クレームの一次回答の書き方のガイドです。私は品質保証の仕事で、客先からのクレームを受けて一次回答を出しています。様式や参照した規格の改版があれば書き直します(確認日:2026年9月29日)。
- 場面
- 客先から品質クレームの連絡を受け、原因が分かる前に最初の回答を出す。自社の出荷検査では合格だった物が、客先の受入検査で不合格になった場面にも使う
- 対象
- クレームの一次回答(原因と対策の報告より前に、客先へ出す最初の書面)。期限と様式は、客先の指定と品質契約に従う
- 使うもの
- 4つの欄の一次回答の様式、出荷と在庫の記録、工程と検査の記録、現品か現品の写真
- 要点
- 確認できた事実と推定原因を別の欄に書き、流出品の処置と次回連絡の期日を必ず入れる。期限は案件ごとに決める
クレームの一次回答には、4つの欄を入れます。事実の確認状況、流出品の処置、次回連絡の期日、推定原因です。私は推定原因の欄にも、分かる範囲で原因の見当まで書いています。ただし確認できた事実とは欄を分け、「推定」と明記し、覆ったときは次回連絡で直すと書き添えます。
一次回答の期限は、案件ごとに決めます。「受けてから24時間以内」のように一律の目安を置く職場もありますが、私は一律の期限を置いていません。決める材料は、客先の指定、品質契約の取り決め、影響の大きさの3つです。
一次回答に入れる4つの欄
客先の様式があれば、それに従います。欄の名前が違っても、次の4つの中身が入っていれば問題ありません。自社の様式で出すなら、頭に件名、品番、クレームを受けた日時を置きます。
| 欄 | 書くこと | 記入例(説明用の例) |
|---|---|---|
| 事実の確認状況 | 現品、数量、ロット、不具合の内容、見つかった場所と日付のうち、確認できた事実だけ。何で確認したか(現品を見た、写真で見た、客先の連絡だけ)も添える | 客先の受入検査で外径の寸法不良が3個(ロットA)。現品は未着で、客先から届いた写真で外観を確認。同じロットの出荷数は500個 |
| 流出品の処置 | 自社の在庫と出荷待ちの止め、選別、代替品。済んだ処置と予定の処置を分け、予定には日付を入れる | 済み:自社在庫の同じロット200個を出荷停止し、隔離。予定:客先在庫の選別の方法をご相談。代替品は別ロットから◯日に出荷できる |
| 推定原因 | 分かる範囲の原因の見当。欄の名前か文の頭に「推定」を入れ、根拠と、確かめる方法と時期を添える | 推定:工具の摩耗による外径の上振れ。根拠は、同じ日の工程内検査の値が規格の上限寄りだったこと。現品の到着後に測って確かめる |
| 次回連絡の期日 | 次に連絡する日付と、その日に何を報告するか | ◯月◯日:現品の測定結果と、推定原因を確かめた結果 |
記入例の数字は説明のための例です。事実の確認状況と推定原因を1つの欄に混ぜると、客先はどこまでが確かめた事実なのかを読み分けられません。
推定原因の書き方
推定原因の欄には、その時点の材料で立てた原因の見当を書きます。見当があれば、客先は手元の在庫のどこまでを疑うかを決められます。一方で、現品を見る前の推定は、現品を見たあとで覆ることもあるものです。覆っても困らないように、書き方を3つ決めておきます。
確定した事実と欄を分ける
事実の欄には、現品や記録で確かめたことだけを書きます。推定原因の欄は、まだ確かめていない見当の置き場です。事実の欄に「工具の摩耗が原因」と書くと、確かめる前の見当が確定した事実として客先に伝わります。
「推定」と根拠を添える
「推定」の2文字は、欄の名前か文の頭に置きます。添える中身は、根拠(何を見てそう考えたか)と、確かめる方法と時期の2つです。根拠があれば、推定がどの程度確かなのかを客先が自分で判断できます。
候補が2つ以上あって絞れないときは、候補を並べて、どれから確かめるかを書きます。推定の材料がまだ無いときは、「推定の材料なし」と書くのが先です。そのうえで、現品の到着や記録の確認など、何がそろえば推定できるかを添えます。
覆ったら次回連絡で直す
推定原因の欄の最後には、「現品の確認で推定が変わった場合は、次回のご連絡で訂正します」という一文を入れます。現品を見る前に1つの原因を言い切って覆ると、客先は在庫の扱いや社内への説明をやり直すことになります。訂正の予告は、推定が変わる前提で客先が在庫の扱いを決めるための一文です。
