M11交替勤務・引き継ぎ時の品質情報の伝達
考え方
品質のトラブルは「言った・言わない」で起きやすい。交替のたびに“異常・変化点・申し送り”を確実に渡す。
- 申し送り事項(異常・変化点・特採・注意ロット)を定型の帳票で残す重点
- 進行中の異常対応・隔離品の状態を次直へ確実に引き継ぐ重点
- 設備・測定器の異常やヒヤリは口頭だけでなく記録で共有
- 引き継ぎ漏れが起きた事例は責めずに帳票・ルールを改善する
引き継ぎで必ず伝える5項目(テンプレの骨子)
- 進行中の異常・不適合の状況(対応中の内容・現在の処置状態・次にやること)重点
- 隔離品・注意ロットの有無と保管場所(識別表示の状態を含む)重点
- 設備・測定器の異常やヒヤリ(軽微でも記録に残す)
- 変化点(原料ロット切替・作業者交代・条件変更等)の有無
- 次直で特に注意してほしいこと(口頭だけでなく帳票にも一言残す)
書き残しルール
- 「特になし」の場合も空欄にせず、必ず「特になし」と明記する(記入漏れと区別するため)
- 引き継ぎは口頭説明+帳票の両方で行い、帳票だけの一方的な受け渡しにしない重点
- 受け取った側は内容を復唱・確認し、帳票に確認サインを残す
申し送りが形骸化したときの立て直し(Q233)
申し送りが「書いてはいるが読まれない・伝わらない」状態になるのは、たいてい次の3類型のどれかに当てはまる。
- 量が多い型:毎回同じ定型項目まで書き写し、本当に注意すべき変化点が埋もれる
- 様式が合わない型:帳票の項目が現場の実態(設備・工程)と合っておらず、空欄や「同上」で埋める運用が定着している
- 読む時間がない型:交替の引き継ぎ時間が短く、帳票を読む前に口頭だけで済ませてしまう
- まずどの類型に近いかを直近の申し送り帳票(1〜2週間分)を見て当たりを付ける重点
- 様式を減らす判断:定型で毎回同じ記載になっている項目は削るか、変化があったときだけ書く欄に変える重点
- 減らす判断は現場だけで決めず、品証・上長を交え「削っても異常の見逃しにつながらないか」を確認してから決める
- 口頭とのすみ分け:帳票に残すのは「次直が確認すれば分かる事実」、口頭で伝えるのは「ニュアンス・優先度」と役割を分ける重点
- 口頭だけで済ませた場合でも、要点は後から帳票へ一言でよいので書き足す運用にする
- 様式を変更したら、変更後1〜2週間は「削った項目が原因の見逃し」が無いかを意識的に確認する
帳票を分厚くするほど安全に見えるが、実際は読まれなくなるだけのことが多い。M16(検査記録の書き方)と同様、「残すべき事実」と「省いてよい定型」を分けるのが立て直しの起点になる。
「言った・言わない」の食い違いが起きたときの立て直し
申し送りの仕組みが機能していても、伝えた側と受け取った側で「言った」「聞いていない」の食い違いが個別に起きることがある。仕組み自体の形骸化(上記)とは別に、実際に食い違いが起きた場面の収め方と、再発を減らす工夫を持つ。
- 食い違いが起きたら、まず誰が正しかったかを追及する前に、進行中の異常・品質への影響が実際に出ていないかを確認する重点
- 口頭で伝えたことは、その場で一言でも帳票やチャット等に残す「最小の記録」を習慣にする(詳細でなくてよい。伝えた事実と時刻だけを残す)重点
- 申し送り事項が複数あるときは、影響が大きい順に並べて先に伝える(後回しにした事項ほど伝え漏れが起きやすい)重点
- 「次直は帳票を必ず見ている」という前提を置かず、口頭でも要点を伝えたうえで帳票にも残す(見ていない前提で二重に手当てする)
- 食い違いが起きた後の振り返りは、伝えた・伝えていないの責任追及ではなく、どこで抜けが起きやすいかを一緒に洗い出す姿勢で行う重点
- 引き継ぎ漏れに気づいた側(次直等)が、責められる心配なく申告できる窓口を用意する
---
関連する場面
同じ読者向けの他トピック
M1日常の検査・検査表運用M2異常が出たときの初動(まず止める)M34M変化点の申告(無断で変えない)M4測定器・校正の順守M5不良・ヒヤリの報告とトレーサビリティM65S・現場管理と監査の日常準備M7段取り替え・切替時の初物確認M8作業標準の順守と力量M9多能工化と応援時の品質担保M10ヒューマンエラー防止(ポカヨケ・指差呼称・ダブルチェック)M12現場の温湿度・環境管理(吸湿・静電気・異物の予防)M13始業前点検・設備コンディション確認M14限度見本・現物基準の現場運用(保管・更新・照合)M15改善提案・気づきの出し方(小さな異常を言葉にする)M16検査記録の書き方・訂正ルール(二重線・日付・空欄禁止)M17応急処置後の生産再開判断(誰の確認で流してよいか)M18不適合品の隔離・識別表示のルールM19清掃・異物管理の実務M20設備パラメータを勝手に調整してはいけない理由M21作業標準どおりにできないときの申告の仕方M22検査で迷ったときの相談の出し方M23応援・派遣で入った人への当日オリエンの型M24検査員が「いつもと違う」と感じたときの伝え方M25検査員同士で判定が分かれたときの収め方M26前工程・後工程へ「言いにくいこと」を伝えるときの型M27検査の合間に別の作業を頼まれたときの線引きM28検査員が交代した直後に不良の見え方が変わったときの確認M29現場から「検査基準が厳しすぎる」と上がってきたときの受け方M30検査員が「前はこれで通っていた」と言うときの確かめ方