は2回とも鳴る。鳴ったり鳴らなかったりするというのが、この時点で分かった一番の事実で、単純に感度が足りないのとは違う出方だった。担当者は「板の載せ方が悪かったのかも」と言ったが、始業と終業は同じ載せ方で鳴っている。
右端だけ、それも昼だけという出方は、感度が足りないのとは別の理由を指している。1週目の「余計な鳴り」が右端に27回集まっていたことと、場所が重なる。鳴りすぎたのも、拾えなかったのも、同じ右端で起きている。

予想と違ったのは位置だった
私が2週間で比べるつもりだったのは、感度の2水準だった。出てきたのは位置の偏りで、これは予想していなかった。右側のヘッドは、感度が高ければ鳴りすぎ、低ければ拾えない。信号そのものが不安定だと考えると両方の説明がつく。
5月25日の月曜、目盛を7に戻したうえでメーカーに点検を頼んだ。来てくれたのは27日の水曜で、メーカーの担当者はヘッドのカバーを外して30分ほど中を見てから、右側の検出コイルを固定するねじが1本緩んでいたのと、ベルトの下の受け側に金属粉がたまっていたのを見せてくれた。金属粉は縫製の裁断くずに混じった針の粉で、右端に寄っていたのはベルトの継ぎ目の段差で粉が右へ流れるからだという。
ねじの締め直しと清掃で作業は終わり、費用は出張点検の範囲で済んだ。校正は必要なしという判定だった。緩んだねじがいつから緩んでいたかは分からない。去年の校正のときに締めたはずだとメーカーの担当者は言ったが、記録には「異常なし」の4文字しかなく、ねじの締め付けまでは書かれていない。
点検のあいだ、班長が横で見ていた。金属粉の受け皿を見せられたとき、「これ、うちの針の粉ですか」と聞いていた。裁断くずは週1回の清掃で掃いているが、ヘッドの下までは手が入らない。清掃の範囲にヘッド下を足すのは、その場で班長が自分から言い出した。
6月1日から5日、目盛7のまま、同じ記録用紙でもう1週間数えた。止まった回数は12回で、いちばん多い月曜でも4回だった。再通しで鳴ったのは1回、中身はホチキスの針。再通しで鳴らなかった11回の位置は右端3回、中央5回、左端3回で、右への偏りは消えていた。テストピースは1.0ミリも1.2ミリも45通りのうち45通り。
41回、9回、12回。この3つの数字を並べて、私は感度のつまみを触らないと決めた。

感度は目盛7に戻した
目盛5に下げれば止まる回数は9回まで減った。点検前の数字とはいえ、点検後の12回より少ない。それでも戻したのは、下げた週に1.0ミリを4回取りこぼしたからだ。社内基準は客先への約束ではないが、過去に自社で拾った折れ針の先端は短いもので2ミリ、鉄球の1.0ミリは針の太さに近い値として前任者が置いたもので、私はその理由を崩す材料を持っていない。
正しい目盛が7なのかは、今も言い切れない。メーカーの担当者は「6でも1.0ミリは拾える」と言った。ただ6で数えた週を私は持っていないので、持っていない数字で決めるのはやめた。
代わりに残したのは記録の方で、位置の欄とテストピースの3か所通しは、そのまま続けている。1日3回は多いので、6月の2週目から始業と終業の2回に減らした。それでも右端の抜けが出れば、感度より先にヘッドを疑う。
年1回の校正記録には、項目を1行足した。「検出コイル固定ねじの締め付け確認」で、メーカーの担当者に頼んで次回から作業報告書に書いてもらうことにした。「異常なし」の4文字では、今回のような緩みは残らない。ヘッド下の清掃は週1回の範囲に入り、清掃記録の欄が1つ増えた。
2週間の記録用紙は、班長のロッカーの内側に貼ってある。私が貼ったのではなく、6月に入ってから班長が自分で貼ったもので、右端27回の欄に赤丸がついている。
使い分けを1行にするなら、止まりすぎの相談が来たら、つまみを回す前に1週間だけ位置を数える。感度を比べるつもりで始めた2週間は、結局、感度以外の場所に答えがあった。
班長には6月5日の金曜に3週分の表を渡した。「下げなくてよかったんですね」と言われて、私は「下げた週があったから分かった」と答えた。あの9回の週がなければ、右端の4回は見つからなかった。

検針機の検出漏れと過検出をどう切り分けるか、テストピース照合をいつ・どう記録するかは、ものづくりハンドブックのTS25 検針・金属検出の異常(検出漏れ・過検出)と管理にまとめてある。私が2週目に踏んだのは、そこにある「感度設定の不適」と「センサ汚れ・経年劣化」を、記録で分けて見るという手順だった。
参考書籍(PR)
伊藤公一朗『データ分析の力』を読み返したのは、目盛5の週の数字を見て「減った」と言いたくなった夜だった。比べる相手を揃えないと、減った理由が言えない。2水準を1週間ずつという組み方は、この本の考え方をそのまま現場に持ち込んだものだ。
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AI外観検査を入れたら「見逃し」は減ったのに、今度は「鳴りすぎる」で困った話 — 鳴りすぎを止めたくて閾値を緩めたら、その週に見逃しが1件出て元に戻した記録。効いたのは良品側の学習データを厚くすることと、微妙な判定を保留にして人が数秒で確認する運用だった。
検査記録の数字がそろいすぎていた朝、まず疑わずに止めた話 — 末尾がそろった検査記録を46件洗い出して7件を見つけ、検査員を責める前に測定時刻の記入欄と月1回の分布チェックを入れたら、半年後は45件中1件になった記録。数え方を先に決める順番は、この記事と同じ。
免責: 本記事は筆者個人の経験に基づく記録です。検針機の感度・テストピースの仕様・照合の頻度は機種と製品、客先の要求によって異なり、本文の目盛や回数は自社の1台で数えた値です。設定の変更は機器メーカーの取扱説明と各社の基準に従ってご判断ください。