直す前と直した後
上の決まりに沿って直した例です(数字と日付は説明用)。
| 直す前 | 直した後 |
|---|---|
| 事実:外径の寸法不良3個。原因は工具の摩耗 | 事実:外径の寸法不良3個(客先の写真で確認)。推定原因:工具の摩耗(根拠は同じ日の工程内検査の値) |
| 推定原因:工程の異常 | 推定原因:工具の摩耗による外径の上振れ。現品の到着後に測って確かめ、◯日のご連絡で結果を報告 |
| 原因:調査中(見当は立っている) | 推定原因:工具の摩耗、または材料ロットの違い。工程内検査の記録から先に確かめる |
流出品の処置の決め方
流出品の処置の欄は、客先が翌日からの生産をどう回すかを決める材料です。処置は、物の置き場所ごとに決めます。止める範囲は、不具合が確定したロットに加えて、同じ設備・同じ材料・同じ期間で作った物まで仮に広げるのが基本です。確かめが済んだ分から、順に止めを解きます。
| 置き場所 | 処置 | 一次回答に書くこと |
|---|---|---|
| 自社の在庫・仕掛品 | 出荷を止めて隔離し、識別の札を付ける | 止めたロットと数量、止めた日 |
| 出荷待ち・輸送中 | 出荷を止める。輸送中の物は、届け先と着く日を確かめる | 止めた数量と、止められなかった分の行き先 |
| 客先の在庫 | 選別するか、代替品と入れ替えるかを客先と決める | 選別の方法と基準、誰がいつ行うか、費用の分け方を相談したい旨 |
| 代替品 | 同じ不具合が無いことを確かめた物を出す | 出せる日と数量、何で良品と確かめたか |
客先の在庫を選別するときは、選別の基準(限度見本や数値の基準)を着手の前に決め、客先と合わせます。選別の数量は、対象の数と、良品と不良品の合計が合うかで締めます。
一次回答の期限の決め方
一次回答の期限は、次の3つを上から順に確かめて決めます。
| 確かめる順 | 見る所 | 期限の決め方 |
|---|---|---|
| 1 客先の指定 | クレームの連絡、客先の様式、客先の担当者からの依頼 | 指定があれば、その期限に合わせる |
| 2 品質契約 | 品質保証協定書などにある、不具合の連絡と回答の期限の取り決め | 取り決めがあれば、その期限を守る。客先の指定と食い違うときは、どちらに合わせるかを客先に確かめる |
| 3 影響の大きさ | 客先のラインが止まっているか、安全や法規に関わるか、出荷済みの数量と届け先の数 | 影響が大きいほど短くする。決めた期限は客先に伝えて合意する |
期限を決めたら、製造、営業、出荷の担当者にも同じ期限を伝えます。4つの欄が期限までにそろわないときは、そろった欄だけで期限内に出してください。残りの欄には「確認中」と、確認できる日を入れます。
自社で合格・客先で不合格のとき
自社の出荷検査では合格、客先の受入検査では不合格というクレームでは、判定が分かれた理由の突き合わせから始めます。突き合わせる項目は次の5つです。
- 基準の版:図面と検査規格書の版をそろえて見る
- 測り方と測定器:測定器の種類と最小目盛り、測った箇所の数、平均か最大値かを並べる
- 現品と位置:客先が測った現品の箱やロットと、測った位置を特定する
- 輸送と保管:出荷から受入検査までの日数と、置かれていた場所を確かめる
- 丸める前の測定値:記録に書く前の値を、自社と客先で並べる
この場面の一次回答では、4つの欄に次のことを入れます。
- 事実の確認状況:自社の出荷検査の値と、客先の受入検査の値を並べる。客先には、丸める前の測定値、測定日、測定器、測定箇所の4点を聞く
- 流出品の処置:客先の在庫と自社の出荷待ちを隔離し、使う分だけ全数を測って渡す
- 推定原因:工程の原因よりも、判定が分かれた出どころの見当を書く。例として「測り方の違い(自社は3か所の平均、客先は1周の最大値)の可能性」
- 次回連絡の期日:5つの項目の突き合わせ表を、客先と交わし終える日
工程の原因を調べる是正処置には、5つの項目がそろい、それでも差が残ったときに入ります。突き合わせ表の作り方と1週間の段取りは、客先の受入検査で落ちたのに自社では合格だったときの記事にまとめています。
書く順番と社内の回し方
クレームの連絡を受けてから一次回答を出すまでは、次の6つの手順で進めます。
- 客先の指定の期限と様式を確かめる。品質契約の回答期限の取り決めも見る。
- 客先に、品番、ロット、数量、不具合の内容、見つかった場所と日付、現品を送ってもらえるかを聞く。
- 流出品の処置を決め、自社の在庫と出荷待ちを止める。止めた範囲と数量を記録に残す。
- 事実の欄と推定原因の欄を分けて書く。事実には何で確認したかを、推定には根拠と確かめる方法を添える。
- 次回連絡の期日と、その日に報告する中身を決める。
- 書いた人とは別の人が見直してから出す。窓口が営業なら様式ごと渡して送ってもらい、送った日時を記録する。
見直しでは3点を確かめます。事実の欄に推定が混ざっていないこと、処置に日付が入っていること、次回連絡の期日が守れる日であることです。
クレーム対応の仕組みを社内の規程から組み直すなら、国際規格の ISO 10002(苦情対応の指針)が手がかりになります。組織の中の苦情対応のプロセスを、計画から運用、改善まで扱う規格です。
次回連絡で書くこと
次回連絡(中間報告)では、一次回答の4つの欄のどこが変わったかを書きます。
| 一次回答の欄 | 次回連絡で書くこと |
|---|---|
| 事実の確認状況 | 現品の到着と測定の結果など、新しく確かめた事実 |
| 流出品の処置 | 選別の進み具合(対象の数、良品と不良品の数)、止めを解いたロット、代替品を出した日 |
| 推定原因 | 確かめた結果。当たっていれば「確認済み」に改め、外れていれば訂正する |
| 次回連絡の期日 | 次の連絡の日と、原因と対策の報告(是正処置報告)を出す見込みの日 |
推定が外れたときは、件名か冒頭に「訂正」と入れ、前回のどの欄のどの記述が変わったかを名指しします。訂正の理由は「現品の測定の結果」のように一言で添えます。推定原因に合わせて決めた処置の範囲も、見直すかどうかを同じ連絡で書いてください。
次回連絡の期日に約束した中身が出せないと分かったら、期日の前に、その時点で分かっていることと新しい期日を伝えます。延長の相談は、是正処置の期限に間に合わないときの連絡と同じ形で組めます。
是正処置報告への引き継ぎ
一次回答と次回連絡で書いた中身は、そのまま是正処置報告の欄に移ります。
- 事実の確認状況:報告書の「不具合の事実」の欄へ。品番、ロット、数量、見つかった場所と日付、現品の状態をそろえる
- 流出品の処置:報告書の「暫定処置」の欄へ。止めた範囲、選別の数量と結果、代替品を入れる
- 推定原因:確かめた結果を、「発生原因」と「流出原因」に分けて書き直す。外れた推定と訂正の経緯は、社内の記録に残す
報告書に入れる欄と、差し戻される3つの所は、是正処置報告の書き方にまとめています。
次のクレームに備えるなら、2つを先に用意します。4つの欄の様式を1枚と、取引のある客先ごとの一次回答の期限(客先の指定と品質契約の取り決め)の一覧です。一覧で期限が空いている客先は、影響の大きさで決めると社内で申し合わせておきます。4つの欄の様式は、記入例と次回連絡のシートを付けて、ものづくりポータルのクレーム一次回答の様式(Excel)に置いています。
第一報、中間報告、最終報告のそれぞれで何を確定させて出すかは、ものづくりハンドブックのB6 顧客連絡・対外対応の作法で引けます。推定が覆ったときの訂正の出し方も、同じページにあります。
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判定が分かれたクレームで、突き合わせ表と1週間の段取りを組むときに使います。

一次回答のあと、原因と対策を報告書にまとめるときの欄と書く順番です。

出典
- ISO「ISO 10002:2018 Quality management — Customer satisfaction — Guidelines for complaints handling in organizations」(第3版・2018年7月発行。2023年に見直され、現行版のまま。規格の本文は有料)
免責:このページは、製造現場でよくある場面をもとにした事例と、書式・手順の作例です。数値は説明のための例です。一次回答の期限と様式は、客先の指定と品質契約で確かめてください。